第42話:アイテム争奪戦

「え、9キルってヤバいよね?

あと一人で二桁いっちゃうじゃん?

え、まだ序盤なのにコレってヤバいよね?」



りさまるとみゆきちが、コメント欄を巻き込みながら会話している。


……あれ、視聴者側に回ってない?

まだゲーム中だよ?



少し戸惑っていると、二人は変わらぬペースでしゃべりながら、良いアイテムだけをすごいスピードで回収していく。



「えっ、ちょっと、俺が倒したんだから良いのはちょうだいよ!

特に高速回復したいから、その金色のアーマーは俺にちょうだい!」



りさまるが俺の目当てのアイテムを真っ先に奪ったので、慌てて言う。



それに対して、りさまるが冗談っぽく返事をした。



「え、女の子が着てる服アーマーを、脱いで寄こせって言うの?

私が今はしっかり着こなしてるのに。

観てるみんなはどう思う?」



あ、この流れはまずい……。

チラッとコメント欄を見ると、


【最低です】


【極悪非道です】


【普通はレディーファーストでしょ】



予想通りの言葉が並んでいた。



くそっ、やはり女の子に弱い奴らばかりか。

こういうときはバッチリ空気読みやがって。



というか、りさまるは視聴者を味方に付けるのが上手すぎる。

たぶん今頃、小悪魔顔でニヤニヤ笑ってるんだろうなー。



しょうがないので、残り物で装備や持ち物を充実させた。

まぁ、無いよりは全然マシだ。



早く他の敵を倒して、今度こそ良いアイテムをゲットせねば。



次の目的地に向かおうとしていると、みゆきちが尋ねてきた。



「ねぇ、なんで弱いアーマーでそんなに倒せるの?

相手の弾が全然当たってないわけではないでしょ?」



そういえば、[そんな装備で大丈夫か?」みたいなことをコメントで言われていたみたいだな。



今それを聞くってことは、みゆきちは良いアーマーを取れていないのかな?

少し心配してチラッと装備を確認すると、二番目に良いアーマーをしっかり着ていた。



くそっ、装備漁っているときに[あるはずだけど、無いなー]と思ってたよ、そのアーマー。



良いアーマーを着ているのに今聞いてきたってことは、視聴者のコメント対応なのかな?

一応しっかり答えておくか。




「アーマーの耐久値が無くなったら、倒した敵が落としたアーマーに着替えるんだよ。

耐久値が無くなった良いアーマーを回復させようとすると、時間かかっちゃうでしょ?

でも、アーマーを着替えるのは一瞬で終わるからね。


いくつも使い捨てしながら敵を倒して、良い装備は後でゆっくり回収って感じかな。

普通は良い装備は倒した人にくれるからね」



最後を皮肉っぽく言ってみたが、みゆきちは[へー]と言うだけだった。

くそっ、完全にスルーしてやがる。


悔しい。



でも、これで説明は一応終わりだ。

敵が多くなりそうな位置に目印ピンを立てて、今度こそ移動を始める。



この後も無双するんだから、多くの敵に遭遇そうぐうした方が良い。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る