村人A(慎重というより臆病)の憂鬱
わたしは石橋を叩いてから渡る。
叩いて確かめたのに結局、渡らなかったりすることすらある。
*
結局、ビビりというか、気が小さいというか、要するに臆病者なのだ。
***
冒険はしない。
危ないところには近づかない。
多分、
というか、それが絶対希望だ。
刺激の無い人生、バンザイ!
*
ホラーものも好きでみたりするけど、それはあくまで、自分とは無関係だからだ。
無関係で危険がないからこそ、娯楽で楽しめる。その程度には卑小である。
いつも不思議なのは『なんでこの人、止められてる所に、わざわざ行ったり、見るなって言われるのを見たりしちゃうんだろう』ってこと。
わたしみたいなノミの心臓でも好奇心はあるが(むしろ好奇心だけなら、かなりある)それは危険が100%無いこと、に限られる。
そう、冒険者には不向きな人間だ。
*
──そのはずだった。
*
それで何の不平不満もありはしないのに、結構、巻き込まれ型の村人A
知らぬ間に村の外まで、引っ張られてきていたりして、逃げ足遅くスライムと出会う。
スライムごときではなくて、ええ?!スライム?!
何しろ丸腰なのだ。度胸もない。
HP1の身には、ポコッと一撃が致命傷になる。
身の程を知っていたから、村の隅っこで、ひっそり生きていたのに、「何でだー!」と叫びながらポコッとやられる。
それでも村人Aは哀しくも、それでは終わらない。何しろ目立たない分、使い回しが利くのだ。
村人Aは村へと戻される。
*
さて、今度こそは絶対に村の外へなんか行かない! 頼まれたって出るもんか! 村人Aは改めて決意する。
お人好し過ぎたんだ。
キッパリと断ることも大事だ。
なのに、そのしぶとさを買われてか、カミサマから言われて泣く泣く旅に出る。
そう、確かに慎重というより臆病の村人Aはそれ故に、しぶとかった。
やられて、もうダメだとなるのにHP0.00001とかで意外と生き残る。
これは喜ぶべきか悲しむべきか。
どちらにしても「なんてこった!!!」
***
変化も刺激も欲しくなんかない。
ただ、とにかく村の隅っこで何事もなく穏やかに暮らしたい。
なのにどうして、こんな旅の空にいるんだ?
望まぬ冒険の旅は、まだ終わりそうにない。
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