第8話:願い事はなんですか?
願い事か、やっぱりそう来たな。
今考えているのか、それとももったいぶっているのか。
どちらかわからないが、目の前にいる可愛い小悪魔はこちらを見つめながらニヤニヤと悪そうな笑顔をしていた。
(罰として私の彼氏になりなさい!)
七瀬はニヤニヤ顔から一変して、ちょっと恥ずかしさが混じった顔で告白してきている。
……俺の妄想の中では。
(ああ、もちろん。よろしくな、リサ!)
今日一番男らしい表情で返事をした。
……もちろん妄想の中で。
「ちょっと、なにニヤニヤしてるの?」
ちょっと心配そうに七瀬が聞いてきた。
(心配そうにしているリサも可愛いよ!)
妄想と現実の境目が無くなりかけていた俺は、そう答えそうになってしまった。
むしろ「し」はもう口から出てた。
危ない危ない、全部言ってたら転校する準備を始めなきゃいけないとこだった。
恐る恐る七瀬の顔を確認する。
うん、まだ転校はしなくて良さそうだ。
「願い事ってどんなことを言うつもりなの?」
(軽いやつでお願いします。軽いやつでお願いします。軽いやつでお願いします……。)
頭ではそう考えながら一応尋ねる。
「ねぇ、私にゲームを教えてよ!」
小悪魔感は無くなり、親しみやすそうな笑顔で七瀬は願い事の内容を告げた。
「もちろん、喜んで……」
さっきまでの小悪魔からのギャップにやられてしまった俺は、反射的に答えてしまっていた。
それから内容を再度理解し、ひと安心した。
(良かったー、だいぶ軽いやつだ)
安堵の溜息を吐きながらチラッと七瀬を見ると、また小悪魔ニヤニヤフェイスのままだ。
何故だ。小悪魔七瀬の出番はもう終わったはず。
[教えて→Yes]で願いは完了している。
願いを叶える系魔人なら「さらばだ!」とか言いながら去っていってるフェーズじゃないのか。
なのになぜ小悪魔が、まだそこにいる?
考えてもわからないのでこっそり帰ろうとしたが、そんな俺をガシッと掴んで小悪魔は言った。
「ちゃんと[プロゲーマーレベル]にしてね!」
「最初と話違くないですか!?」
即答した。
プロってなんだよ、プロって。
達成目標の話なんて1mmもしてなかったはずだ。
「いや、どうせやるならトコトン上手くなった方が楽しいじゃない?
FPSってすごく上手い人とも普通にマッチするから、中途半端に上手くなっても負けちゃうし。
キミなら大丈夫だよ、だってあの[初号機]さんなんだし」
すごく適当な理由で無理難題を押し付けてきた。
前世はかぐや姫だったのかな。
どうしようか考えていると、七瀬が付け加えた。
「嫌ならいいよ?
「不慣れでご迷惑をおかけするかもしれませんが、一生懸命頑張るのでよろしくお願いします!!!」
腰を90°に曲げて新人サラリーマンみたいなことを即答した。
教える側と教えられる側が逆のような気もするが、そんなことは今後の学生生活を考えれば些細なことだ。
顔を上げると七瀬は嬉しそうに笑っていた。
「わかれば、よろしい」
(よし!俺の対応は間違ってなかった!)
先のことを考えると十分間違っているが、今は明日が重要だ。
明日の身の保証は確保したはずだ。
未来のことは未来の自分に任せよう。
額に滲んだ汗を拭いていると、思い出したように七瀬が言った。
「あ、そうだ。
連絡先交換しなきゃだね!」
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