第47話:緊張するけど送ってみよう

あれ、もしかして七瀬の好意に気づいたことバレてないか?


何か変えたつもりは無いが、変わったとしたらそこだ。


話している途中に、[こんなに可愛い子に好かれてるのかー]としみじみ思ったりはしていたけど。



でも、それも少しの間だけだ。

ずっと思っていたわけではない。



それなのに、なんでこんなにすぐバレちゃうの?



どこを見て気づいたのかはわからないが、相変わらず七瀬の洞察力どうさつりょくはすごいようだ。


とりあえず有村スパイに返事だけは送っておこう。



《特に変えたりしたことは無いよ。

七瀬の勘違いだったんじゃないかな?》



俺の返事に対して、[わかったー]と有村スパイからあっさりした返事が来て、その日のメッセージのやり取りは終わった。



七瀬は今、何をしているんだろう。



俺の雰囲気が違っていることに対して、どう思っているんだろう。


嫌な思いをしていないだろうか。


色々考えてしまったが、単純な解決策を忘れていることに気づいた。



七瀬にメッセージを送ってみよう。



今までは武器縛りのときのやり取りや、ゲーム開始前のやり取りが多かった。

いわゆる事務的な会話だ。



いきなりメッセージを送るのも変な感じはするが、幸い今は有村がサイトにあげてくれた動画がある。

それに関する事務的な会話から、ちょっと話を変えてみよう。



最初は簡単だ。

有村の動画について話せばいいんだから。



そう思っていたが、なぜか指が進まない。



……緊張する。



最近は何回もメッセージのやり取りをして、慣れてるはずなのに。



《有村が分割した動画をサイトにあげてくれたよ。

七瀬はもう観た?

すごいクオリティだったよ》



たったこれだけの、何気ないメッセージだ。


それなのに、内容を何度も何度も確認してしまう。



大丈夫、これで良いはず。


何度も言葉を口に出しながら、気持ちを落ち着かせる。



だいぶ落ち着いた頃、意を決して送信を押した。


よし、後は待つだけだ。




……来ない。



有村の返信ペースに慣れてしまったからだろうか。

待つ時間が恐ろしく長く感じてしまう。


返事の催促さいそくなんてできない、ただ待つだけだ。



前に有村スパイから貰った七瀬の写真を眺め、七瀬のことを考えながらひたすら待った。



数十分後、メッセージが届く。

七瀬からだ。



《まだ観てないから、今から観るよー。

さかきがわざわざメッセージをくれるなんて、珍しいわね。

そんなに動画が嬉しかったの?》



七瀬のことが気になってメッセージしました。


こんなストレートな言い方ができればいいのにな。



さて、何と返事するべきか。

せっかく返事をくれたんだから、できるだけ早く返事をしたい。


《いきなりメッセージ送っちゃってごめんね。

忙しかったでしょ?

でも有村の動画がすごかったから、七瀬にも伝えたくて》



こんな感じでどうだ。

メッセージした理由も自然だし、あわよくば動画以外の話題にも発展できる可能性がある。


迷っている時間は無いので、勢いで送信した。



ドキドキしながら返事を待っていると、次の返事は数分後に来た。



《お風呂入っていただけだから、別に忙しくはないわよ。

メッセージは後で見たときに返事できるんだから、気にしないで。

さかきがそんなに喜んでくれているなら、ミユキも嬉しいんじゃない?》



お風呂だったから最初の返事が遅かったのか。



お風呂か……。



良からぬ妄想を始めようとすると、それを注意するようにスマホが鳴った。



びっくりしてスマホを見ると、有村からのメッセージだ。



どうしたんだ?

一旦終わったと思ったのに。


不思議に思いながら、メッセージを開いた。



《リサがテンパりながら、

隼人はやとくんのこと考えてたら、本人からメッセージ来ちゃった!

何て返事したら良いのかな?』

って騒いでるんだけど、リサに聞いても内容がよくわかんないんだよね。

どんなメッセージ送ったの?》






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