第11話:3人で、とか聞いてない

(あれ、なんで有村もいるんだ?)



思わず二度見してしまった。


だがここで動揺するのはカッコ悪い。

王道パターンの対応でいくには、サラッと返事をする必要がある。



「いや、俺も今着いたとこだよ」



「え、どこか行ってたの?

学校からは先に出たよね?」



七瀬から予想外の返しが来た。

まずい、誤魔化さなくては。



[実は妄想しながらずっと待ってました]なんて言える訳がない。



「あー、ちょっと本屋に寄ったりしてた」



「なーんだ、それなら急ぐ必要あんまりなかったね。」



七瀬は有村に同意を求めるようにいった。



どうやらこれ以上追求はされずに済みそうな感じだ。

危ない危ない、ボロが出る前で良かった。



密かにホッとしながら、有村の方をチラッと見た。



……うん、まだ普通にいる。

帰り道が一緒だったのかと思っていたが、それならもうここにいる必要はないはずだ。



「じゃあ入ろっか」



七瀬の楽しそうな声の後、二人は揃ってゲームカフェの入り口の方へ歩いて行った。



(あれ?デートは?)



状況に着いていけず戸惑いながら七瀬達に着いていくと、[3人です]と七瀬が店員さんに告げている。



「3人?」



俺が思わず呟くと、キョトンとした顔で七瀬が言った。



「えっ、[今日はいつもと違って、ゲームの話は放課後にいっぱいできるからね]ってメッセージ送ったじゃん」




(そういう意味かよおおぉぉぉ!!)



楽しみにしていたのは、[有村と]ゲームの話をすることだったらしい。

驚きと悲しみで発狂したい気分だ。



それでもどうにか平静を装っていると、



「私だけだと思ってたの?

さては、デートみたいだなーとか考えてたんでしょ?」



小悪魔に変身したエスパー七瀬は、ニヤニヤしながら俺の考えを見抜いた。



(あぁ、そうですよ。初デートだと思って、バッチリ浮かれてましたよ。

あと、俺の思考を読むのは止めてください!

でもその顔は相変わらず可愛いです!)



そう言ってやりたいが、そんな度胸を持ち合わせているわけがない。



「だって言ってくれないからさー」



そう言うので精一杯だった。



「やっぱりそうだったんだ。

だから今日はいつもより様子が変だったんだね。

二人で遊ぶにはまだ早いかな」



イジワルそうな口調で七瀬が言う。




……ちょっと待て。



最初に[いつもより]とかいう突然のディスりがあったが、とりあえずそれは置いておこう。



[まだ早い]って言ったよね?



ということは、その内二人でも遊ぶようにもなっていくってことだよね?



(やったああぁぁ!!)



今度は喜びで発狂しそうになった。

表情にも出ているだろうが、もうどうでもいい。



明らかに上機嫌になっていると、有村が驚いたように言った。



「リサって榊さかきといつの間にそんなに仲良くなったの?」



(やっぱり他の人から見ても仲良い感じに見えるんだ)



有村の言葉で更に喜んでいると、少し笑いながら七瀬が返事した。




「最初はちょっと色々あってねー。

それからは何か言うたびに表情がコロコロ変わるから、見てて面白くって」



否定できないのが悔しい。



「あー確かにコロコロ変わるね」



有村も完全に同意してるし。

有村にもバレてるとは思ってなかった。



そんな会話をしていると受付が終わり、店員さんに席へ案内してもらった。




今回は七瀬の練習なので、ゲーム機は1つだけ借り、七瀬にディスプレイ正面の真ん中に座ってもらうことにした。



「よし、ゲームは立ち上がったね。

じゃあまずは設定を調整しようか」



そう七瀬に告げると、不思議そうな顔で答えた。



「設定ってなに?」

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