文字道楽
最近はスマホやパソコンで文章を” 書く ”(という表現も何だか違う気がするけれど)ことが多くなった。
手軽だし便利だし、何よりスマホだと、いつも持ち歩いているから、思いついた時、すぐに記録しておけるという利点があって助かる。
ただ、画面の中の文字というのは、どことなく頼りないような気もしてしまう。
簡単に書けるけれど一瞬で消せてしまう。
そのくせ亡霊のように影だけが残っていて、勝手に一人歩きしたりする。
これはわたしが、アナログ人間のせいもあるのだろうけれど。
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わたしは白い紙に筆記具で文字を書くのが好きだ。
書道をしていたから筆にも思い入れがあるが、ここ十年ばかりは諸々の慌ただしさもあり、書道から遠ざかって筆を持つことも、めっきり無くなってしまっていた。
正座をして硯で無心に墨をすり、半紙に筆で書く。
あの、すっと背筋が伸びる心地良さ。
また久しぶりに墨の香りに包まれたくなる。
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硝子ペン(※1)も愛用の筆記具のひとつだ。硝子ペンを知ったのは『長野まゆみ』の小説でだった。
硝子でできたペン、その繊細な造形はわたしを魅了した。
そっと慎重に硝子のペン先にインクを吸い上げさせる。心地よい緊張感。
インクを洋墨と表記するのも、なんと美しいのだろうと思った。
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筆記具を選んで紙を選んでインクを選ぶ。
手間をかけて用意をしてから文字を書く。
書き終わった後は、道具を手入れして、きちんと仕舞う。
これも、またひと手間。
でも、この一つ一つ手間をかけることが楽しい。
丁寧に記した文字は言葉になり、豊かな表情をもってくる。
そして、それは自分だけのものになる。
手間をかけることは愛おしむことだと思う。
丁寧に向き合うことで、そこに楽しみが生まれる。
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文字を書く楽しみは深い。
いつか、全て手書きで自作の作品集を作るというのも夢のひとつだ。
それは世界でたった一冊きり、わたしの為だけの本。
できれば、小さな挿絵なども描いて添えられたら、どんなにか楽しかろう。
このページは小筆を使って墨で書いて、こちらは硝子ペンでインクで、こちらは色鉛筆で彩色して……などと自由に遊ぶのもいい。
丁寧に一文字ずつ書いていって、1ページずつ埋まっていくのを夢想するとワクワクしてくる。
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ディスプレイに文字を記すことの方が多くなってきつつある昨今。
もしかしたら、手書きで文字を書くということは、どんどん特別な贅沢なことになっていってしまうのかもしれない。
そう思うと少し寂しいような気がしてくる。
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(※1)【硝子ペンの使い方】
ペン先をインクに浸すだけで使え、ハガキ一枚分ほどなら連続して書ける。ただし、立てて書くとインクが出にくい特性がある。ある程度寝かせて書くと良い。使い終わった後は、水洗いして布やティッシュペーパーで水気を拭き取る。
ガラス製であるため、ペン先が透明になってくるとインク切れが分かる。インクを補充する時、インク瓶の縁にペン先を当てると傷みが生じるので注意が必要である。
またインク瓶の底にペン先を当てると簡単に壊れてしまう。
◆◆◆◆◆◆Wikipediaより引用◆◆◆
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