第3話:一緒にゲームをすることになった

今日も帰った後に思い出すのは学校での七瀬と有村の会話だ。



……………


………




「初号機さんいつも一人で野良とばっかやってるんだよね、上手いのに。ゲーム友達いないのかな?」



「ごめん、リサ。野良ってなに?」



「あー野良ってのはね、人とパーティーを作らずに一人でゲームをやっている人のことだよ。


なんでそう呼ぶのかはわかんないんだけど、みんなそう呼んでるんだよねー。

野良犬とかと同じ意味の[野良]なのかな?

でもあんまり良い表現じゃないよねー」



「そんな意味だったのね。

リサもゲームするときは野良でやってるの?」



「パーティーでやったり、野良でやったり、どっちでもやってるよー」





(パーティーかー、確かに全然やってないなー)



(でも誰とやろうかなー)



などと考えていると七瀬が言った。



「SNSの人とパーティー作って一緒にやってくれたらいいのになー」




その手があった。

SNSで交流がある人も少しはいる。

今日誘ってみようかな。



人と会話した方が会話の内容も[動画映え]するかもしれないし。



午後の授業は頭に入ってこず、夜にやるゲームのことでいっぱいになっていた。





………


……………




思い出しながらボーっとしてしまっていた。



スマホを確認すると、募集をかけていたSNSの書き込みに反応があった。

どうやらパーティー全員分は集まりそうだ。



その夜は反応をくれた人と一緒にゲームをやった。







次の日の昼休みも聞き耳モードだった。



果たして昨日の放送を七瀬は観てくれていたのか。

…ついでに有村も。



ソワソワした気持ちを隠すように澄まし顔で窓の外を眺めていると、七瀬と有村の会話が始まった。





「リサ昨日の動画は観た?」



「観たよー。珍しくパーティーでやってたね!しかもSNSで募集した人達と!

私の願いが通じたのかなー?

…あれ?昨日の動画を知ってるってことは、ミユキも初号機さんの動画観たの?」



「バレたかー、実はチャンネル登録したんだよねー。

なんだか上手い人の動画は観てて楽しいよね。爽快感があるっていうか」



「おっ、ミユキもハマってきましたねー。

そうなんだよー、観てて楽しいよね。

でもたぶん一緒にやったらもっと楽しいと思うんだ!

次募集したら私も立候補してみるつもり!」





楽しそうに話す七瀬の姿に思わず見とれていた。

笑顔の女の子ってどうしてあんなに魅力的なのだろうか。



その姿を見ながら妄想が始まった。



(そうかー、次募集したときに七瀬を探せば一緒にゲームできるのかー)



(昨日のメンツは男の人ばっかだったもんなー。あれはあれでいつもより楽しかったけど、女の子がいるとまた違うのかなー)



(女の子と一緒にゲームしたことないんだよなー。どんな感じなのかなー)



(しかも七瀬みたいな可愛い子と…)





妄想がどんどん膨らんでいき、ニヤニヤが止まらなくなってきた。

周りから見たら手で口元を隠した不自然な奴に見えていただろう。



しかし、



「でもあんなガチガチに緊張した喋り方されたら、やりながら笑っちゃうかもしれないよねー」



七瀬の一言で思わず机に倒れこんでしまった。



昨日もそうだったが、なんで彼女たちの会話は一度持ち上げてから落とすんだろうか。



確かに初めてだったから緊張はしていた。

ただ2回目以降は大丈夫だろう。



……たぶん。







家に帰ったらすぐにSNSで募集をかけた。

今日は昨日よりも募集に反応してくれた人が多い。



ランダムで人を選ぶ振りをして七瀬を選ぶ小細工もやりやすくなった。



「どれだどれだー?七瀬のアカウントは」



ウキウキしながら探していると、募集の中に[りさまる]というアカウントがあった。



「これやぁぁぁ!!」



普段使うことも無い関西弁が出る程テンションが上がった。



それからちょっと気持ちを落ち着かせた後、おそらく七瀬だと思われるアカウントに招待を送った。



他のメンバーはおそらく男性であろうアカウントを選び招待した。

いきなり俺以外全員が女の子という事態はさすがにまだ早い。



招待を送るとみんなすぐ入ってきた。

準備万端で待っていてくれたようだ。




「こんばんはー。よろしくお願いします」



学校で聞き慣れた声がした。


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