もの忘れ
元々、記憶力は良くない。
学生時代も暗記問題は片方の耳から入っても、もう片方の耳へと抜けていくという体たらく。頭はただの通路と化していた。
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それから人の顔もあまり覚えられなくて、これは同じ場所で同じ人と会えば、少しずつ認識していくわけだが、これも名前と顔が一致するまでになるには、かなりの努力を有する。
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どうも、わたしは全般的に、かなりボンヤリした人間なんだと思う。
なんとなく直視してない(直視するのが怖い?)というか、世界をボンヤリみているというか、目を見て話すというのも苦手だし。
これは視力が良くないせいもあるのかなとは思うけれど。
くっきりハッキリ認識するのではなくて、雰囲気的なもので認識してしまう。
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昔、歌詞を覚えられたなら、台詞を覚えられたなら、歌手とか女優を志してみたかった、などと戯言を言ったこともあったっけ。
勿論、それだけでなれるわけもないのだけど、まず、既に第一段階の記憶力問題でアウトだというのは、わたしらしくも情けない。
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そんなわたしだが、本のことに関してだけは忘れなかったし、漢字の読み書きも、それなりに得意な方だった……のだけど。
これが、怪しくなってきた。
あれれ、この本は前に読んだ気がするけど、と読み始めて気がつく。
でもラストが思い出せない。
読んだよね。の気持ちは、読み進めれば読み進めるごとに確実なものへと変わっていく。
なのに、ラスト……やっぱり思い出せない。
いや、良いんだけれども。
忘れていた分、二度楽しめる訳だし。
多少複雑ではあるけれど、これは、もの忘れの良い?ところ?かな。
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とはいえ、日常生活では困ることの方が多い。
例えば、買い物メモ。
忘れないようにと、いるものを書く。
忘れないようにと、目立つテーブルの上に置く又は買い物バックの上に置く。
なのに、出かける時にテーブルの上を通り過ぎる視線、手に持った買い物バックから、こぼれ落ちている買い物メモ。
まったく、何やってんだ、わたし!
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と、いうことで、声出し確認をするようになった。
『○○持った!』『✕✕大丈夫!』
『忘れ物ないね!よし!』
勿論、一人の時。
これやるの、なんとなく照れくさかったけど、今は慣れた。忘れ物も減った……はず。
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しかし、もの忘れは、相変わらず。
言葉が出てこなくて『アレ』『ソレ』『ホラ』
「あのほら、ソレよ、何やったっけ? ほら、アレ!」
ああ!このもどかしさよ。
*
今がこれなら、もっと歳をとったら、よけいに記憶力は無くなりそうだ。
もう、これは仕方ないと諦めるけれど、願わくば、忘れたくない想い出でなく、忘れてしまいたい黒歴史とかをキッチリ忘れさせて貰えると有難い。
そんな風に、密かに願っているのだけれど。
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