第33話:その感想は本心じゃないでしょ?

確かに画面を指してるときは、七瀬との距離はかなり近くなっていたかもしれない。


匂いに気をとられてたから、気づかなかった。



ドキドキしちゃって集中できないかー……。



可愛いなー。



あんまりしゃべらないから集中してるのかと思ってたけど、ドキドキしてて話せなかったんだろうな。



普段そんなタイプには全然見えないのに。

あぁ、可愛い。



あまり妄想しすぎると戻ってから七瀬を見れなくなりそうだ。

できるだけ早く気持ちを落ち着かせた後、席に戻った。



「じゃあ次は交代して、有村にやってもらおうかな」



そう告げ、有村を俺と七瀬で挟み込むように座る。

今回は七瀬との距離は気にしなくても良さそうだ。



ゲームが始まると、有村のチームはマップの端の方に着地した。



「ここだったら、あの辺りにアイテムボックスがあるよ」



先ほどと同じように、画面を指しながらアドバイスをする。

さっきまでやっていたことを急に止めると、七瀬が不思議に思うかもしれないし。



その後も有村チームの動きに合わせて、敵への警戒の仕方や攻めるタイミング、引くタイミングなどを話していった。



今回は俺の気持ちにも余裕ができていたので、七瀬のときよりも多くの情報を話すことができた。



その甲斐あってか、残り数チームまで生き残ることができていたが、あと少しの所でやられてしまった。



「あー、やられちゃったか。

でも普段よりも良い感じに動けてたと思う。

さかきのアドバイスは参考になるねー」



満足そうに有村が話す。



「じゃあ、あと何回かこんな風にアドバイス出しを交互にやって、その後に三人で一緒にやろうか」



俺の提案に二人も同意してくれた。



……七瀬の番のときは、距離が近くなり過ぎないよう気をつけないと。





回数を重ねるたび、二人ともどんどん動きが良くなっていった。



やはり画面と音声を確認しながら直接アドバイスできるのは、非常に教え甲斐がある。



教えるときの[距離]に気をつけたおかげか、七瀬もプレイ中によく話すようになり、より細かくアドバイスすることができた。



しかし、二人とも毎試合惜しい所まではいっていたが、なかなか一位にはなれない。



エイムが合わず、ギリギリ負ける展開が多かったからだ。

そこは練習時間が影響するので、今はまだ仕方ない。



「だいぶ良い感じに動けるようになってきたね。

あとは弾が当たるように、練習あるのみって感じだね。

三人でやる前に、ちょっと休憩いれようか」



俺が提案すると、二人は[そうだねー]と一息ついていた。

集中している時間が長かったせいか、二人とも少し疲れているようだ。


自分がやっていないときも、真剣に相手のプレイを観ていたからな。



休憩中、七瀬がこちらをジッと見つめてながら尋ねてきた。



さかきって、私服はいつもそんな感じの服着てるの?」



「んー、だいたいこんな感じだよ」



俺が答えると、七瀬は[へー]と納得するだけだった。



しかし、俺は知っている。

七瀬がこんな感じの服装が好きなことを。



だって有村スパイに教えてもらったし。



俺も土曜日に服を買いに行っていたんだよ。

普段あんまり着ないタイプの服だったし。



その場でアピールしたかったが、できる訳もない。



今日の夜にでも、また有村スパイに七瀬の本心の感想を教えてもらうことにしよう。




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