第45話:動画編集は君に任せた

七瀬のことは、もちろん可愛いと思っている。

仲良くなってからは色んな表情を見ることができたが、その全部が可愛い。



でも、その可愛いと思っている気持ちは[好き]だからなのか?

芸能人を見て可愛いと思うのと、違いはあるのか?



もし好きだったとして、好きなのは[見た目]だけなのか?



考えがまとまらない……。





また眠れなかった。

結局自分の気持ちも、はっきりとはわからなかったし。



沈んだ気持ちのまま教室に入ると、七瀬が挨拶をしてきた。



「あ、さかきおはよー」



たったこの一言で、気持ちが晴れた。


七瀬の笑顔の効果はすごい。

見ただけで幸せな気持ちになれる。



可愛いから? 好きだから?



よくわかんないけど、可愛いことは間違いないから、まぁいいか。





昼休みになり七瀬と有村の会話に合流しようとすると、さっそく七瀬が話しかけてきた。



「ねぇ、昨日の動画の結果見た?

いつもより再生数も多かったし、動画に付いてるコメントも多かったわね。

あの感じ、まだまだ伸びるよ」



一応俺の動画なのに、七瀬の方がよっぽど嬉しそうだ。

いつも以上にニコニコしている。



「うん、見たよ。

これも七瀬達のおかげだね。

ありがとう」



素直な感想を言うと、七瀬は更に嬉しそうな顔をした。


あぁ、本当に可愛い。

なんでそんなに嬉しそうな顔をしてくれるんだろう。



「私やミユキのトーク力のおかげってのもあるけど、さかきの上手さもあるよー。

まぁ八割ぐらいは、私達のおかげかな」



七瀬が冗談っぽく言った。



八割はないにしても、昨日の動画がいつものと違うのは七瀬達の力が大きい。


昨日の動画は何と言うか、視聴者がいつもより[楽しそう]だった。



「コメント見てるけど、私とかリサを褒めてるコメントが多いねー。

[りさまる派]と[みゆきち派]が出来てるみたいだよ」



有村がスマホを見ながら、こちらに伝えてくる。

そうか、もうそんな派閥ができるほど人気になっているのか。



「あれー、[初号機派はないのか?]って思ったでしょ?」



俺の心を読んだように、七瀬が尋ねてきた。


チラッと表情を見ると、やはり小悪魔になっていた。

からかう気満々って感じだ。



「正直ちょっと思ったよ」



本音を伝えると、七瀬は先ほどまでとは違った感じの笑みを浮かべてニヤニヤしている。



見つめられ続けるのもしんどいので、助けを求めて有村を見ると、スマホで忙しそうだった。



……もっとこっちに興味持ってよ。



「まぁそのうち[初号機派]も現れると思うから、頑張っていきましょ」



ニヤニヤしたままの七瀬が話した後、有村がまたスマホを見ながら伝えてくる。



「なんか[あげてる動画が長すぎるから、分割して欲しい]って書いてる人がいるよ」



やっぱり来たか、この意見。

ちょっと二人に相談してみるか。



「前もそれと同じこと言われたことあるんだよね。

でも[動画を分割して載せる]ってのが、俺には難しくてね。

一回色々調べて試してみたんだけど、結局できなかったんだ」



俺が話し終わると、有村が答えるように話しだした。



「データ送ってくれるなら、私が分割してあげようか?」



まじ!?

スパイとして優秀だけど、こんな面でも優秀なの?



七瀬も[ミユキすごーい]とか言ってるし、思いきって頼んでみるか。



とりあえず夜にデータを送ることになった。





今日の昼休みは[いつも通り]って感じだったな。

七瀬から[好き]って感情も特に伝わってこなかったし。


まぁとりあえずデータを送って、ついでに有村スパイに聞きますか。



《ここのアップローダーに保存したから、よろしくね。

あと、今日は何か言ってた?》



有村スパイは優秀だから、俺は指定されたサイトに指定された手順で動画を保存するだけで良かった。


ここでつまづく可能性もあったから、まずは一安心だ。



返事を待っていると、少ししてからスマホが鳴った。



《ダウンロードできたよー。

分割したら渡すね。


あー、何か言ってたよ。

『初号機派というか、隼人はやとくん派は私だけで十分』とか、

『シュンとした表情が可愛すぎる』とか、何か色々》



……私だけで十分って、可愛すぎない?




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