第36話:言ったの?言ってないの?
おかしい、前回の流れでいくと[
しかし、さっきは七瀬は[
注意深く聞いていたから、聞き間違いではないはず。
……このまま次のマッチに進むのはまずい。
気持ちの整理がまだできていないぞ。
本当に幻聴が聴こえてきたのか。
「あれ、
次のマッチはやらないの?」
考えこんでいると、七瀬から追撃が来た。
やっぱり
反応しない訳にはいかないので、適当に答えよう。
「あー、ごめん。
ちょっと考えごとしちゃってて。
二連勝で調子良いから、このままドンドンやっていっちゃおう」
七瀬も有村も[早くやろー]と、準備万端のようだ。
俺はまだ気持ちがスッキリしていないが、やるしかない。
◯
そこから何試合か連続してやった。
二人がどんどん上手くなっているおかげもあり、ほとんどが1位か上位に入ることができている。
この結果だけ見ると、すごく良い。
今回ここに集まった成果が出ている。
でも俺はモヤモヤしたままだ。
七瀬に聞きたくてたまらないが、聞ける雰囲気でもない。
考えすぎて頭がいっぱいになっていたせいで、マッチの途中で七瀬を眺めることもできなかった。
結局その日はモヤモヤした気分のまま、解散になった。
「今日で私はすごく上達した気がするよ!
でもまだ
帰り際に七瀬が嬉しそうに言ってきた。
その笑顔を見ると、モヤモヤが少し無くなった気がした。
◯
……気のせいだった。
家に帰ると、またモヤモヤした気分になったので、すぐに
《今日三人で初めてやったマッチのときに、七瀬が俺のこと[
遠回しに聞く余裕など無い。
早く返事が来ないかソワソワしていると、今回もすぐに来た。
さすが優秀な
ドキドキしながらメッセージを開く。
《んー、言ってた気もするけど、覚えていないなー。
リサは
……微妙な返事が来ちゃった。
[言ってた気がする]っていうのは、もう[言った]にカウントしてもいいんだろうか?
それだったら幻聴説は無くなるので、通院の危機も去るはずだ。
でも[覚えていない]とも言ってるからなー。
どうするか。
うん、[言った]ってことにしちゃおう。
そっちの方が幸せになれそうだ。
[言った]ことにした瞬間、モヤモヤがサーっと晴れていった気がした。
よし、後は今日の情報を頂くことにしよう。
《有村に教えてもらった感じの服を今日着て行ったんだけど、七瀬は何か言ってた?》
あ、失敗した。
さっきの
大丈夫かなと心配していると、返事が来た。
《あー、確かねー、
『
一緒に写真撮って残しておけばよかったー』
とか言ってたよ。
良かった、全然大丈夫だった。
洋服は買いに行って正解だったな。
オシャレとか初めて言われた気がする。
まぁ
あー、一緒に写真撮ってみたいなー。
でもどんな顔したらいいんだろう。
変な顔になったらちゃんと消してくれるんだろうか。
色々考えだしたら長くなりそうなので、まずは返事をしないと。
七瀬の今日の服装か。
……最高だったな。
《すごく似合ってて、可愛かったよ。
せっかくだから、三人で写真撮っておけばよかったね》
本心はさすがに言えないから、返事はこんな感じでいいだろう。
写真の件は、こう言っておけば余裕がある感じがするし。
七瀬の服装を思い出しながらニヤニヤしてると、
《私とリサで今日撮った写真ならあるけど、欲しい?》
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