第9話:ゲームのお誘いが早速来ました
「それもそうですね。
QRコード出すんで、読み取ってもらえますか?」
スマホを操作し、七瀬に見せる。
「ありがとー。
じゃあ登録したから、後で何かメッセージ送っておくね」
そう告げると、満足そうに七瀬は帰って行った。
足音が遠ざかり聞こえなくなったのを確認した後、壁に寄りかかりため息をついた。
「あー、やっぱり面倒そうなことになってきちゃったなー……」
疲れが一気に来た感じがした。
だが、手に持ったままのスマホをしまおうとしたとき、別の感情が姿を現した。
(あれ?結果だけ見ると七瀬の連絡先ゲットしたんだよな?)
事実を再認識すると、喜びが押し寄せてくる。
相手はあの七瀬だぞ?
クラスのアイドルの!
「やったぜえぇぇ!!」
周りに誰もいないのをいいことに、小躍りしながら叫んでしまった。
俺が盗み聞きスキルを駆使して集めた情報によると、七瀬は仲良い人にしか連絡先を教えてくれないらしい。
つまり、俺は今日選ばれし者になったのだ!
……その日の帰り道、良い感じのスタンプをいくつか購入した。
◯
夜になっても七瀬からの連絡は来ず、まだかまだかとスマホを握りしめていると、遂に通知が鳴った。
「来た!!」
慌ててメッセージを開こうとしたが、ギリギリで思い止まった。
まだだ。まだ開いてはいけない。
通知が来た瞬間既読になると、待ち構えていたことが七瀬にバレてしまう。
チラッと時計を見て決意した。
12分後だ。
このくらいの時間帯なら、それが遅すぎず早すぎず最も良い時間のはずだ。
そこからひたすら秒針を見つめる。
(まだ30秒だ……)
(やっと1分経った……)
(2分ってこんなに長いの?)
……6分経った時点で待ちきれなくなってメッセージを開いた。
《こんばんは。リサだよー。
ちゃんと登録しといてね》
短い文章の下には[よろしく!]と言ってるスタンプが貼られていた。
あぁ可愛い。
可愛らしさが溢れている。
これがもし他の人から来たメッセージだったら、可愛らしさのかけらも無い文章のはずだ。
しかし、七瀬フィルターを通すとこんな文章でも可愛らしさが溢れ出すらしい。
新発見だ。いつか論文で発表しよう。
ニヤニヤしながらも、文章は冷静に見えるよう返事をした。
《こんばんは。ちゃんと登録しておきました》
下には帰り道に購入したネコのスタンプを貼っておいた。
これでバッチリのはずだ。
満足しているとすぐに返事が返ってきた。
《ねぇ?なんで敬語なの?》
スタンプ以前の問題だった。
そういえば無理難題を言われた辺りからずっと敬語で話していた気がする。
《ごめんごめん、なんか緊張しちゃって》
とりあえず返事を送ると、返事はまたすぐに来た。
《動画でもよく緊張してたもんね》
くそっ、どうせまたあの小悪魔フェイスになってるんだろうな!
悔しい!でもあの状態も可愛かった!
返事に迷っていると追撃が来た。
《そういえば明日の放課後って暇?
ゲームカフェでゲーム教えてよ》
早速来たな。
ゲームカフェかー、まぁ教えるぐらいならいいか。
《特に予定も無いし、いいよ。
あそこのゲームカフェならゲームがダウンロードされてるハードもあるみたいだし。
じゃあ自分のコントローラーだけは持ってきてね。》
自分としては普通に返事したつもりだが、七瀬には伝わらなかったようだ。
《え、あのお店コントローラー置いてないの!?》
意図せぬ回答が来た。
違う、そうじゃない。
ゲーム機本体はあるのに、コントローラーは置いてない店などあってたまるか。
この様子じゃ何使っても変わらなさそうなので、訂正だけ送ろう。
《ごめん、コントローラーはやっぱりお店のやつ使うからいいや》
それから世間話のやり取りを数回行った後、お互い寝ることにした。
(人にゲーム教えたことないんだよなー、心配だなー)
布団の中で明日の心配をしていたら、とんでもないことに気づいた。
(あれ?明日ってデートなのかな?)
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