ホンモノとニセモノ

本物の優しさ、本物の勇気、本物の強さ……。

本物であることって、すごく難しい。

少なくとも、わたしにとっては。


***


例えば、自分が極限に辛い時や追い詰められた時、絶望した時、そんな時に優しく勇気を持って強い心でいられるか、そう自問した時、答えは『無理』だ。



死んだ魚の目で、何も聞こうとせず何も見ようともせず、神経剥き出しの過敏状態で不穏な顔をして、グッタリ身動きすら出来ないでいる自分が容易く想像できる。



わたし程度の人間の極小器だと、自分が最低限でも保てる状態の時でないと、他人に優しくなんてできないし、強くもなれないし、ましてや勇気なんて持てない。


すごく情けないけど、そんな弱っちい人間がわたしだ。



だから、わたしは本物じゃないし、本物にはなれない。

だけど、それでも少なくとも本物になりたい偽物のそのニセモノくらいにはなれるかもしれないと思ったりする。


自分にできるギリギリまででも、そうあろうとする、そうなりたいと思う、それならできるのじゃあるまいか、と。



そんなの、まったくの偽善でしかないかもしれないけど、よく出来た偽物にすらなれないとしても、ホンモノをめざすニセモノくらいにはなりたいと思うのだ。


みっともない姿を最期には晒して” 言わんこっちゃない、やっぱりね ”と身の程知らずをわらわれても。



自己満足かもしれない。

自己満足、だろうなぁ。


***


本物は遥か上の方でキラキラと力強く存在している。

今日も、それを眩しく見上げる。



わたしは、ね、最初から最期まで、真っ白に真っ直ぐには生きられないし、生きられなかったよ。

でもだからこそ、せめて自分のギリギリまででも、ホンモノをめざすニセモノでいたいんだよ。


いつも少し猫背で、注意されても、なかなかなおらなくて、でもさ、頑張って背筋を伸ばしたいって思うんだ。

騙し騙しでもね。


なんで?って?

理由はわからないけど、そうしたいって、ただ思うんだ。


それだけ。


それだけなんだよ。

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