第15話:武器縛りプレイ
「え、なんで?」
思わず本音が出た。
まずかったようだ。
七瀬の中の小悪魔が起きてきた。
「一生懸命頑張ります!って確か言ってたよね?
忘れちゃったのかな?」
ヤバい、また転校の危機がやって来そうだ。
盗み聞きの件が広まっては困る。
営業スマイルだ、営業スマイル。
最大限の笑顔で七瀬に答えよう。
「そんなー、忘れるわけないじゃないですかー。
[なんで?]って聞いたのは、七瀬さんの発言が俺の考えと同じだったからです。
今度は武器の情報を教えようと思ってた所だったから、なんで先読みできたのかなーって」
(こんな感じでどうでしょうか?)
そう思いながら七瀬の表情を見た。
……大満足のようだ。
小悪魔フェイスのままニヤニヤしていた。
ホッと胸をなでおろし、有村の方を見ると、不思議そうな顔をしていた。
どうやらあの放課後に話した内容までは、七瀬は有村に言わなかったようだ。
本当に[内緒]にしてくれているらしい。
そこは感謝しておこう。
「とりあえずどの武器にするかは、夜にメッセージ送るから」
そう楽しそうに七瀬が言ってきた辺りで、席の終了時間が来た。
今日の所はここでお開きにするとしよう。
◯
夜になると、本当に七瀬からメッセージが来た。
《今回は単発撃ちの拳銃ピストルのみでやって。
あの武器けっこう強いんでしょ?》
(さては使ったことないか、使っても敵に当てられなかったな?)
そう本音を返事しても、また不利になるだけなので、
《わかったー》
と返事をした。
我ながらそっけない返事だが、しょうがない。
波風は立てないようにしないと。
七瀬からの指令も来たので、動画配信の準備を進めていく。
ゲーム実況の場合、今回のように特定の武器だけを使用する[縛りプレイ]は人気もある。
縛りプレイの告知をSNS上で事前にやっておいたので、配信を始めるといつもより多めの視聴者が来た。
「こんばんは。
今日はこの銃のみを使用して、やっていきたいと思います」
そう前置きを話して、ゲーム実況をスタートさせた。
◯
次の日の昼休み、七瀬と有村が話しかけてくるかと思っていた。
しかし、実際はいつも通りのまま。
少し離れた位置でおしゃべりしている。
こちらから行くと周囲がざわつき始めそうなので、いつものように盗み聞きを始めた。
「ねぇミユキ、昨日の動画観た?」
「観たよー。あの銃が今回のリサの指定した武器だったの?」
「そうだよー。なんか普通に勝ってたからびっくりしちゃった」
よし、ちゃんと二人とも観てたんだな。
これで観られていなかったら、さすがにちょっとへこんでいた。
「リサはあの武器あんまり使わないの?」
「私は使ったら負けちゃうから、あんまり使わなーい。
ただちゃんと敵に当てられる人が使うとあんなに強いんだね!
すごいなーって、ずっと思いながら観てた」
(はい、褒めタイム来ましたぁぁ!)
すごいなーって。
あの七瀬が[すごいなー]って思いながら観てたよ。
褒められたときはどうしても表情に出てしまう。
口元を隠して、どうにかごまかさないと。
ニヤニヤしていると、急に七瀬と有村の会話のボリュームが下がった。
(お、コソコソ話ですか?
次は何を言うのかな?)
そう思いながら、さらに二人の会話へ意識を集中させた。
「ほら、あんな感じでずっと会話聞いてるんだよ。
ミユキは気付いてなかったでしょ?
いつもあんな感じなの」
「えー、そうなの!?
全然気付かなかった」
バッと会話の方へ視線を振った。
そこには、こちらを見ながらニヤニヤ笑う小悪魔がいた。
……今回は二人も。
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