第18話:心強い味方を買収できました

(怒るってことは、動画観ていることを、俺には知られたくなかったったってことだよな?)



理由は俺が想像していた通りなのか、別の理由かはわからない。

しかし、あの時七瀬は意外と動揺していたらしい。



くそ、全然わからなかった。

ポーカーとか強いタイプだな。



七瀬を目に見えて動揺させ、それを俺がニヤニヤ顔で眺めるのはハードルが高そうだ。



だが、有村を味方につけると、俺の方がだいぶ有利になるはず。



《ごめんごめん。気をつけるよ。

それより七瀬がまた俺のこと何か話してたら、教えてくれない?

教えてくれるたびに、何かおごってあげるからさ》



ダメ元で有村にメッセージの返事を送ってみると、返事はすぐに来た。



《まじー!?教える教えるー!

教えた回数カウントしとくから、ちゃんとその分おごってねー》



……七瀬、君の友達はアホの娘のようです。

バッチリ買収されてくれました。



多少の後ろめたさはあるが、契約成立したからにはしょうがない。

いっぱい情報をリークして頂くとしよう。



しかし、ゲームカフェのときの様子だと有村も頭良さげな感じだったはず。

あれはたまたまだったのかな……。



《おごるものはジュースとかお菓子レベルにしてね。

ちなみに動画の件は、七瀬はどんな感じで怒ってたの?》



早速情報を頂いてみようと、有村にメッセージを送った。

すると返事はまたすぐに来た。



《ざっくり言うと、

『動画のファンでよく観てるって、本人にバレたらやっぱり恥ずかしい』

って感じだったよー。

さかきの動画を見始めた頃、声が好きって言ってたし》



良し、素晴らしい情報だ。

なんか補足で新情報も入ってるし。



そうか、恥ずかしかったのか。

手を掴んでたときみたいに顔を赤くして欲しかったな。


あれは可愛かった。



声が好きとか初めて言われた気がする。

声を褒められた経験も無いから、たまたま好きな声ってことなのか。



今まで[話が面白くない]とか、どちらかといえばディスられる方が多かった。

今度からはそれ系の話題が来ても、[でも声は好きなんだろ?]と思えば大丈夫だな。



有村からの情報は有益な物が多くなりそうだ。

良い味方ができてよかった。





次の日の昼休み、自分の席に座っていると、七瀬がこちらをジッと見ていた。



早くこっちに来い。

そう言っているような視線だった。



意を決して七瀬達に合流すると、普通に会話が始まる。

まるで今までそれが当たり前だったかのように。



「ねぇ、一昨日の動画なんだけどさ、なんで拳銃ピストルなのにあんなにすぐ敵を倒せるの?」



七瀬が興味津々といった様子で尋ねてきた。

本当は昨日聞きたかったことなんだろう。

一日待った分、[早く教えて]という感じが強かった。



「あぁ、あれは頭に当ててるからだよ。

あの銃の場合は、胴体や脚に当てるとダメージ量は40ぐらいなのね。


でも頭に当てると90以上だから、二回か三回当てれば倒せるんだよ。

腰撃ちで胴体に数発当てた後に、狙って頭当てて終わりとかもできるし」



わかりやすく言ったつもりだったが、初心者の有村には難しかったのだろう。



「頭とか胴体とかでダメージ違うの?

あと、腰撃ちってなに?」



そんな質問が飛んできた。



チラッと七瀬を見ると、七瀬は今の説明でだいたいわかったようだ。

試しに補足説明をお願いしてみた。



「頭と胴体や脚でダメージ量は違うわよ。これは、どの銃でも一緒ね。

頭は当たり判定の範囲が小さくて狙いにくいけど、その分ダメージ量が大きいの。

腰撃ちって言うのは、照準器スコープでしっかり狙わない状態で撃つことよ。

攻撃に移るのは早いんだけど、普通あんなに当たんないの」



うん、説明は良さそうだ。

有村を見ると、だいたい納得できたようだ。



ただ、最後に一つ追加しておこう。



「頭狙うのも腰撃ちするのも、慣れてなかったら弾が当たらないからね。

最初はちゃんと狙って体のどこかに当てようとした方がいいよ」



俺が言うと、七瀬は大きくうなずいていた。

やろうとして失敗した経験があるんだろうな。



他にも一昨日の動画の内容について色々と話していると、有村が待ちきれない感じで言った。



「ねぇ、今日三人で一緒やろうよ!」

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