第38話:いつもと違って面白いらしいよ?

でも、独り言を言っちゃうくせがあるとか、指摘されたことないしなー。


あの時も言ってないはずだけど。


もう色々聞いちゃってるし、これも有村スパイに聞いてみようかな。



《ねぇ、俺ゲームしてるとき独り言とか言ってた?

特に有村たちの方を見てるときに》



《いや、別に言ってなかったよ。

普通の会話も少なめだから、もっと話したら良いのにって思うぐらいだったし》



グサッと来る返事が、有村スパイから送られてきた。


俺も本当はもっといっぱい話したいんだよ……。



しかし、独り言を言ってなかったという証言は得られた。



[真剣な表情って、ギャップがあって良いよね]と七瀬が言ったのは、七瀬自身がそう思ったということだろう。



そうか、七瀬も俺と同じことを考えていたんだな。




ニヤニヤが止まらない。


あんなに可愛い子が、俺を見ながらギャップに萌えてたんでしょ?



あぁ、もう想像しただけでヤバい。



あ、しかも今なら写真もあるではないか!


先ほど貰った写真を見つめながら、あの時の七瀬を思い出す。



目が合った瞬間、慌てて画面の方を見ていたよな。

たぶん俺が逆の立場だったら、同じことやってただろう。


ということは、七瀬も俺と同じような気持ちで、俺のこと見つめてたのかなー?

そうだったら嬉しいのに。





次の日の学校は、少しドキドキしていた。


……七瀬の写真を見つめ過ぎたから。



ほんとに見れば見るほど可愛い。

こんな可愛い子を街中で見かけたりしたら、たぶんみんなずっと目で追ってしまうんだろうな。



俺はドキドキしているが、七瀬はどんな感じなんだろうか。

ちょっと楽しみにしてクラスに入ると、いつも通りの雰囲気の七瀬に、いつも通りの挨拶をされた。



なーんだ、いつも通りか。

ちょっと気持ちも落ち着いた。





昼休みになると、動画配信の話になった。

きっかけは七瀬の一言だった。



さかきって自分の動画の中でどれが再生数多いか、ちゃんと知ってる?」



ドキッとした。

最近全然見てない。


前はけっこう再生数気にしてたんだけどな。



「いやー、最近の動画はまだ把握してないんだよね。

なんでそんなこと聞くの?」



俺の問いに対して、七瀬がやや自慢げに話しだした。



「最近の動画は昔のに比べて全体的に再生多いんだけど、その中でも一番は私とミユキとさかきの三人でやったやつなんだよ!」



あー、七瀬がやたらと[カッコいい]って褒めてくれてたときね。

ほとんどがその印象だから、あんまり細かい内容までは覚えてない。


とりあえずその事は言わないでおくか。



「へー、あの時の動画が再生数多いんだ。

なんでだろうね?」



別に正解の返事は求めてなかったが、有村がボソッと答えた。



「ゲーム中の会話が[いつもと違って]面白いって、SNS上で書いてあったよ」



……それは知ってるよ!

だいぶショックだったんだから。


でも二人の会話は確かに面白かった。



女の子同士が話しているってだけで一定の需要はあるが、それを上回っているのは面白かった証拠だろう。


でも悔しい。



俺が何も返事をしないのが気になったのか、七瀬が優しい声で話してきた。



さかきの場合、ゲームの腕だけで面白い動画が作れるんだからすごいよ!

私とミユキのおしゃべりは、おまけみたいなものかな」



すごく良いフォローだ。

だいぶ気持ちが楽になった気がする。



七瀬は俺の様子を確認した後、続けて話しだした。



「まぁ何が言いたいかっていうと、また三人でゲーム配信して、動画の再生数をもっと増やしてみない?」


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