第49話:罠だけど、罠じゃなかった

え、罠って何の話!?

かかった覚えなんて無いぞ。


というか、罠って聞いて普通トラバサミが最初に出てくるか?

トラバサミってあれでしょ、踏んだらバシーン! って挟まれるやつでしょ?


けっこうダメージ食らう罠が真っ先に思い浮かぶって大丈夫なのか?

……別のゲームの影響かな?



脱線した内容を考えていると、七瀬からメッセージが返ってきた。



さかきがゲームで[こうやったら良いよ]って教えてくれたのを真似しようかしら。

私がさかきに[こう話したら良いよ]って教えてあげるわ。

その為には、まず会話すること自体に慣れなきゃね。

ゲーム以外にお喋しゃべりする時間を増やしましょう》



おぉ、なんかすごそうだな。


[こう話したら良い]って普通の会話でも教えられるものなのか。

でも、配信でコミュ力の高さを実感してるので、説得力はある。


そうか、まずは会話すること自体に慣れなきゃいけなかったんだな。





……これが罠か!!



危ない危ない、気づかなかった。

俺ともっと話す時間を取るように、さりげなく誘導していっている。


くそっ、上手いやり口だ。

まんまと罠にかかって、ゲーム以外のおしゃべりの時間が増えてしまうところだった。




……この罠は、かかっても何も問題無いやつだ!!



危ない危ない、気づかなかった。

[罠]という言葉のイメージに引っ張られ過ぎた。



七瀬は俺と喋しゃべる時間が増えて嬉しい。

俺も七瀬と喋しゃべる時間が増えて嬉しい。


WinWinな関係じゃん。



何も気にすることなかった。

よし、気軽に返事をしてしまおう。



《うん、よろしくね。

ゲームのとき以外も、いっぱい話そうね》



短い文章だが、すっきりまとまってるし大丈夫だろう。

ポンと送信をタップした。



……あれ、このやり取り大丈夫か?

なんか[これからもっとお互いを知って、仲良くなっていこうね]的な感じしないか?



まぁ勘違いかもしれないし、とりあえず有村スパイに返事をしておくか。



《罠にかかったのかはよくわかんないけど、とりあえず七瀬とゲーム以外にも話す時間を増やすことになったよ》



直接七瀬から色々聞いてるだろうから、結果だけをシンプルに伝えても問題無いだろう。



メッセージを送ると、珍しく数分経った後に有村スパイから返事が来た。



《あー、その内容ちょっと変わるかも。

隼人はやとくんのこともっと知れるし、私のことも知ってもらえる! すごく楽しみ』

って喜び出したんだけど、

隼人はやとくんと話せるのはすごく嬉しいんだけど、二人だと緊張しすぎて話せないかも……。

ミユキも入れて三人から始めちゃダメかな?』

って途中から変わってきてさ》



あぁ、可愛い。



あの七瀬が[二人だと緊張する]って言ってる意外性が、まず可愛い。


俺と二人きりとなると、緊張してるのを隠しながら、それでもリードして話そうとするんだろうか。

七瀬が喜ぶようなことを俺がポロッと言ったりしたら、どんなリアクションするんだろう。



まずい、妄想が止まらなくなりそうだ。



更に言うと、あの自信満々なメッセージとのギャップもヤバい。


[良いアイデアひらめいた]と思って、そのまま勢いで送ったんだろうな。

そして今は、緊張しそうなことに気づいて、有村に泣きついてる状況って感じかな。



さて、七瀬からの返事はどんな内容で来るんだろうか。




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