第34話 総帝が来た
オーク討伐も3日めに突入した。俺のマップスキルによる敵の位置を確認しながらの討伐なので、討ち漏らしは無いはずだが、キング種はまだ発見に至ってない。
「この近辺からは撤退したのかもしれないな、それならばバロンへの通商路を繋げるための開発を兼ねて、森を切り開きながら進むか」
俺達は、マップを確認しバロンへと流れる川沿いの森を切り開きながら西へ向けて歩みを取った。
道幅は3頭立ての馬車が余裕を持ってすれ違えるような道幅を確保している。この世界での基準で幅車での移動は時速10k程度だ。休憩などを考えると中間地点に一箇所宿場町も作らなければならないだろう。
海産物や、塩などの物資を今までよりもかなり早く輸送することが出来る様になり、ファルムの街とコウキの土地が受ける恩恵はかなり多くなることが予想出来る。
この日は5kmに渡り開発をすすめることが出来た。このペースだと10日で到達できるのか?
「ハンクちょっといいか?」
「コウキ様どうなさいましたか?」
「バロンの街は人族の俺に対して友好液な態度をとってくると思うか?」
「バロンは基本的な種族として魚人族と猫人族が多く、猫人族は比較的友好的に接すると思いますが、魚人族は、以前女性が人魚として多くの奴隷商に荒らされ人族に対して敵対意識を持つものが多いと聞いております」
おぉ魚人族の女性って人魚なんだ、会ってみたいなぁ。
「でもさ?人魚って歩けるの?水中だけでしか生活できないとかじゃ無いのかい」
「成人する時に人化の能力が芽生えますので、丘に上る時は専用の大衆浴場のような建物から、着衣をした後に出て来るように、現在では取り決められております」
なんか大衆浴場みたいな建物ってのは予想外だったが、それなら問題はないのかな?
「まぁ今日はこの辺りまでにして戻ろうか」
転移を発動して6人で屋敷に戻った。するとハッサンさんから伝言が届いており、ゼスト侯爵がファルムに到着されたことと、オークションが終了して売上が渡せる事、ゼスタールの街へ送って欲しいことが記されていた。
早速ハッサンさんの店に出向くことにして、移動すると応接室に通されたそこには、侯爵様とその連れであろう人物が5人程居た。ン?この獣人の女の子は・・・ヤバイ俺を召喚したうちの1人だ間違いない。
どうする・・・知らないふりでやり過ごせるか?逃げても余計に怪しいだけだな。まぁいっか成るようになれだ。
「お久しぶりです侯爵様、お体の具合はいかがですか?」
と無難に侯爵様への挨拶をした。
「コウキのお陰で
まぁゼゼコの様な奴でも、侯爵様にとっては息子であることは変わりないし、それなりに心の葛藤は合ったんだろうな。
「ご一緒にいらっしゃる方々は皆さん、アーガイルさんのお連れ様ですか?」
「おぉまだ紹介しておらんかったな、皆さん自己紹介を頼むぞ」
「始めまして、私は王都ギルドのマスターをしているタウロ子爵と言います。オメガランクを正式のクラスと認定する事になった事を伝えに来ました、ジェイクからも誘われたと思いますが、コウキさんさえ良ければ是非王都に所属を移してもらえないかと思って、今日の所は顔繋ぎでです」
「王都のギルドマスターがわざわざこんな所まで来て大丈夫なんですか?」
「私は転移が使えますから、ただしクールタイムが12時間で、距離は王都までなら2度の転移が必要ですがね、コウキも使えるのでしょう?ここまでで聞いた話の中では色々と時間の説明がつかないことがありますので」
「あー、はい使えます。皆同じ性能ではないんですね?知りませんでした」
「私が知りうる限り転移が使える人物は世界中でも5人ほどしか存在しませんよ、距離もクールタイムもそれぞれバラバラですが、よければコウキさんの転移の性能を教えて頂けますか?」
「えーと、今まで行った場所ならどこでも行けますね、クールタイムも別に存在してないです。それと、王都への拠点変更は今のところ考えておりません」
「それは残念です。でもその転移の性能を伺えば、所属の問題は無いようなものだから、別に構いません」
その後で、アーガイルさんの護衛二人と、帝二人が自己紹介をしてきた。
「ねぇオメガ、あんたさ私達が召喚しちゃった使い捨て君でしょ?」
「使い捨て君と言う失礼な呼び名は心外ですが、この世界に現れて気がつけば剣を握らされて、ハンマーで殴られて巨大なドラゴンに突撃させられた存在がそれだと言うなら、その通りです」
