花粉症と冬の終わり

 何だかんだと三月になった。

 花粉症と共に、わたしは冬の終わりを思い知り、春の訪れに気づく。


 ***


 元々、冬は好きな季節なのに、今回はかなり厳しく散々だった。

 暖冬でも変わらぬ公共交通機関や室内施設の暖房にぐったりする(でも、これはわたしの個人的体質によるものだから文句は言えない)のはいつもの事ではあるけど。


 加えて年末年始の酷い風邪、そして今回の新型肺炎と何ともやり切れないことが続いている。

 そう、まだ現在進行形。

 そしてやってきた花粉症。

 アレルギー薬を服用し、目薬をさし、眼鏡をかけて、それからマスク。

 これで毎年乗り切るのだけど、今回はマスクに新型肺炎という別の意味合いが加わった。


 元々、インフルエンザなどでも人にうつさないようにする為にとか、わたしたち花粉症の人間にとっては少しでも花粉を防ぐためにだったのだけど。


 この新型肺炎に今、国中が揺れている。

 マスクは買い占めや転売により、一気に姿を消し、除菌アルコールがそれに続いた。

 フリマなどで極端な高値で転売する人。

 高値に批判が集まると、商品価格を下げて、送料をその分、高額に設定するなどと怒りを通り越して何とも悲しい。


 そして、デマによるペーパー類の品切れ騒動。在庫はあっても店頭にないと、人間心理としては焦って、買っておかなくては、となる。


 こんな時だから、陥ってしまいがちな状態の悪循環になっている。


 慌てずに落ち着いて考えてみる。

 と、簡単に言っても、色々な非常時に、どこまでそれが出来るものか、と自問自答するとパニックにならない自信はない。


 人はそんなに強いものでは無い。

 だから、心の隙間だってできる。

 そこに、つけいってくる人達がいる。


 花粉症は辛いけど、工夫して何とかやり過ごそうと思う。幸い、薬はまだあるから。


 それでも、病院にすらかかることに躊躇ちゅうちょしないといけなくなるのは、持病のある人間にとっては死活問題になる。

 それに医療関係者の方々の大変さは、いかばかりか。

 日頃、お世話になっている身としては堪らない気持ちになる。

 皆、一人の人間で、その一人一人が何とかせねばと踏ん張って闘っている。


 ***


 終わろうとしているこの冬は、冬にとっても不本意な季節になったと思うのだ。


 元々、厳しいけど、キリリとした澄んだ清々しさも併せ持つ季節。

 耐える力と共に温もりの有り難さも教えてくれる。

 だから、わたしは冬を愛している。


 冬が終わり、春がそこまで来ている。

 きっと冬は春に託しているだろう。

 何とか良い方向へと託しながら去っていこうとしている、そんな気がする。


 冬よ、また季節が巡ってあなたと会ったら、あなたの清冽な空気を胸いっぱいに吸いたい。


 そんな冬にまた会いたいとわたしは今、切望している。

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