第46話:有名配信者の動画みたいなクオリティ

昼間はいつも通りで全然わかんなかったけど、やっぱり絶対好かれてる。


[私だけで十分]ってことは、[私は隼人はやとくん派です]ってことだよな。


ほんと可愛いこと言ってくるね。



……俺に直接じゃないけど。




直接言ってよー!!



言ってるときにどんな表情なのかも、堪能たんのうしたいじゃん。

普段隠すの上手すぎだよー。



他の人からしたらうらやましい不満なんだろうけど、実際そう思ってしまうからしょうがない。



有村スパイがいなかったら、絶対好意に気づけないレベルだし。




メッセージ後半の[シュンとした表情が可愛すぎる]って、俺が[初号機派もいて欲しいって思った]って言ったときのことだよな、たぶん。



七瀬がそれまでの小悪魔表情からちょっと変わったとは思った。

だけど、[可愛すぎる]って思われているとは想像もつかなかった。



カッコいいって言ったり、可愛いって言ったり、七瀬の中で俺はどんな存在なんだろうか。



俺の中の七瀬は、[可愛い]がメーター振り切れちゃってるけど。





次の日の昼休み、有村に動画のことを尋ねてみた。


「動画を分割するやつはどう?

出来そうな感じ?」



七瀬も興味津々な様子で有村を見つめると、普段と変わらないトーンで話しだした。



「え、分割だけならもうやったよ?

今は動画のサムネイル作ったりとか、観やすくするためにちょっと編集してるところだよ」



すごいことをサラッと答えてきた。

俺があれだけ頑張ってもできなかったのに……。



七瀬も驚いた様子で有村を褒め称えている。



「すごーい、さっすがミユキね。

じゃあ動画ができたらさかきに送って、サイトにアップしてもらえばOKなのかな?」



七瀬の質問に、先ほどまでと変わらないトーンで有村が答えた。



「昨日色々調べてみたんだけど、さかきが私を管理者に加えてくれたら、私が直接サイトにアップしたり動画を管理したりできるみたいなんだよね。

どうする? 私がやってあげようか?」



最近有村の有能具合がヤバくないか?

なんで色々できちゃうの?



疑問には思いつつも、土下座する勢いで管理者をお願いした。



ついでになぜそこまでやってくれるのか有村に尋ねると、考える素ぶりも無く即答してきた。



「えー、なんとなとく楽しそうだと思ったからだよー。

動画配信流行ってるけど、私には配信するネタが無いから、普段ならやれない経験だし。

こんな機会じゃないど、動画編集する機会なんて無いだろうし」



そういえば、このゲームを始めるときもそうだったな。


[なんだか楽しそう]と思った後の、有村の行動力とスピード感はすごい。





その日の夜に、有村からメッセージが来た。



《とりあえず一試合目の動画をあげてみたから、確認してみてねー》



仕事が早すぎる。

驚きながらも確認してみると、更に驚きだった。



4000ダメover


無双



という文字がゲーム画面の上に貼られているサムネイル。

今まで動画と比べると、段違いに観てみたくなるクオリティだった。



動画を観てみると、キャラクター表示の横に[りさまる][みゆきち]と記載されている。

観ている人が、[誰がどのキャラを使っているか]がわかるようにする為だろう。



これが[とりあえず]で有村が出してくるクオリティなのか。



……有村、恐ろしい子。



とりあえず最大限の感謝を伝えないと。

あと、日課の確認をやらなきゃ。



《動画観たよ、めちゃくちゃすごかった!!

有名配信者の動画みたいだったよ。

ありがとう、有村ほんとすごいね。


ちなみに今日は何か言ってましたか?》



俺が尋ねると、いつも通り返事はすぐに返ってくる。



《どういたしまして。


んー、いつもみたいな感じのことは言ってなかったけど、

隼人はやとくんが私を見るときの雰囲気が、今日はなんか違う気がした』

的なこと言ってたよ。

さかきは何か変えたりしたの?》




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る