第20話:この3人でやる初めての試合

「俺は使用するキャラはどれでもいいから、二人は好きなのを選んでね」



そう伝えると、まずは有村が反応した。



「んー、まだ好きなキャラとか決まってないんだよねー。

とりあえず毎試合順番に、各キャラを使っていくことにするね。

[りさまる]は好きなキャラはもう決まっているの?」



有村の動画配信対応は問題なさそうだ。

とりあえずそこは安心だな。



考えている内に有村の問いに、七瀬が答えている。



「私もまだ色んなキャラを試していってる所だよ。

各キャラごとに全然違う能力を持っているじゃない?

でも能力を使いこなすのが難しいから、好きなキャラを絞れてないのよね」



確かにこのゲームは銃の腕以外に、キャラ能力の使いこなしが重要になる。

使い方や使うタイミングによって、戦況が大きく動くこともある。

得意・不得意があるので、各キャラを試していくのは良いことだ。



「じゃあそれぞれ使うキャラは固定せずに、各試合ごとに適当に選んでいくことにしようか」



俺がそう提案すると、二人から[はーい]と返事が来た。



「それと今回は[みゆきち]の方が経験浅いから、俺はみゆきちのサポートを多めにやっていくことにするよ」



追加で提案すると、また二人から[はーい]と返事が来る。



……なんか二人とも普段よりも素直だな。

ちょっと変な感じもするが、気にするほどでもないか。



「始めようか。

どこに降りるかは、りさまるが決めていいよ」



そう伝え、ゲームを始めた。



りさまるが無難そうな着地点を選び、そこに向かう。

落下しながら周りを確認すると、近くに1パーティいそうだ。



先に片付けておきたいが、武器縛りがあるんだった。

着地点にその武器があるかが問題だ。



「あそこにアイテムボックスがあるはずだから、みゆきちはまずはそこから漁ってね。

ただライトマシンガンがあったら、俺が使うから教えて」



エリア内の建物に目印ピンを付けて、みゆきちに指示を出す。

俺は別の場所へ武器を拾いに行く。



「こっちには無いよー」



りさまるとみゆきちの声が聞こえてきた辺りで、敵パーティの一人と遭遇してしまった。



まずい、こっちは銃が無い……。

突撃するか、撤退するか、相手の様子を見る。



……相手が撃ってこないと判断した次の瞬間、一気に距離をつめた。



数発パンチを先制して当てることができ、先に相手が倒れる。

しかし、こちらの体力も削られた。

回復したいがアイテムが無い。



「どっちか回復持ってない?」



俺の問いかけに対し、りさまるから[あるよー]と返事が来る。



マップを確認し、りさまるの位置と安全そうな位置を確認し、二人に告げる。



「回復取りに行くからちょうだい。

一人倒したけど、仲間はやれてない。

体勢を立て直すから、一旦移動するよ」



手短かに伝えたが、問題無かったようだ。

二人とも示した位置にサッと集まってきた。



「初心者の内はチームから離れるとやられる確率上がるから、みゆきちはあまり離れすぎないでね。

りさまる、回復ありがとう」



俺が二人に声をかけると、次はりさまるが話しだす。



「早くライトマシンガン見つけたいね。

どこかありそうな場所はある?

あと、今からどう動こうか?」



これからの動き方としては……、

まず銃と弾を少し拾う。


その後、移動の途中で敵を倒し装備を奪う。


更に数人倒し、チーム全員の装備を一定以上にする。


こうなるのがベターだ。



今の状況からその可能性が高いルートを考える。



「よし、ここを漁りに行って、その後この場所経由でこっちに行こう」




マップで各位置に目印ピンを付けながら、二人に移動経路ルートを説明した。



「なんでそのルートが良いと思うの?」




説明が終わるとすぐに、みゆきちから鋭い質問が飛んでくる。

勉強熱心だし、良い質問だ。


だが説明が難しい。



「今度この動画観ながら、解説するね」



そう答えて、その場は乗りきった。




移動先の建物に、読み通りお目当ての銃があった。

これで敵に遭遇しても大丈夫だ。



「銃あったから、二人とも好きに攻めて行っていいよ。

俺がカバーするし、やられても復活させるから」



そう伝えると、[やったねー]と楽しそうに二人が話している。

言った手前、俺がやられる訳にいかない。


ちょっと集中しよう。



目的地までの移動の間、良い具合に敵チームがいた。

俺が[敵の位置]と[自分達が攻撃を仕掛ける位置]を示すと、二人ともすぐに動きだす。



俺の攻撃を合図に三人で狙い撃ちし、すぐに敵チームは倒れていった。



この調子だと、思ったより苦労せず装備が集まりそうだ。



「敵と撃ち合うときの位置関係って、大事なんだねー」



みゆきちが独り言の様につぶやいた。

それがすぐにわかるだけで、正直すごいと思う。


……普段はアホの娘なのに。




その後も数組の敵と遭遇した。

二人ともまだ弾の命中率は良くないので、よく撃ち合いで負けてダウンしていた。



しかし、考えながらやっている感じが伝わってくる。


[こっちの銃で撃つべきだったなー]とか[今のは位置取りをミスったなー]といったことを、お互いに言いあっている。


俺は全部教えずとも、補足するだけで良いので非常にありがたい。



試合マッチも終盤になり、残りは5チーム。



「せっかくだから1位なろうか。

最後は俺もちょっと出しゃばるよ」



そう話した後、積極的に敵を倒しに行った。



敵がいる場所はだいたい予想がつく。

こちらが先手を取ると、敵はすぐに崩れていった。



1チーム倒し終わると漁夫の利を狙い、別チームが飛んで来る。

それに対しても予想はしていたので、裏取りすることで対応していく。



そうやって倒して行くと、画面に1位を示す画像が出た。



「やったー!!」



りさまるとみゆきちが同時に歓声を上げた。



「わーい、初めて1位だー。

[初号機]のおかげだねー」



テンションが上がっているのか、みゆきちが褒めてくる。



「ほんとよねー。

リードしてくれるし守ってくれるし、カッコよかったー」



続けて、りさまるが褒めてくる。



……ん?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る