第12話:感度を調整しよう

(まじすか、七瀬さん……)



有村はゲームあまりやらないらしいから聞いてくると思ったが、まさか七瀬も知らないとは。



今まで完全デフォルトでゲームしてたんだな。



「じゃあ開くから、ちょっとコントローラー貸して」



そう言い受け取ると、設定画面を開いた。



「へー、こんなのあったんだね。

でも何を設定するの?」



七瀬が不思議そうに尋ねてくる。



「色々あるんだけど、一番は移動とかエイム時の感度だよ」



七瀬も有村も頭の上に[はてなマーク]が出ている感じだ。



有村もいるし、一度しっかり説明しておくか。



「キャラクターの視線を動かしたり、銃の狙いを付けるときに、コントローラーの右側スティックを動かすでしょ?

例えば同じ量視線を動かそうとしたときに、いっぱいスティックを倒すか、ちょっと倒すかを変えられるんだよ」



二人を見ると、まだ[はてなマーク]が出てる。



むしろさっきよりも増えている感じもする。



「実際やってもらった方が早いかもね」



そう言いながら練習モードを開き、設定をした。



「はい、これが[感度]が一番低い状態ね」



コントローラーを渡し、七瀬に操作をやってもらう。



「え、なにこれ?動くのすっごく遅いじゃない」



予想した通りの反応が返ってた。

再びコントローラーを借り、[感度]を高くした状態で渡した。



「え、今度は早すぎて、すぐ視線が飛んでっちゃうじゃない」



七瀬からまた予想通りの反応が返ってきた。



あぁ、なんか楽しい。

あの七瀬が自分の思ったように反応するなんて。

いつも予想外のことばかり言うから。



喜んでいると、その姿を有村にばっちり見られていた。



しまった、七瀬はゲームに集中しているからと油断した。

無表情で見つめられるのは意外と辛い。



「そんな風にけっこう変わるから、自分に合った感度に設定する必要があるんだよ」



有村の意識もゲームに向かわせようと、慌て気味に言った。



「じゃあ感度を変えながら銃を撃ってみて、一番撃ちやすいのにしたらいいのね?」



前ゲームしたときも思ったが、七瀬はこちらの発言の意図を理解するのが早い。

早速感度を下げた状態から試し撃ちを始めている。



このまま試し撃ちを進められると困るので、慌てて七瀬に尋ねた。



「エイムリングって使ったことある?」



試しに持ってきた1つを七瀬に手渡す。



受け取った後眺めたり触ったりしていたが、



「何これ、スポンジ?

なんでドーナツみたいに穴あいてるの?」



エイムリングをふにふに潰しながら、七瀬がつぶやいた。



まぁ間違ってはないが、やっぱり知らなかったか。

そう思いながら説明を始めた。



「それちょっと伸びるから、右スティックの根元部分にはまる用にちょっと着けてみて。

あんまり引っ張り過ぎると破れちゃうから、気をつけてね。」



恐る恐る着けた後、感触を試していた七瀬が驚いたように言ってくる。



「なにこれ、めっちゃ固い!

スティック全然倒れないじゃん。

ちょっとミユキもやってみて」



なぜかコントローラーを有村に渡している。



「え、ほんとだ。左と比べると全然倒れないじゃん。

なにこれ?」



有村も同じ感想のようだ。

無理もない、俺も最初はそう思った。



「それ着けたまま感度上げると、銃撃ったときけっこう当たるようになるから試してみて」



七瀬は言われるがまま感度を上げている。

素直だな、可愛い。



小悪魔のときと大違いだ。

でも小悪魔のときも可愛いよな。



考えが脱線し始めていたが、



「あれ?本当だー。

なんかいつもより当たる気がする」



七瀬の嬉しそうな声で我に帰った。

当たるようになったのがよほど嬉しかったのか、有村に色々と話しかけている。



どうやら感度調整も一旦終わったようだ。

調整の成果を確認しつつ、プレーの助言をすることにしよう。



「じゃあ、一回マッチをやってみよっか?」



楽しそうに話す二人に提案した。

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