第44話:疑惑が確信に変わったとき

[喜ぶならやってあげたいけど]



うん、素晴らしい言葉だ。

誰かに何かやる動機として、非常に良い。



問題はその内容ですよ。



[服脱いで渡せ]って内容だよ?



ゲーム内の話なら、まだわかる。

お前の物は、俺の物的な思考だ。



でも、普段だよね?

しかも、ゲームと同じ感覚で言うと、上を全部脱ぐ感じだよね?



[さすがに恥ずかしいし]って言ってるってことは、間違ってないよね?



まず、どんなシチュエーションなの?

なかなか無いよね、そんなシチュエーション。



あぁ、まずい。

混乱してきた。

疑問ばっかり浮かんでくる。



一旦整理しよう。



会話の内容的に、たぶん二人きりのときだよね。


場所については言ってないから、まぁどこか適当な場所で。



そこで俺がいきなり言うのかな?

[服を脱いで渡せ]って。


それとも、恋人同士がするような流れを経て、言うのかな。



どちらにしてもヤバいよね。

[脱げ]じゃなくて、[脱いで渡せ]だもんね。



俺がそう言うと、七瀬が迷いに迷った後、恥ずかしそうに脱いで、俺に服を渡してくるってことか。



うん、整理できたな。



あれかな?

俺も上着脱いでさ、サッカーみたいに交換したらいいのかな?

お互いのプレーを讃たたえあう、みたいな感じで。



……無いな。



お互いどんな精神状態なんだよ。



ということは、完全にR18超えてくるね。



まず、七瀬に自分で脱がせるのがまずい。

恋人同士になった後、お互いの感情が盛り上がったときに、俺が七瀬の服を脱がせるのならわかる。


ノーマルだ、最初はそうあるべきだ。



でも[服を脱いで渡せ]ってことは、七瀬が脱いでるとき、俺はそれを見つめてるよね、たぶん。



……どんなプレーなんだよ。

初回から特殊な方向過ぎるだろ。



もしくは、[恥ずかしいから、こっち見ないでね]って言われて、俺は顔を背けているとしよう。



……どんな状態なんだよ。



服は俺に渡してくるのに、本人は見ないようにするんでしょ?

服さえ貰えれば、満足ですってことだよな。


もっとヤバいやつじゃん。



そもそも、七瀬に服を渡されて、俺はどうしたらいいんだ?



匂いを嗅ぐの?

……本人目の前にいるんだから、そっちに行けよ。


着るの?

……着た状態で、俺は七瀬に何て言ったらいいんだよ。



ダメだ、考えても考えても特殊な状態しか浮かばない。

もう考えるのはやめよう。



とりあえず、今日である程度だが、疑いが確信に変わったな。




七瀬は俺に好意を持ってくれている。

というか、おそらくけっこう好きだ。


あと、めちゃくちゃ尽くすタイプだ。



今までは勘違いしないようにと、自制してきた。

それはもう、めちゃくちゃ頑張った。



何度もそうじゃないかと思っては、そんな訳無いと否定してきた。



だって、あんな可愛い子に好きになってもらえるなんて、普通は無い。



でも、もう自制できない。

七瀬を見るたびに、[俺のこと好きなのかー]と思ってしまうだろう。




……俺は七瀬のことを、どう思っているんだろう?




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