「衝動」の意味

昔「衝動」という詩を書いた(詩集「つきのあかり」(絶版)に収録)


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「衝動」


壊して

壊して

壊して


粉々に


でも


どんなに小さく砕けても

無くならないんだ


わたし


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詩に限らず表現された”作品”は作者の手を離れた瞬間から、その解釈はそれぞれの受け手に委ねられるものだろう。



今回はこの詩についての、ちょっとしたこぼれ話?的なものを書きたいと思う。



***


此処での「わたし」は”何もかもを壊したい衝動”に駆られている。


壊して壊して壊して粉々にする(それは具体的なものというよりも抽象的な”わたし”というものを)


わたしは自ら壊して


でも


どんなに小さく砕けても無くならない”わたし”


を知って打ちのめされている。


此処での作者(わたし)にとって、どんなに小さく砕けても無くならない”わたし”は落胆であり、もっといえば絶望なのだ。





けれど、この詩を読んで下さった読者から、その頃、批評で


『これは、どれだけ壊されても、どれだけ小さな最後の一粒になっても無くなりはしない、という決意を描いた希望の詩である』


そんなふうに褒めていただいた。


有難いことと思いながらも、とても複雑な気持ちになったのを覚えている。作者の思いと真反対の解釈だったから。


でも考えてみると、確かにそうとも読めるのだ。


わたしの真意が伝わらなかったのは、わたしの語彙力、表現力の乏しさからとはいえ、それでも、それが寧ろ解釈の多様化になっている。詩というのはなんて面白いのだろうと思った。


***


この詩を書いた頃から、もう随分と月日が過ぎた。


わたしは相変わらずの拙い書き手で、それでも書くことが好きで細々と続けている。


言葉というものの不思議。表現することの難しさと楽しさ。その無限の可能性に魅せられ続けながら……。

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