第40話:皆さんは無双をお望みのようです

「今回はみゆきちが着地点決める役だね。

好きな所にしていいよ」



ゲームが始まったので、みゆきちに言う。



二人に場の雰囲気を支配されている感じがするので、どうにか主導権を取り戻したい。

このままでは俺は、ずっと黙ったままになってしまいそうだ……。



「あー、私が選ぶのか。

みんなはどこに降りて欲しいとかあるー?」



みゆきちが視聴者に向けて尋ねた。



えっ、何その高等テクニック?

俺けっこう配信やってるけど、そんな問いかけやったことないんですけど?


[はーい、じゃあそこにしよう]とか、本当に視聴者の意見を取り入れちゃってるし。

なんでそんなにスムーズにやり取りしてるの?



混乱したままマップに着地した。



まぁ、ここまでは序章だから。

ゲームが始まってしまえば、リードするのは俺だ。



落ち着こう、まだあわてるような時間じゃない。



さぁ、俺に着いて来い!



気持ちを切り替え、二人に声をかけようと思ったが、それどころではなかった。



「周り見てたけど、すぐ近くには敵チームいなさそうだったよー」


「オッケー」



りさまるとみゆきちは、互いに声をかけながら連携を取っている。



「そうだよねー、ここはアイテムボックスがいっぱいあるから、けっこう敵チームいることも多いよねー。

今回はいないみたいだし、ラッキーだったね」



しかも、動画に来るコメントに対してもすぐに返事をしている。



……あれ、二人とも普通に上手くなってませんか?

配信自体は俺よりも上手くないか?



動揺していると、りさまるから声をかけられた。



「初号機どうかしたの?

なんかコメント見ると、いつもと様子が違うみたいだけど」



そうだった、まずい。

動画は俺の画面しか配信してないから、プレイが乱れると視聴者には筒抜けなんだ。



とりあえず、ごまかそう。



「ごめんごめん、コメント読むのに慣れてないから、ちょっと戸惑ってた。

たくさんコメントありがとうございます。

反応できてませんが、ちゃんと追ってますよ」



俺にできる最大限の強がりはこれぐらいだ。



この発言に対してどんな反応をされるか不安だったが、コメントは暖かい物ばかりだった。



「もー、しっかりしてよね。

初号機はこのチームの柱なんだから。

頼りにしてるわよ。」



りさまるからも嬉しい言葉が貰えたことで、だいぶ気持ちが落ち着いてきた。



「よし、もう大丈夫。

今回は後方支援するのか、攻めていくのか、俺にどう動いて欲しい?」



りさまるとみゆきちに尋ねる。


返事をしたのは、りさまるだった。



「んー、どうしようかな。

せっかくだから観ている人のコメントを優先してみたら?

いっぱいくれてるみたいだし」



りさまるの言葉を受け、コメント欄を見ると、確かにコメントがいくつか来ている。



「そうだね、そうしようか。

じゃあ一番コメントが多い[無双する]で行こうか。

ガンガン攻めるから、着いてきてね」



俺が言うと、二人は[お手並み拝見だねー]と笑っていた。



今回は武器縛りが無いので、好きな物を選べる。

長距離用と近距離用の組み合わせでいくか。



周囲を探索すると、すぐに良い銃があった。

スナイパーライフルからアサルトライフルに、最近変更になった銃だ。


その先のアイテムボックスを調べると、連射性に優れたサブマシンガンも見つけた。


こんなに早く、狙い通りの組み合わせが揃うとは。



「よし、じゃあ二人にこの銃のヤバさを教えてあげるよ」



ニヤッと笑いながら、りさまるとみゆきちに向けて言った。


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