第25話:とんでもなく強い情報が来た

「妄想?どんな妄想してるの?」



やはり七瀬が食い付いてきた。



さりげなく表情を確認すると、いつも通りだった。

よかった、小悪魔モードにはなってない。



とりあえず一旦ごまかそう。



「ごめんごめん、[妄想]じゃなくて[想像]だった。

ゲーム内の[ある状況]を想像して、そこからどう動くかを考えるのが好きなんだよね。

状況を色々変えながら想像するのを、授業中とかもよくやってる」



苦しい言い訳だが、実際それもやってるからイケるはず。

そう信じながら二人の反応を待った。



まず反応したのは有村だった。



「授業中にそんなことやってたんだ。

授業はちゃんと聞きなよ」



呆れた笑いを含んだ言い方だった。



よし、有村は問題無さそうだ。

後は七瀬だな。


そう思いながら七瀬を見ると、俺の意図が伝わったようで、話しだした。



「ミユキの言う通りよ。

授業はちゃんと聞かなきゃ。


あ、でもあと一つ教えて欲しいな。

頭の中で綺麗にゲームのマップを思い浮かべるのは、どうやって訓練したの?」



よし、ごまかしたのはバレてなさそうだ。



危なかった、ここを追求されると非常に困る。

妄想の相手から追求されるなんて事態は、良い方に転ぶわけが無い。



ひたいにじんだ冷や汗を拭いながら、ホッと一息ついた。



……そうだ、七瀬の質問に答えないと。



「俺も最初はイメージできなかったから、ノートに書いたマップを見ながら想像してたよ。

ゲームでキャプチャ撮って、それ見ながら描いたやつ」



俺の回答を聞いた七瀬は、[なるほどねー]と納得していた。



この感じ、たぶん真似する気だな。

毎回思うけど、七瀬は上手くなろうとする向上心がすごい。



その後、昨日の動画を見ながら色々とアドバイスを言っている内に昼休みが終わった。



「今日はゲームできないから、[縛りプレー]をよろしくね。

またメッセージ送るから」



最後に七瀬が言ってきた。

今日はゲームできないのか、少し残念だな。





その日の夜、七瀬からメッセージが届いた。

宣言通りだな。



《今日はショットガン縛りでお願いね。

威力は強いけど撃つの遅いから、よく負けちゃうのよねアレ》



内容を読んで思ったが、とりあえず全武器一通り縛りプレーやらされそうだ。

[パンチのみ]の縛りとか来たら、さすがに無理だぞ。



とりあえず余計なことは言わないでおこう。



《OKでーす》



スタンプ付きで返事しておいた。

だいぶフレンドリーな感じは出せてるはずだ。



ゲームを始める前に、今日も有村スパイから情報を得なくては。



有村スパイと契約してから出費は増えてしまったが、まぁそれは仕方ない。

毎回良い情報が得られるので、やめられなくなってしまった。



よく考えたら美味しいポジションにいるよな、有村スパイ



《今日は何か収穫はありますでしょうか?》



有村スパイはできる娘だから、余計な言葉は要らない。

これだけ伝えれば十分なはず。



数分経った辺りで返事が来た。

相変わらず仕事が早い。



《ミニキャラが自動で動くってのを、やたらと褒めてたよー。

ちゃんと努力してできるようになったのもすごいって》



そうかそうか、褒めてくれてたんだな。

自分が頑張って伸ばした箇所を褒められるのは、嬉しいものだ。



ただ、少し情報が弱い。

もっとグッと来るものが欲しい。



でもまぁ、毎回そんなことがあるわけがないか。



そう自分を納得させていると、有村スパイからまたメッセージが来た。



《あ、想像を妄想って言ってたやつで、

『私のことを妄想してくれてるのかなって、ちょっと期待しちゃった』

って言ってたよ。


期待する意味はわかんないなーと思ったから、それに対して私は何も言わなかったけど》



……とんでもなく強い情報が来た。


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