第13話:二人とも熱心に聞いてくれます

「いいねー、やろう!

今なら1位になれちゃうかも」



少し得意げな表情をしながら、七瀬が楽しそうに言った。

得意げな表情も可愛い。



「じゃあ俺は最初は何も口出ししないから、いつも通りやってみて」



そう告げ、マッチが始まった画面を見つめた。




……が、あっさり死んだ。



「今のは最初に降りた場所が悪かっただけだから!

次は密集地帯は避けるから大丈夫。」



俺も有村も何も言ってないのに、七瀬が言い訳している。

[1位になれちゃうかも]宣言をした直後なので、恥ずかしかったのだろう。



いつものお返しとばかりにニヤニヤ顔で七瀬を見つめていたが、こちらを見ることはなかった。


悔しい。




「よし、ここなら周りに敵はいない。

最初に装備さえ整えられたら、もう大丈夫なんだから」



相変わらず俺と有村は何も言ってないが、七瀬が一人で実況していた。




……が、やっぱりすぐ死んだ。



「もう、どうなってるのよ!

いつもよりすぐ死んじゃうじゃない」



ちょっとお怒りモードだ。

今ニヤニヤ顔はまずい、解除しないと。



ばっちり真顔に戻った後、七瀬に話しかけた。



「えっとね、色々あるけどまずは敵に対して突っ込んで行き過ぎだね」



「どういうことよ!?」



まだお怒りモードの七瀬は、俺の方を向くとイライラを俺にぶつけてきた。



(怒ってる顔も可愛いとかあり得るんだなー)



今何か言ってもマイナスなので、七瀬が放つ小言をスルーしながら別のことを考えていた。



しばらくすると小言タイムも終わったので、ようやく口を開けた。



「一回で敵を倒そうとしてるから、弾を再装填リロードしている間が無防備になっちゃってるんだよ。

銃の持ち替えもあんまりできてないし」



そこまで言ったときに、意外と有村が食いついてきた。



「銃の持ち替えってなに?」



(ゲームはあまりやらないって言っていたけど、興味はあるのかな?)



せっかくなので有村にもしっかりと説明することにしよう。



「このゲームでは銃は二つ持てるんだけど、メインとして使う銃をもう片方に変えることを[持ち替え]って言うんだ。

リロードするよりも持ち替える方が早いから、攻撃を続ける場合、片方を撃ちきったら持ち替えした方が良いことが多いんだよ」



納得した様子で有村が頷うなずいた。

ついでに[初めて聞きました]みたいな顔をしている七瀬も頷いていた。



「二つの銃をどっちも撃ちきっちゃうとリロードするしかないから、そこを狙われると逆にピンチになっちゃうよね。

だから攻めきるのか、撃ったらちょっと引いて体勢を立て直すのか、どちらでいくかの判断が大事なんだ」



続けて説明すると、二人とも熱心に聞きいっていた。



「弾の命中率が低いときは、無理せず体勢を立て直しながら倒していった方が良いと思うよ。

リコイルコントロールもまだそんなに慣れてないみたいだし」


そこまで説明すると、また有村が反応した。



「ねぇリサ、リコイルコントロールってなに?」



「ごめん、私も全然わかんない」



専門用語だから知らなくても仕方ない。

むしろ聞き流さずしっかり疑問に思ってくれるのは嬉しいことだ。

少し嬉しくなりながら、疑問に答えた。



「リコイルっていうのは銃を撃つときの反動だよ。

連続して撃ってると反動で狙いからズレていっちゃうから、弾が当たるように制御するのがリコイルコントロールだよ。

ちょっと試しにやってみようか」



そう言いながら練習モードを開いて、コントローラーを七瀬に渡す。



「この銃であの標的を撃ってみて」



そう伝えると素直に標的を撃ちだす。

うん、素直な七瀬も可愛い。



見とれていても次に進まないので、泣く泣くまた説明を始める。



「撃ってると徐々に弾が上にズレていくでしょ?

それがリコイルだよ。

この場合撃ちながら右スティックを下に倒せば、ズレが無くなるよ」



そう話すと、七瀬が挑戦を始めた。



「理屈はわかったけど、相変わらずブレブレなんだけど。

ちょっと試しにお手本見せてよ」



そう言いながら俺にコントローラーを渡してきた。



(俺の感度設定と違うんだけどなー)



そう思いはしたが、断るわけにもいかない。

少し感度を確認した後、バババーッと撃ってあげた。



「え、なにそれ!?

ちょっと、もっと撃ってみてよ」



驚いた様子で七瀬が言ってきたので、とりあえず何回もバババーッと撃ってあげた。




「え、なんで?

なんでそんなにズレないの!?」


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