第15話:武器縛りプレイ

「え、なんで?」



思わず本音が出た。



まずかったようだ。

七瀬の中の小悪魔が起きてきた。



「一生懸命頑張ります!って確か言ってたよね?

忘れちゃったのかな?」



ヤバい、また転校の危機がやって来そうだ。

盗み聞きの件が広まっては困る。

営業スマイルだ、営業スマイル。



最大限の笑顔で七瀬に答えよう。



「そんなー、忘れるわけないじゃないですかー。

[なんで?]って聞いたのは、七瀬さんの発言が俺の考えと同じだったからです。

今度は武器の情報を教えようと思ってた所だったから、なんで先読みできたのかなーって」



(こんな感じでどうでしょうか?)



そう思いながら七瀬の表情を見た。



……大満足のようだ。

小悪魔フェイスのままニヤニヤしていた。



ホッと胸をなでおろし、有村の方を見ると、不思議そうな顔をしていた。



どうやらあの放課後に話した内容までは、七瀬は有村に言わなかったようだ。



本当に[内緒]にしてくれているらしい。

そこは感謝しておこう。



「とりあえずどの武器にするかは、夜にメッセージ送るから」



そう楽しそうに七瀬が言ってきた辺りで、席の終了時間が来た。

今日の所はここでお開きにするとしよう。





夜になると、本当に七瀬からメッセージが来た。



《今回は単発撃ちの拳銃ピストルのみでやって。

あの武器けっこう強いんでしょ?》



(さては使ったことないか、使っても敵に当てられなかったな?)



そう本音を返事しても、また不利になるだけなので、



《わかったー》



と返事をした。

我ながらそっけない返事だが、しょうがない。

波風は立てないようにしないと。



七瀬からの指令も来たので、動画配信の準備を進めていく。



ゲーム実況の場合、今回のように特定の武器だけを使用する[縛りプレイ]は人気もある。

縛りプレイの告知をSNS上で事前にやっておいたので、配信を始めるといつもより多めの視聴者が来た。



「こんばんは。

今日はこの銃のみを使用して、やっていきたいと思います」



そう前置きを話して、ゲーム実況をスタートさせた。





次の日の昼休み、七瀬と有村が話しかけてくるかと思っていた。



しかし、実際はいつも通りのまま。

少し離れた位置でおしゃべりしている。



こちらから行くと周囲がざわつき始めそうなので、いつものように盗み聞きを始めた。



「ねぇミユキ、昨日の動画観た?」



「観たよー。あの銃が今回のリサの指定した武器だったの?」



「そうだよー。なんか普通に勝ってたからびっくりしちゃった」



よし、ちゃんと二人とも観てたんだな。

これで観られていなかったら、さすがにちょっとへこんでいた。



「リサはあの武器あんまり使わないの?」



「私は使ったら負けちゃうから、あんまり使わなーい。

ただちゃんと敵に当てられる人が使うとあんなに強いんだね!

すごいなーって、ずっと思いながら観てた」



(はい、褒めタイム来ましたぁぁ!)



すごいなーって。

あの七瀬が[すごいなー]って思いながら観てたよ。



褒められたときはどうしても表情に出てしまう。

口元を隠して、どうにかごまかさないと。



ニヤニヤしていると、急に七瀬と有村の会話のボリュームが下がった。



(お、コソコソ話ですか?

次は何を言うのかな?)



そう思いながら、さらに二人の会話へ意識を集中させた。



「ほら、あんな感じでずっと会話聞いてるんだよ。

ミユキは気付いてなかったでしょ?

いつもあんな感じなの」



「えー、そうなの!?

全然気付かなかった」



バッと会話の方へ視線を振った。



そこには、こちらを見ながらニヤニヤ笑う小悪魔がいた。



……今回は二人も。

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