第27話:二日連続で強い情報来るとは予想していない

妄想しながらジタバタもだえていた恥ずかしさ。

体調不良と嘘をついたことへの後ろめたさ。


その両方が一気に湧き上がり、複雑な感情になっていた。



やっぱり可愛い。

心配してくれて嬉しい。

申し訳なさそうな表情も新鮮だ。

嘘ついてごめん。



いろんな言葉が浮かんできたが、



「全然大丈夫だよ」



その一言しか言えなかった。



……だって、ボロが出るのが怖いから。



考えろ、とにかく考えるんだ。

追求が来るのは昼休みだ。

それまでに完璧なストーリーを組み上げれば、何も問題無い。





運命の昼休み。



ストーリーは全く組み上がりませんでした……。



こうなったら、俺のアドリブ能力を信じるしかない。


心に決めていると、七瀬が心配そうな顔で話しかけてきた。



「朝は[大丈夫]って言ってたけど、本当に大丈夫なの?」



昨日見た天使は、今日は聖母だった。

慈悲じひあふれている。



小悪魔になったり、天使になったり、聖母になったり、忙しい人だ。

全部可愛いです。



「心配してくれてありがとう。

全然大丈夫だよ。

早めにゲーム終わって、ゆっくり寝てたら体調も戻ったよ」



まだ全快ではないけど、どうにか大丈夫です。

そんな雰囲気を出しながら、七瀬の問いに答えた。



でも後半は嘘だ。

あんな状態で寝れるわけがない。


妄想してはもだえるを繰り返した結果、逆に寝不足だ。



寝不足でリアルに疲れているのが良かったのか、七瀬が疑っている様子は無い。

心配そうな顔のままこちらを見つめ、話しだした。



「無理しちゃダメだからね。

動画観れないのは残念だけど、さかきの体調が最優先だからね」



あぁ、そんな心配そうな顔で見つめないでくれ。

甘えたくなるから。



というか若干本音が漏れ出してるじゃん。

有村スパイからの情報が無かったら、気づかないレベルだが。



そういえば、今日は有村が全然話さない。

不思議に思いチラッと見ると、こちらをボーッと見つめていた。



どうしたんだろう。

有村の方こそ体調が悪いんだろうか。



尋ねるのも変だし、聞きはしなかったが、気にはなった。



その後も七瀬から[体調を良くする方法]を色々と伝授された。


[物知りだなー]と感心しつつ、その優しさが嬉しい。




その日の昼休みはゲームの話は少なめで、なんだか不思議な感じだった。





家に帰り、普段ならゲームを始めるぐらいの時間になった。



あまり七瀬を心配させるのも良くないので、普段通りのプレイをして安心させるか。

または、ゲームはやらず、しっかり休んでますよアピールをするか。



どちらで行くかを迷っていた。



そんな時、有村からメッセージが来た。



こちらから情報を貰いに行ってないのに、メッセージが来るとは珍しい。

何事かと思い、確認した。



《昨日って、本当に体調不良だったの?》



まさかの質問が飛んできた。



……え、なに、バレてんの?

どうして?



唐突すぎて焦ってきた。



でも確証は無いはずだ。

とりあえず一旦返事をしよう。



《そうだよー。

嘘つく必要ないじゃん。

なんでそう思ったの?》



これで何か情報が得られるはずだ。

ソワソワしながら返事を待つと、すぐにスマホが鳴った。



《いや、なんとなくだよー。

ゆっくり寝たって割には、寝不足に見えたからさ》



……バレてる。

昼休みにはボーッとしてるように見えたが、俺の様子を確認していたのか。



普段はアホな娘なのに、たまにトリッキーなことをやってくるな。

とりあえず一旦ごまかそう。



《あの場ではそう言ったけど、実際は早めに布団に入っただけで、なかなか寝つけなかったんだよね。

心配させると思って言えなかった》



これで大丈夫なはず。

後は[そうだったんだね]的な返事を待つだけだ。



また有村からの返事はすぐに来た。



《そうだったんだね。

隼人はやとくん大丈夫かな?

看病しに行った方がいいかな?』

ってリサがかなり心配してたから、ナイス判断だったね》



……強い情報が、二日連続で来るとは予想してなかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る