第14話:ゲームの練習量はどれくらい?

「なんでズレないのって、ズレないように右スティックでコントロールしてるからだよ」



自分の説明の仕方が良くなかったかなと考えながら、七瀬に答える。



すると、違う質問が返ってきた。



「それはわかってるわよ。

私だって同じようにコントロールしようとしてるし。

そうじゃなくて、同じようにやってもなんでさかきはそんなにズレないの?

って聞いてるの」



そういうことか。

説明の仕方が悪かった訳ではなかったため、少しホッとした。



それよりも名前を言われたことが嬉しい。



(デートするようになったら、隼人はやとって呼ばれるのかな。

……よし、妄想のネタが増えた)



心の中でガッツポーズをしながら、七瀬の質問に答えた。



「それは練習量の差だよ」



答えはそれしかない。



ただ七瀬を納得させるには不十分な回答だったようだ。

次の質問がやってくる。



「練習量の差って言われてもねー。

私だってけっこうやってるし。

ちなみにさかきは今までどれくらいやってるのよ?」



言われてみて気付いたが、特に計算したことがない。

ごまかす必要も無いので、ちょっと計算して答えた。



「まだ一年ぐらいしかやってないから、だいたい1300時間ぐらいかな?」



反応が無いと思って二人の様子を見ると、わかりやすい表情で軽く引いてた。



「毎日やってたら普通にこれくらいになるって!

それにもっと長時間やってる人もいっぱいいるよ」



慌てて補足した。

どうやらその慌てっぷりが面白かったのだろう。

二人ともクスクス笑いだした。



「ごめんごめん、ちょっと驚いただけだから」



有村がフォローしてくれる。

ありがとう、君は良い人だ。



「テレビやネットの時間をゲームに回したら、確かにそれくらいはいきそうね」



七瀬もフォローしてくれる。

ありがとう、君は可愛い人だ。



……あと、良い人だ。



「FPS界隈だとほんとこれぐらいのプレー時間はいっぱいいるからね」



とりあえず念押ししておいた。



すると、まだちょっと笑いながら七瀬が聞いてきた。



「それはもうわかったから。

それくらい練習する以外に、ズレなくする方法は他にないの?」



こちらが[あります]って言うのを、まるでわかってるような質問をしてくる。

七瀬はやはり頭が良い。けどちょっと怖い。



「タップ撃ちを心がけると良いよ。

パパパッ、パパパッて三発ぐらいで撃ったら、間隔をちょっとあけるの」



そう答えると、有村が食いついてきた。



「なんでその撃ち方がいいの?」



相変わらず重要そうな所にちゃんと質問してくる。

有村もたぶん頭良いんだろうな、うらやましい。



スネてもしょうがないので、ちゃんと説明する。




「銃を撃ったときの反動リコイルは、連射する程大きくなるんだ。

狙って撃った一発目はちゃんと当たるけど、連射するとズレてくでしょ?

連射でズレが大きくなる前に、一回リセットさせるのがこの撃ち方だよ。

俺もよくやるし、上手い人も普通にやってるよ」



そこまで言うと七瀬は早速タップ撃ちを試していた。

聞いてからやるまでが早いなー。



「おー、確かにこれの方が当たるわね」



標的に向かってひたすらタップ撃ちをしながら、七瀬がつぶやく。



しかし、ある程度やった所で急に手を止め、めんどくさい要求を突きつけてきた。



「なんとなくそのリコイルコントロールってのは、わかった気がする。

だけど、私には武器の情報も足りてない気がするの。

だから私が勉強するために、今日の実況から私が指定する武器だけで戦ってよ」




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