第31話:視線のやり場に困ります

七瀬の今日の服装って、俺が送った画像とほとんど同じだよな。


スカートに、黒のニーハイだし。

上半身は体のラインが出やすい感じなのも似てる。

体の[ある部分]がかなり強調されちゃってるし。



おまけにメガネもかけてる。

いや、確かに送った画像はメガネかけてる人だったけども。

七瀬って普段はメガネかけてないじゃん。



二人は段々近づいてくるが、七瀬から目を離せない。

自分の好みの服を着ているせいか、いつもの数割増しで可愛く見える。



「ごめんねー、お待たせ」



七瀬はいつも通りの感じで話しかけてきたが、思わずドキッとしてしまった。

俺はこんなに可愛い子といつも会話していたのかと、再認識させられた。



俺が返事をしなかったので、七瀬が再び話しかけてくる。



「あれ?さかきどうかしたの?」



何か返事をしないと。



「いや、メガネかけてるのが珍しいなーと思って、そっちに意識いっちゃってた」



焦って思わず出た言葉は、情け無いものだった。

ここで[服可愛いね]とかサラッと言えるようになりたいものだ。



「あー、これね。

ファッションメガネなんだけど、たまにかけるのよ。

似合ってるかな?」



七瀬の問いに、何と答えるべきか一瞬悩んだ。



[最高に似合ってます]と答えていいものか。

反応がオーバー過ぎる気もする。



迷ったあげく、無難な返事が良いだろうと結論を出した。



「うん、似合ってるよ。

雰囲気変わった感じがするね」



俺が答えると、七瀬は一瞬だがとても嬉しそうに笑った。



「じゃあ、お店に入ろうよ」



有村が場を仕切るように言う。



ごめん、途中から全く視界に入ってませんでした。



有村の私服を見るのも初めてだな。

うん、特に感想はありません。



店に入り、今回は横並びに三人分のゲーム機とモニターがある席を選んだ。



「いきなり三人でやってもいいんだけど、まず俺は二人がやってる所を見させてもらおうかな。

俺も一緒にやると、視界の動かし方とかが確認できないからね」



二人は俺の意見に賛成はしてくれたが、七瀬が俺を茶化してくる。



「なんか言い方が[先生]っぽいわねー。

でも二人の画面を同時に確認なんて、難しそうだけどできるの?」



七瀬の方を見ると、ニヤニヤ笑いながら小悪魔になっていた。



久しぶりの小悪魔表情はやっぱり可愛い。

しかも今回はメガネだし、上半身はあんな感じだし、下半身もアレだし、正直見た目の刺激が強すぎる。



「まぁどんな感じか見たいだけだから。

細かい所までは確認できないよ」



少し目線を外しながら答えると、七瀬は[へー、そうなんだ]と納得していた。



二人にゲームの準備をしてもらいつつ、俺は両方の画面が見やすい位置を探す。

やはり二人に挟まれるような位置で、二人よりも少し後ろから見るのが良さそうだ。



そこへ移動し、椅子を少し高めに調整する。



ふと七瀬の方に視線を向けると、スカートとニーハイの間の、俗に言う[絶対領域]に視線が奪われた。



思わず口元が緩ゆるみ、だらしない表情になってしまったが、どうにか自制する。



危ない、下の方に視線を向けるのは危険だ。



そう思いながら少し視線を上げると、普段より強調されている胸元のラインに視線が奪われた。



またしても口元が緩ゆるみ、だらしない表情になってしまう。

先ほどよりは時間がかかったが、どうにか自制し視線を上げる。



それとほぼ同じタイミングで、七瀬がこちらに振り返り、話しかけてきた。



「あ、そうだ。

始める前にお手洗いに行ってくるわね」



そう言うと、席を離れた。



危ない危ない、視線に気づかれる所だった。

見るときは二人に気づかれなさそうなタイミングにしないと。



七瀬が席を離れたので、有村スパイと二人きりだ。

チャンスなので話しかける。



「七瀬の今日の服装って、俺がこの前送った画像とほぼ一緒じゃん。

有村が七瀬にあの画像送ったの?」



俺が問いかけると、有村スパイはゲーム設定を変更するのに忙しそうにしながら、モニターを見たまま答えた。



「あー、土曜日リサと一緒に服買いに行ったから、その時に見せたよ。

『これ着たら隼人はやとくん喜んでくれるかなー』

とか言ってたよ。

普段着ないような服だから、ここ着く直前で恥ずかしがって大変だったけど」



……強い情報出してくるなら、せめてこっちを見ながら言いなさい。




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