孤独という感情

 寄る辺ないような、頼りないような心許こころもとなさ。

 直視すると自分が何処にいるのかわからなくなってしまいそうになるから、いつも焦点を合わせないようにしている、そんな不安定な感覚。


 幼い頃から孤独感とも言える寂しさに付きまとわれていた気がする。

 決して愛情をかけてもらわなかったわけではなく、慈しまれて育てられたという自覚はちゃんとあるのに。

 それでも、この得体の知れない不安感はいつも付きまとって消えなかった。


 わたしは、いつも自分に自信が持てなくて確認ばかりしていた。

 これで間違いなく正しいというお墨付きを貰わないと、どうしても安心できないのだった。


 そして、間違えてはいけない、という強烈な刷り込み。

 間違えてもいいから、やってみて、間違えていたらやり直せばいい、ではなくて。

 間違えることのないように、この枠の中から絶対に、はみ出さないようにという縛りの呪文。


 そこにあったのは確かに愛情で、転ばぬ先の杖の親心で、ただ単にその枠から出ることが出来なかったのは、誰のせいでもなく、わたしの気弱さや甘えに過ぎないことはわかっているけれど。


 ただいっそ、変な良い子ちゃんの仮面など脱ぎ捨てて、そこから飛び出す気概があったならもう少し、違った生き方もあったのだろうかと、考えてしまうことはある。


 わたしはいつも自分に安心できない。

 わたしという存在は何故か得体が知れずに何処か遠い。

 しっかり自分を見据えたりなんぞしたら、耐えられなくなって自己崩壊しそうだから見ないふりをしている。


 それは卑怯なことだろうけど、そうでもしないと脆弱な精神は耐えられそうにない。

 いつの間にか、それが生きる術になっていた。



 どんなことがあろうとも、どんなわたしであっても、何者にも代えがたく、全てと引き換えにしても、唯一無二と求められていると実感してみたい。ワガママの限りを尽くして振り回してみたい。それでも大丈夫だと言って欲しい。繰り返し何度でも。全てを預けて何も考えず信じて眠りたい。

 そんな夢想を繰り返す。

 ああ、なんて身勝手な絵空事だろう。



 わたしは何処までも一緒に生きてくれるひとが欲しいのか。

 それとも、何処まででも共に墜ちてくれるひとを求めているのか。


 壊れるほどの激しさの中に身を置いてみたいという衝動に突き動かされながら、今日もまた孤独という感情の海で溺れている。


 口をパクパクとして、末期の魚のように腹を見せながら。


 息もできないままに光る水面を見ている。

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