第37話:バレてなかったけど、別の方がヤバい

え、いきなりどうしたんだ?


そりゃあ欲しいよ、めちゃくちゃ欲しい。


けどここで欲望むき出しにして大丈夫なのか。

何かの罠とかじゃないよね?



メッセージのやり取りを、もう一度全部見返してみる。



……たぶん、大丈夫だろう。



《くれるのー?

じゃあ欲しいなー》



返事はこれぐらいでどうだ。

がっついている感じを極力抑えつつ、欲しいという意志はしっかり伝わるだろう。


[ええぃ!]と独り言を言いながら、メッセージを送った。

変な罠とかじゃありませんように。



祈っていると、スマホが鳴った。

恐る恐るメッセージを開く。



《じゃあ、あげるねー》



短い文章の後に、画像が送られてきていた。



可愛い。



楽しそうに撮っている二人の写真を見て、真っ先にその感想が浮かんだ。


おそらく俺と合流する前に撮ったんだろう。



あぁ、本当に可愛い。



会っているときは[見つめ過ぎるとまずい]と思い、我慢していた。

しかし、写真ならいくら見つめても何も問題無い。



やはり有村スパイは最高だ。



写真を見つめながら、また今日のことを思い出した。



七瀬が俺のことジッと見つめてたよな。

目が合うと、慌てて視線逸らしていたけど。

あれは何だったんだろう。



《写真ありがとう。

今度は三人で撮ろうね。

ところで、ゲーム中に七瀬に見られてた気がしたんだけど、俺何か変なことしてた?》



素晴らしい写真のお礼と共に、有村スパイに尋ねてみることにした。



《え、よくわかんないけど、榊さかきがこっちをしょっちゅう見てたから、そのお返しなんじゃない?》



有村スパイからの返事は、衝撃的なものだった。



……え、バレてたの?

しかも、七瀬本人にバレるならまだしも、関係ない有村にまだバレていたとは。



ヤバい、すごく恥ずかしい。



《ごめんごめん、横で一緒にゲームしてたら、なんか気になっちゃって。

俺が見てたことについて、七瀬は何か言ってた?》



有村についてのフォローは、まぁこれぐらいでいいだろう。

問題は七瀬がどう考えていたかだ。


嫌な印象を与えていませんように。



また祈りながら、有村スパイにメッセージを送る。



あれ、返事が来ない。

どうしたんだ。


何か失言してたか?

慌ててこれまでのやり取りを何回も見返したが、特にコレといったものは無い。



有村スパイさーーん。



嘆なげきながら、もう一度メッセージを送るか迷っていると、ようやく返事が来た。



《リサは[さかきがこっち見てること]については、特に何も言ってなかったよ、たぶん。

『真剣な表情って、ギャップがあって良いよね』

って、またよくわからないことは言ってたけど》



それって、俺が考えてたことじゃん。

心の声が漏れ出ちゃったのかな!?



とりあえず俺が七瀬を見てたことについて、何も言ってなかったのは良かった。

まず、一安心できた。



だけど、新しい問題がヤバい。



声出ちゃってたなら、非常にまずいでしょ……。




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