第23話:動画の解説が始まりました

結局、昨日はなかなか眠れなかった。



眠いまま学校に着くと、やはり七瀬に目が行ってしまう。

今日も可愛い。



色々妄想はしたが、現実の七瀬が一番可愛く思えた。



昼休みになると、有村が早速話しかけてきた。



「ねぇ、[後で教える]って昨日言ったやつ教えてよー」



有村はいつもと変わらない様子だ。

七瀬の方を見ると、こちらも普段と特に変わらない。



違うのはどうやら俺だけのようだ。

危ない、悟られてはいけない。


平常心だ。



「何のときに言ったやつだっけ?」



できるだけ[いつも通り]を演じながら、有村に答えた。



すると、有村は少し口を尖らせながらスネたように言う。



「えー、覚えてないの?

最初のマッチのときさかきが進むルート決めてたから、[なんでそのルート?]って聞いたじゃん」



ごめん、実はちゃんと覚えてる。

平常心を保つ為に、ちょっと普通っぽい会話が欲しかっただけだ。



おかげで少し落ち着いた。

いつもと同じ感じで話せる。



「あー、あれね。

あれは安全なルートを予想しただけよ」



簡単に答えると、今度は七瀬が口を開いた。



「それはわかってるってば。

なんであそこが[安全なルート]と思ったかが知りたいの」



真面目な口調だった。

上手くなりたいんだろうな。

気持ちが伝わってくる。



ちゃんと説明する必要がありそうなので、まずは簡単なゲームマップを紙に書いた。

次に確認用として、昨日の動画を再生し、序盤で止める。

これで説明の準備ができた。



「ざっくり描くと、これが今のゲームマップね。

それで主要な建物がこの辺にある」



そう説明しながら建物がある辺りに丸を付けていく。

七瀬と有村は食い入るように紙を見つめている。



「そしてマップ内に飛び降りたタイミングで、どの辺りにどれくらい人が降りてるか見てるの。

こんな風に」



動画を少し先に送り、その場面を二人に見せる。



「え、このときって自分の周りにいるチーム以外は、ざっくりとした方角しかわからなくない?」



七瀬が驚きながら尋ねてきた。

そう言うと思った。



先ほど紙に書いたマップを使いながら、説明を続ける。



「その[ざっくりとした方角]と、[主要な建物の位置]から、どこに何チームぐらい行ってるか確認するんだ。

何も無い所に着地するチームは少ないからね」



動画を確認した後、紙に書いたマップの各所に、そこにいるチーム数の予想を書きこんだ。



「このマッチのときは、だいたいこんな感じで各チームが散らばってるよ」



動画とマップを二人に見せると、[へー]と感嘆かんたんしながら、動画を何回も戻して見ていた。



「え、確認するとか言ってたのに、サラッとしか周り見てないじゃない!

こんなので確認できるの?」



先ほどより驚いた感じで、七瀬が尋ねてくる。

有村はまだ動画を確認している。



「最初の頃は着地する直前までずっと周りを見ていたけど、最近はちょっと見れば予想できるようになったよ」



変に隠してもしょうがないので、正直に話した。


七瀬はまだ驚いていて、質問も来なさそうなので説明を続ける。




「最初はこんな感じで各チームが散らばっているけど、それぞれ動いていくでしょ?

俺たちの着地した辺りは、こんな風に敵チームが動いて行くんだ。

そうしたらこの辺りには敵チームはいないから、このルートが安全になるわけ」



敵チームそれぞれの動き方を矢印で追記していき、安全な場所を丸で囲んでいった。


紙のマップを見ながら、次は有村から質問が来る。



「最初に着地した時点での敵チームの配置や、その次どう動いていくかを予想しているのはわかったよ。

でもそこから先はどうするの?

マッチの中盤から終盤ぐらいまで、ずっと安全そうなルート見つけてたよね?」



質問の意味はわかったが、何と答えたら良いかが難しい。


ありのまま答えよう。


「その先も敵チームの動きはずっと予想しているから、同じように安全な場所を見つけていくだけだよ」



言った後に七瀬と有村を見ると、二人とも頭上に[はてなマーク]が浮かんでいるような表情だった。


まずい、やっぱり伝わらなかったか。


どう言えばいいか考えていると、七瀬が尋ねてきた。



「ちなみに敵の内、何チームぐらいの動きを予想してるの?」



「え、全部だけど?」



そう答えると、場の空気が凍った。


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