第41話:言葉が追いつきません

「とりあえずこの辺りに敵チームいるはずだから、そっちに行くよ」



マップ上に目印ピンを立てた後、先陣をきって移動を始めた。



「おー、宣言通りガンガン行くねー」



りさまるが笑いながら言うが、みゆきちと一緒にしっかり着いて来ている。

最初の頃に比べると、本当に反応が早くなったな。



目印ピンの位置に近づくと、遠くに敵影が見えた。

予想通りだ。



「この距離ぐらいなら、アサルトライフルで全然当たるから。

見ててね」



二人にそう告げ、5〜6発撃つと敵の一人がダウンした。


[おー]と二人が感心する中、距離を詰めながら弾を再装填リロードする。



途中、別の敵が姿を現わした。

おそらくダウンした味方を救出する為に出てきたのだろう。



「距離あるからって、油断してない?」



独り言を言いながら、また5〜6発撃つと、敵がダウンする。



「あと一人いるから、一気に攻めるよ」



二人にそう言ったときには、更に距離を詰め、敵がいそうな建物の間近まで移動が終わっていた。



やはり、まだ言葉よりも行動の方がだいぶ早い。

慣れるまではしばらくかかりそうだな。



「ねー、【展開早すぎて付いていけてない】ってコメントで言われてるよー」



みゆきちが教えてくれた時には、サブマシンガンで敵チームの残り一人を倒し終わっていた。



「なかなか言葉が追いつかなくてね。

無双するときは、特に追いつかないかも。

あ、たぶんこの後2〜3チームここに来るから、巻き込まれないように気をつけてね」



忠告すると、[えっ、えっ?]と二人は戸惑ってはいたが、迎撃しやすい位置にそれぞれ動いていった。


俺のアドバイスが無くても、有利になる位置を自分で考えて動けるようになっている。



……上手くなるの早くないか?



「なんか【アーマー弱いけど、大丈夫ですかー?】って言われてるよー」



りさまるが話しだした辺りで、敵チームが建物に飛び込んできた。

すかさずサブマシンガンで銃弾の雨を浴びせる。


さすが連射性が高い銃だ。

装填されている二十発の弾を撃ちきったときには、相手はもうダウンしている。



弾を再装填リロードし、倒した敵から装備と弾を必要最低限だけ補充する。

そして、俺の隙をつこうと襲いかかる敵に、同じように銃弾を浴びせていく。



「なんかコメントでみんな【ヤバい】って言ってるけど、そっちどうなってるのー?」



りさまるが再び話しかけてきたが、答える余裕が無かった。

今は少しでも止まると負ける。


落ち着くまでは、敵を倒し続けるしかない。

満足にアイテムを漁る時間も無く、弾薬だけを相手から奪い取り、それを次の相手に使用する。


それを繰り返していくだけだ。



襲ってくる敵がいなくなったとき、周囲にはプレイヤーだった亡骸なきがらがいくつも転がっていた。



フーッと軽くひと息つくと、りさまるがまた話しかけてきた。



「コメントで相変わらず【ヤバい】って言われてるけど、ピンチだったの?

一応私も二人は倒せたけど」



そうか、画面までは見れてないから、こちらの状況までは把握できなかったのか。

[ヤバい]は褒める意味で言われてるのかと思った。



返事をしようとすると、それより先にりさまるが驚きの声をあげていた。



「え、ちょっと、【短時間で9キルはヤバい】とか書かれているけど、そんなに倒したの!?」



俺がしゃべすきが無い……。




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