第43話:もっと色んな人に知って欲しい

次の目的地までの移動中、みゆきちが話しかけてきた。



「なんか【アサルトライフルには、どの照準器スコープ付けてますかー?】って言われてるよ」



質問系のコメントを伝えてくれるのは、とてもありがたい。

俺も答えやすいし。



「今は2倍と4倍に可変ズームする照準器スコープ付けてますよ。

ほとんど2倍しか使わないんで、2倍があればそれでいいんですけどね。

クワガタみたいな2倍の照準器スコープが一番好きです」



答えるだけで、ちゃんと視聴者とも会話できてる気がする!


自己満足してると、今度はりさまるが尋ねてきた。



「え、2倍とか遠くまで見ようとしたら全然足りなくない?」



これはコメント対応じゃなく、りさまるの本心なんだろうな。

コツは今度教えるとして、とりあえず答えておくか。



「慣れれば全然当たるよ。

最初の敵も照準器スコープ無しのアイアンサイトで当ててたし。

2倍だったら、これくらいの距離でも当たる」



ちょうど前方に敵を発見したので、答えながら敵に弾を当てていく。



すぐ隠れてしまったが、数発は当てられた。

良いアーマーは着てなさそうだったが、他に良いアイテムを持っているかもしれない。


今は急いで回復してるところだろう。

早く距離を詰めよう。



「ほんとそうだよー。

普通こんな距離で当たんないよねー。

8倍とか、10倍とかの照準器スコープ付けてるなら、まだわかるけどさ」



りさまるとみゆきちはコメント読んでくれているようだし、先に一人で行くか。



「ちょっと行ってくるね」



一声かけて、先ほどの敵の居場所に向かって突進する。


サブマシンガンに持ち替え、敵の裏をかくルートに途中で進路変更すると、予想通り先手を取れた。

こうなると、敵は反撃もできず、ただ崩れ落ちていくだけだ。


敵チームの残りも近くにいたので、あっさり倒せた。

これで12キル。



「すみませーん、ちょっととか言いながらしっかり3キルするのはやめてくださーい」



りさまるが笑いながら言ってきた。

なんだか今回はずっと楽しそうだな。



「残りも数チームになったし、迎えうつ形でやろうか。

今のマップと残りチームの予想位置からすると、ここが良さそうだね」



マップに目印ピンを付けると、二人からOKが返ってきたので、そのまま移動する。



到着した頃、安全地帯の縮小範囲が判明した。

この位置はちょうど良さそうだ。



三人で周囲の見晴らしが良い部分で待ち構えると、遠くの方からちらほらと敵チームがこちらに向かってきているのが見える。


こういう場面で、このアサルトライフルは非常に強い。


こちらは長距離で当たる上に、もし敵がこちらに上手く近づけても残りの二人から集中攻撃を受ける。



敵からしたら、非常に嫌な二段構えだっただろう。


残りチーム数はどんどん減っていき、ラスト1チームになった。



「ここに敵が移動してくるから、最後は二人で倒しちゃっていいよ」



場所を目印ピンで示しながら話すと、二人は[わーい]と騒ぎながらすぐに向かって行った。

こどもみたいだな。



タイミングを見計らって、持っている投げ物武器を次々と投げていく。

それにより二人が待ち構える方へ敵が動き、銃声が聞こえるとほぼ同時に試合マッチが終わった。



「やったー、早速一位になれたね」



二人は喜んでいたが、試合結果リザルトを見ると一瞬固まっていた。



ダメージ量4000超えはあんまり見たことなかったんだろうか。





その後何試合もやったが、動画配信は最後まで盛り上がったままだった。


二人の影響は凄すさまじかった。



だが、ちょっと気になることもある。



配信を終え、ゲームを終了させ、

有村スパイにメッセージを送った。



《今回の動画配信のやり方って、七瀬は前に[楽しそうだから]って言ってたけど、他には何か言ってなかった?》



送るとすぐにスマホが鳴った。

相変わらず有村スパイからの返事は早い。



《しっかりは覚えてないけど、

隼人はやとくんがすごいってことを、もっと色んな人に知って欲しいんだ』

的なことを言ってたと思うよ》



だから、もっと再生数を増やそうって考えて、実際にやってくれた訳か。


よっぽど俺のゲームの腕前をかってくれているんだな。

純粋に嬉しい。



幸せな気分にはなれたが、もっと欲しい。



《他には何か言ってた?》



更なる情報も求めて、メッセージを返す。




今度はしばらく経ったあと、有村スパイからの返事が来た。



《さっきまで話してたんだけど、何かよくわからないこと言ってたよ。

『流れで変なこと言っちゃったけど、[服を脱いで渡せ]ってなかなか過激だよね。

ゲーム内だから、まだいいけどさ』とか、


『もし普段同じこと言われたら、どうしたらいいのかな?

隼人はやとくんが喜ぶならやってあげたいけど、さすがに恥ずかしいし、まだ早いよね?』とか。


よくわかんないから、適当に返事しちゃったけど》



ちょっと待て。



[やってあげたいけど]って、何を?




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