第39話:コミュ力では勝てる気がしません。

七瀬からそんな提案が出てくるとは、正直思っていなかった。


七瀬と有村と俺、三人でやるゲームは楽しいから、そこは全然良い。

しかし、なぜ七瀬は動画配信の再生数を伸ばしたいんだ?



「なんで七瀬は再生数増やしたいの?

趣味みたいなものだから、今はあんまりこだわってないよ?」



考えてもわからなかったので、とりあえず尋ねてみる。



それに対し、七瀬はあっさりと答えた。



「どうせ配信するなら、再生数多い方が楽しそうじゃない。

これからも三人でゲームやっていくことには、変わり無いんだし」



深読みし過ぎたようだ。

[楽しそう]というのは、理由としてわかりやすい。



それに[これからも三人でゲームをやっていく]とはっきりと言われるのは嬉しかった。

ちゃんと認めてもらってる気がする。



「じゃあ、とりあえずやってみようか。

楽しくなくなったときは、配信やめたら良いし」



俺が答えると、七瀬は嬉しそうに笑った。




その日の夜、早速[三人で]やる配信をやってみることにした。



前回やったときは、あくまで俺が配信者で、七瀬と有村は[一緒にやる人]ぐらいの感じでやっていた。


そのため、前回は特に二人の紹介もしていないし、二人も動画視聴者向けの発言などはしていない。


しかし、今回三人でやるからには、そこは変えていく必要がある。



また、今までは動画へのコメントへの反応もほとんどやっていなかったが、今回はそれも変えてみることにした。


とりあえずは誰がコメントに反応するかは特に決めず、柔軟じゅうなんに対応していく。



……正直俺は上手く反応できる自信が無い。



二人は俺の配信動画のコメント欄を見ながら反応することになるが、特に問題は無いらしい。

なんて頼もしいんだ。



事前に色々二人と話しはしたが、やってみないとわからない部分も多い。

まぁ初回は[なんとなくやってみよう]ということで、一旦落ち着いた。



「こっちは配信の準備はできたけど、二人はどう?」



ゲーム機のパーティ機能を使って、二人に尋ねる。



「大丈夫だよー」


「いいよー」



二人からOKが出たので、配信を始めることにした。



「こんばんは。

今日もいつも通りゲームをやっていきますが、今回から三人でやります。

以前の動画でも参加してくれてた、[りさまる]さんと[みゆきち]さんです」



俺の紹介を合図に、二人とも[視聴者]に向けて話しだした。



「こんばんはー、りさまるです」


「みゆきちです、よろしく」



あっさりした挨拶だが、まぁこんな感じでいいか。



「今回から頂いたコメントについては、できるだけ反応していきますので、いっぱいコメントしてくださいね」



二人の後に補足説明をすると、早速いくつかコメントが入ってきた。



【この前の動画観ましたよー】


【二人ともこのゲーム始めてどれくらいなんですか?】


【今日も前回みたいに武器縛りでやるんですか?】



それに対して、主にりさまるが反応していく。



「わー、観てくれたんですねー。

今回も最初から観てくれてありがとー」


「私もみゆきちも、始めてからまだそんなに経ってないですよ。

だからすぐやられちゃっても許してね」


「今回はとりあえず武器縛り無しでいって、途中リクエストがあれば初号機さんには武器縛りやってもらおうかなー」



……なんだ、このコミュ力は。


なんで初回から、そんなにサラッと対応できるの?



呆気あっけにとられていると、コメントが増えだした。

そりゃあこれだけちゃんと反応してくれるなら、とりあえず書いてみる人もいるだろう。



コメントの一つ一つにりさまるとみゆきちが返事をし始めたが、キリがない。



「とりあえずマッチ始めていきますねー」



俺はまだコメントへの反応をしていないが、とりあえず始めることにした。




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