第24話:頭の中のミニキャラ達

「え、全部ってなに?

意味わかんないんだけど」



呆れたように有村が言った。



この状況は非常にまずい。

早く上手いこと説明しないと……。


考えはまとまっていないが、話しだした。



「ごめん、表現が悪かったかも。

[予想している]って言うよりは、[動きが思い浮かぶ]って方が近いかもしれない」



二人を見ると、まだ頭の上に[はてなマーク]が浮かんでそうな様子だ。



もっとだ。

もっと上手い説明の方法は無いのか。



……妙案は思いつかないので、説明の量でカバーすることにした。



「俺はゲームやってる間は、頭の中にずっとマップが浮かんでるんだ。

島を真上の高い位置から見たようなマップなんだけどさ。

仮にそのマップをIM《アイエム》〈イマジナリーマップ〉って呼ぶね。



さっき言ったみたいに、まず最初は各チームの着地場所を予想していく。



予想が終わると、IM《アイエム》上に[ミニキャラ]みたいなのが出現してくるんだ。

ミニキャラは個人ではなく、チームを表してるから、参加しているチームの数だけミニキャラは出現してる。



ミニキャラの出現場所と予想した着地場所はリンクしてるから、実際にその位置に敵がいるって感じ。



後はそのミニキャラ達がそれぞれ勝手に動いてるから、ルートを決めるときは、IM《アイエム》上のミニキャラの位置を確認すればいいんだ。


ゲーム内で敵チームの数が減ると、IM《アイエム》上のミニキャラもちゃんと減っていくから。



だから[予想している]って感覚とは、ちょっと違うんだよね。



こんな感じなんだけど、わかる?」



少し早口になりながらも、しっかり説明できたつもりだったが、



「長い!」



七瀬に一刀両断されてしまった。



いや、まぁ、そうだけどさ……。

けっこう頑張って説明したじゃん。



しょんぼりしながら追加の説明をあれこれやると、どうにか伝わったようだ。



「敵を1チームずつ個別に想像してるんじゃなくて、[想像上の各チーム]が[やる確率が高い行動]を自動オートでやってるってことでしょ?」



七瀬が話をざっくりとまとめてくれたが、だいたい合ってる。

やっぱり頭良いよなー。


可愛いし。



有村もだいたい理解できたようだ。



「ゲームしながら、頭の別の部分で敵チームの動きをシミュレーションしてるってことでしょ?

よくそんな器用なことできるね」




有村は七瀬とは違う表現で俺に尋ねてきたが、こちらもだいたい合ってる。

さすが優秀なスパイだ。


二人とも理解できたようでホッとしていると、七瀬から追撃質問が飛んできた。


さかきが言ってることの意味は一応わかったわ。

でも、なんでそんなことできるわけ?

普通できるわけが無いことじゃない?」



鋭い質問だ。

自分でもわからないから、正直に言ってしまおう。


「よくわかんないけど、いつの間にかできるようになったんだよね。

最初の内は、IM《アイエム》上に現れるミニキャラは、自分の周りの数チームだけだったんだよ。


でも毎回想像している内に、増えていってさ、気づいたら全チーム分できるようになったんだよね」



二人はまだ納得できないようだ。

今度は有村が尋ねてきた。



「いや、数もだけど、そもそもミニキャラが思い浮かんで自動で動き回る時点ですごいんだけどね。

もっと言うと、そのIM《アイエム》がずっと頭に浮かんでることもすごいよ」



言われてみれば、そうだな。

そう思うと、思わず口が滑った。



「まぁ普段からよく妄想してるから、それのおかげなのかなー……」



あ、まずい。


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