人間というもの

 作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんが亡くなられた。

 波乱万丈の人生。稀有な存在であった。

 享年99歳。


    ***


 訃報が伝えられてからのネットのコメント欄を見て唖然とした。

 不倫のこと、子どもを置いて家を出たこと、何十年も前の出来事を、そのセンセーショナルな言葉の記号だけで事情も心情も知らない人達が悪し様に言い募る。

 正論や正義面にくるまれたその言葉達は無数の毒針のようで、とても醜かった。


 人に対する好き嫌いの感情は当然あってしかるべきだし、言動に関しての批判も意見としてあるだろう。

 故人になられたのだから賛美せよ、などと言うつもりもない。

 ただ、最低限の事として、亡くなった方への敬意は表するべきではないのか。


    ◇◆◇


「ニンゲン」【詩集】満月音函 より https://kakuyomu.jp/works/16816452220777355482/episodes/16816700428792777984


    ◇◆◇


 そして


 昨今の世の中を見ていると、日本人はこんなにも、狭量で殺伐とした感情を持つようになってしまったのか……と思う。


 人間というものは、そんなに清廉潔白だけで生きていけるものなのか。

 あなたは?わたしは?



 瀬戸内さんは、とても人間臭く生きてこられた。

 そして、出家して僧侶になられてからも、枯れてしまうのではなく、も欲も持っておられたように思う。

 時に強烈な個性に振り回されるけれど、傷を持ち罪を知るからこその、情のある深い言葉は心に沁みる。


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 あなたは苦しんだ分だけ、愛の深い人に育っているのですよ。


 - 瀬戸内寂聴 -

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 人間は許し許されながら生きているのではあるまいか。


 晩年、置いてきた娘さんとも和解して交流があったという。


 ただ今は、ご冥福をお祈りしたい。

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