それは自分がやりたかったからしたことだろう?

 あれも、これも、こんなにしてやったのに……。

 人間は無意識に見返りを求めてしまう。

 わたしも同じことで……。

 だけど、ある時ふと考えた。


『それは自分がやりたかったからしたことだろう?』


 そうなのだった。

 それは相手に対して、してあげたくてしたことであって、やらされたことではなかったはずだ。

 なのに、相手から返ってこなかったら不平不満にすりかえて。

 いつのまにか、元のカタチ思いが歪んでしまっていた。


 とはいえ、人間だもの。

 頭でわかっていても感情がついてこないことだってある。

 それでも、少なくとも、そこで怒りの感情を罵詈雑言で吐き散らすようなことはしたくないと思うのだ。


 それは人としての矜持きょうじ


 自分が相手に対して、手助けしたい、何かしてあげたい、と思ってしたことなら、それを相手に渡した時点で、相手がどうするかは自由。


 そう考えた方が、ずっとスッキリするし、気持ちもラクになる。


 せっかくの好意なら、手から離した時点で笑顔で見送った方がずっといい。


 こんなにしてやったのに。

 裏切られた。許せない。

 そんな考えに執着して離れられなくなったら、自分に問うてみる。


『それは自分がやりたかったからしたことだろう?』


 自らの呪縛から解き放たれて、少し心が軽くなる気がする。

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