白と黒だけの世界

 世界は変化してきた。

 いや、それをいえば、ずっと変わり続けているのだろうけど。


 それは良い悪いというよりも、世情や価値観の変化に伴った必然なのかもしれない。


 それでも何だか、情緒や風情みたいなものまで失われてしまったような気がするのは、わたしが歳をとったせいなのだろうか。


 待つこと。

 我慢すること。

 察すること。

 思いやること。


 勿論、これらは良いことばかりでは無い。

 けれど、ただ愚かなだけのことでもあるまいに。

 全てが簡略化されて、サッパリ切り捨ててしまった世界、まったく余白のない世界は何だか、いたたまれない。


 世界は昔よりも、色々認められるようになって、解放されて、自由になったはずなのに、どうして、こんなに殺伐としているのだろう。


 群がる軍隊アリのように、目の前のものを食い散らかしては、次の獲物を探して前進していくような世論。


 考え込みすぎるのも自分を追い詰めて良くないけど、でも深く考えることを止めてしまうのは違う気がする。


 無駄だと思っていたことの大切さに後から気づくこともある。

 無意味だと思っていたことが実は意味をもってくることもある。



 だからせめて、我が心のなかだけは、沢山の色を探し続けて、見続けていたいと思うのだ。

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