第4話:年がバレた

「こんばんは、今日はよろしくお願いします。

[りさまる]さんと、[麦わら]さんですね。[コルレオーネ初号機]です。

呼びにくいと思うので、好きに読んでくださいね」



そう俺が呼びかけると、一人ずつ返事が返ってきた。



「こんばんは、麦わらです。コルさんもりさまるさんもよろしくお願いします」



「こんばんはー、りさまるです。初号機さんも麦わらさんもよろしくお願いします。

あんまり上手くないエンジョイ勢なんですけど、頑張ります」



(あー、やっぱり七瀬の声に似てる)




こういった類のゲームは大きく分けると2種類の人達に分かれる。


ゲーム内で勝利するためにストイックにプレイする[ガチ勢]と呼ばれる人達と、勝ち負けにはこだわらず楽しさを優先する[エンジョイ勢]と呼ばれる人達だ。




俺はどちらかと言えばガチ勢だが、七瀬は普段の会話の内容から推測するとエンジョイ勢だ。


その点でも[りさまる]と[七瀬リサ]は共通点があった。



……まぁそんなこと関係なく声を聞いた時点で七瀬だと確信していたけど。





「みなさんはどのキャラを使うんですかー?

私は回復キャラを最近使ってるんですけど、使ってもいいですか?」



「俺は別に構わないですよ。

最近シールドキャラのカッコいいスキンが当たったんで、これでいこうと思ってるんですけど、コルさんはどれにするつもりですか?」



「俺はどれでもいいんですけど、足が速くなるキャラにしようかな。

俺もこのキャラの良いスキンあるし」



「えーいいなー、私もカッコいいスキン早く欲しいなー」



ゲームを始める前に、使うキャラが被らないよう話をしたらスキンの話に脱線した。



スキンは使うキャラの見た目が変わるもので、このゲームではガチャで手に入る。

レアなスキンの方が見た目がカッコ良かったり派手だったりする。


見た目が変わるだけで能力や強さは変わらないが、自分の好きな見た目のキャラを使った方がモチベーションは上がることが多い。




りさまるがパーティーにいるおかげか、昨日よりも雑談多めでゲームが始まった。



「あ、私が降りる場所決める役ですね。

初号機さんどこかオススメの場所はありますか?」



「んー、どこでもりさまるさんの好きな所でいいですよ。

良い装備が落ちてなくても倒した奴から取ればいいですし」



「おー、さすが強い人が言うことは違いますねぇ〜」



おだてるような言い方をわざとして、りさまるが半分からかいながら言った。




今回やっているようなバトルロイヤル系のゲームは、バトルエリアとなる島内の好きな位置に上空から飛び降りる所からだいたい始まる。



島内には建物があったり山や川があったりと様々だが、至る所に落ちている武器や装備を使用して他のプレイヤーと戦う。


プレイヤーを倒すと、そのプレイヤーが持っている武器や装備を回収し使用することができる。



初心者のうちは拾った装備で準備を整えた後に戦うことが多いが、倒したプレイヤーから回収した方が効率が良いので、俺は最初の武器にはこだわってなかった。



弱い武器で強い武器を持ったプレイヤーを倒す腕がないとこのやり方はできないので、りさまるはそこをからかったのだろう。



りさまるにからかわれても不思議と嫌ではなかった。

むしろ楽しそうにしている七瀬の姿が目に浮かび、こちらも楽しくなってきた。




バトルエリアに着地した後は各々が好きな武器を拾っていった。


「こっちに銃があるよー」


「ここに弾があるよー」


野良でやっているときはいちいちゲーム内コマンドで伝える内容を、口ですぐに伝えられるのはやっぱり楽だ。



「次の円はちょっと遠いみたいなんで、ある程度漁ったら移動を始めた方が良さそうですね」




七瀬……じゃなかった、りさまるが少し焦った声で言ってきた。

焦った声も可愛い。

というか全てが可愛い。




円というのはバトルエリアを徐々に狭くしていくことでプレイヤー同士の戦闘を促すシステムだ。


円の外にいると常にダメージを受けるので、円外にいるプレイヤーは円内に入るよう移動する必要がある。


円が小さくなるまでの時間もカウントダウンされているので、早めに動くかギリギリで動くかはプレイヤー次第だ。




「最初の円はあんまり痛くないから、ゆっくりでもいいけど麦わらさんはどっちがいいですか?」




そう俺が尋ねると、麦わらさんが答えた。




「確かに最初の円はダメージ小さいから動くのギリギリでもいいですけど、待ち伏せされると面倒なんで早めに動きたいですね」




確かに、と思える内容だった。


俺一人の場合は待ち伏せなど返り討ちできるが、他の2人がどうかはわからないしな。




「いいですね、そうしましょう。

たぶんこの辺りに別チームがいると思うんで、このルートから行ってそいつらを倒しちゃいましょう」



マップ上の建物を指しながらルートの説明し、それ通りに移動していった。




移動先には予想通り別チームがいたが、相手に気づかれる前に先制攻撃できたのであっさり倒すことができた。




「さっすが初号機さん!言った通りの場所に別チームがいましたね!


しかもバババーッて一気に倒しちゃうんですもん、私の出番ほとんど無かったじゃないですか」




女の子に褒めて貰うのが嬉しいのか、七瀬に褒めて貰ってるから嬉しいのか、どちらかわからないがとにかく嬉しい言葉だった。



「じゃあ次はりさまるさんの分と麦わらさんの分をちゃんと残しておきますね」



そんなことを言いながら倒したプレイヤーのアイテムを回収した。



装備を充実させ次の円に向かって移動している間も、りさまるを中心に雑談が盛り上がっていた。



楽しい。

こんなに楽しいゲームは久しぶりだ。



そう思い浮かれていると、りさまるがある質問を投げかけて来た。



「初号機さんと麦わらさんは普段は何されてる方なんですかー?」



「俺は大学生です。今3年です」



そう答えた麦わらさんにつられて



「俺は高校生ですよー、今2年です」



と答えた。






「えー!?初号機さん私と同じ年じゃないですかー!?」




りさまる、いや七瀬のこの台詞で自分が失敗したことに気づいた。

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