ギャルいとお出かけ
「先輩〜♪こっち見てくださいよ〜!」
「……」
彼女の甘ったるい声が耳元で聞こえる。
「見なくていいんですか?私……すっごいえっちな格好してますよ?」
「……」
思春期男子が興味を持ちそうなワードが横から聞こえる。
「ほら……私って、スカートこんなに短いんですよ?」
「……」
スカートを煽る音が膝元から聞こえてくる。
なんて卑しい女の子なのだろうか?
流石ギャルい……いや、ビ〇チと命名してもいいのかもしれない。
だがーーーー
『You Win!』
「ガッデム!」
「あぁ〜!?また負けた〜!」
画面上に表示される文字を見て、人目憚らずガッツポーズをする。
隣では、ギャルいが悔しそうに唸っていた。
某〇リオカート。
ゲーセンに来てみたはいいものの、何をしたらいいか分からず、とりあえずギャルいとやることになった。
「先輩のくせに……!この私が負けるなんて!」
「いや、お前真面目にやってなかったろ?」
チラチラチラチラと。
横であざとい声や仕草をしやがって。お前のキャラ1歩も前に進んでいなかったじゃないか。レースゲームなのに。
それなのによく悔しがれたもんだな?
「私、ゲームなんてやったことないですもん」
「じゃあ何でゲーセンに入ったんだよ……」
あざとく頬を膨らませるギャルいに俺はガックリと肩を下ろす。
なんだろう?折角勝ったのに嬉しくもないこの気持ちは。
「それより、ここうるさいです。早く出ましょう」
「……はいはい」
本当に、何でここに入ったのか?
お前が入りたいって言ったからここに来たのに……。
全くを持って腑に落ちないまま、俺達は30分という短い間しかいなかったゲーセンを後にした。
♦♦♦
「先輩、これなんかどうですか?」
「ふむふむ……」
場所は変わり、今度はよく分からない女性物を多く扱っている衣料品店。
そこでギャルいは洋服を己の体に当て、意見を仰いできた。
手に持っているのはオーバーサイズの黒のスウェットワンピース。ゆったりとしたシルエットを出すことによって可愛らしさを演出することの出来る服である。
俺はしばし吟味した後、素直な感想を口にする。
「それを着るなら、ファーサンダルも合わせた方がいいだろう。そうすることによってトレンド感もプラスされるから、可愛らしさにカジュアル要素が加わってより女の子らしさをアピール出来ると思う」
「そこでマジレスは予想外なんですけど……」
真面目に感想を言っただけなのに、どうしてそんな引いているのだろうか?
全くを持って腑に落ちん。
「では、これはどうですか〜?」
そして、次に手にしたのは太めのボーダートップス。
……ふむふむなるほど。
「カジュアルアイテムの定番であるボーダーはコーデの幅を広げてくれる優れものだ。例えばーーーー」
俺は少し店内を見渡し、違う物をとってくる。
「このベージュのパンツと組み合わせてみたらどうだ?太めのボーダーを着るならとことんカジュアルに仕上げた方がより印象がいい。さらにショルダーバッグやサンダルとかの小物を合わせることで女の子っぽさを出した方がオシャレという印象をより強くさせてくれるぞ」
「先輩……詳しすぎじゃないですか?」
「こちとら服を作って稼いでんだ。当然だろ」
こういった感性がなければ、金にならんからな。
ただ作るのではなく、こういったコーデのことも考えないと、次に繋がらないのだ。
「先輩って服作っているんですか?」
「おう、お小遣い程度だけどな」
俺はスマホの画面をいじくり、自作の女性服をギャルいに見せる。
「か、可愛いですね……」
「今度作ってやろうか?」
「え、いいんですか!?ーーーーじゃなくて!」
すると、ギャルいはスマホの画面から目を逸らし、ぷくりと頬を膨らませた。
「……先輩、私が聞きたいのはそこじゃないのですよ」
すると、ギャルいは持っていた洋服を戻し、不満気に口を開く。
「似合ってるか似合ってないかーーーー私が聞きたかったのはここです!」
「似合ってるぞ?でないと、真面目に感想なんて言わないだろうが」
業腹だが、ギャルいはあざといが素材はいい。正直、何を着ても似合ってしまうだろう。
故にこそ、服を作っているものとして本気でアドバイスしてやりたくなったんだ。
デザイナーとしての性分?みたいなものと思って欲しい。
まぁ、俺ごときがデザイナーなんておこがましいかもしれんがな。
「そ、そんな直球に言わないでくださいよ……」
「お前が言えって言ったんだろうが」
俺は顔を赤くしたギャルいに思わずため息が出た。
全く……こいつは、何がしたいのかさっぱり分からん。
顔を赤くしてモジモジさせている今のギャルいからは、あざとさなんて感じれなかった。
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