「槌帝少しは言葉を選びなさい。明らかにコウキさんは何も悪くないじゃないか、むしろ何故呼び出していきなり突撃させたのかその方が私は疑問だ。
コウキさんにはお詫びとは言ってはあれですが、おそらく今も持たれているであろう聖剣ドラゴンイーターはそのままお使い下さい。一応国宝ですから差し上げるというわけには行きませんが、ご自由に使われて構いません」
「だってカプラがそれで大丈夫だって言ったんだもん。その方がすぐ元の世界に戻れるから、使い捨てくんも一瞬夢を見たで済むって言ったんだもん」
「んー何かよく解りませんが、あの時の女の子4人はみな王都ギルドの帝なのですか?」
「皆じゃないよ、カプラは魔王軍の子だから」
「あれ?この世界で魔王って人類の敵とかじゃないんですか?」
「違うよー魔国の国王が魔王って言うだけで人族と種族が違うだけだよー」
「まぁ俺もこの世界はすっかり気に入ってしまったんで、今更呼び出されたことを責めたりもしませんが、都合よく利用された事に何も感じないわけでもありません。出来れば今後関わらないで貰えればそれでいいです」
そこまで言った時に雷帝と自己紹介をした人が少し不機嫌そうに言ってきた。
「コウキよ、お前もギルドに所属する以上は帝と呼ばれる人間には敬意を払うべきでは無いのか?それとも帝程度は相手に成らないほどの実力を持っているとでも言うのか?」
わーこのおっさん、偉そうだな面倒くさそう。
「いきなり呼び出されて、別世界で生きることを余儀なくされたことに対して、嫌味の一つでも言ってみたかっただけです、気に触ったならスイマセン。それともう一つ雑魚は黙ってろ」
あ、言っちゃった。
結構溜まってたみたいだ。
まぁいいか、帝の実力試してみたいし。
俺の言葉を受けて、雷帝はこめかみに青筋を浮かべた。
何故だ?ギルドマスターとアーガイルさんは楽しそうな表情をしたぞ。この展開を狙ってたのか?
「マスターファルムのギルドの訓練施設を今から使わせて頂きたい。コウキはなにか勘違いをしているようだから、世の道理を優しく説いて差し上げたほうが良いかと思う」
「オメガ、どうかな一戦やれば雷帝トールも納得すると思うが受けては貰えないか?俺もコウキの戦う姿を一度みたいし、頼む」
「解りました。俺も自分の実力がどの程度なのかよく解らないので腕試しのつもりでやってみましょう」
ハッサンさんは少し顔が青褪めていたが、アーガイルさんが「大丈夫じゃよ」って言ってたので少し安心したようだ。
一行は冒険者ギルドへと向かうと王都のマスターがイザベラを呼んだ。
「あらタウロマスターじゃ御座いませんか、それに槌帝と雷帝、ゼスト侯爵までご一緒に何事で御座いましょうか?」
「イザベラちょっと見ぬ間に綺麗になりおったの、わしは侯爵は引退した。この街で静養を兼ねて世話になることにしたぞ、これから宜しく頼むな」
「そうなのですね、こちらこそ宜しくお願い致しますわ、タウロマスターはどのようなご用件でしょうか?」
「ちょっと訓練施設を借りに来た。オメガの実力を直接見たくてな。相手は雷帝がする」
「あらあらコウキあんたなにか失礼な挑発でもしたんじゃ無いでしょうね?訓練施設の件はすぐ空けさせます。観戦は可能でしょうか?」
「一般冒険者は遠慮して欲しいな、イザベラは構わぬ」
「俺は自分の言い分を言っただけだよ、別に挑発はしてないつもりだけどな」
「フーンまぁそう言うことにしておくわ、訓練施設の中なら死ぬ事は無いし、私もコウキの実力がどれほどなのかははっきり知らないから、見せてもらうわね」
「王都マスターとして頼みがあるがコウキ、実力は抑えずにやって欲しいな、今コウキが使っているのは隠蔽のスキルなのか?俺に見えているステータスだとトールの本気の攻撃を受けたら、訓練所の中でも再生が間に合わずに死にそうだが?」
「さぁ?どうでしょうね??死んだらそれだけの男だったって事で構いませんよ。元々向こうの世界では死んでた筈ですしね」
そして俺は雷帝との対戦を行う事になった。でも俺には解る一番強いのは雷帝じゃない、王都マスターだ。
もしかして、こいつが総帝なのか?鑑定をかければ100%バレるだろうしまぁいいか今は雷帝に集中するか。
二人で訓練場の中に入る。
そして向かい合い、試合を始める。
俺はまず、雷帝の攻撃を受けてみる事にした。小槌のようなハンマーを2刀流で扱うようだ。
雷帝というからには電気の力を操るんだろうな?でもこのおっさんの見た目は筋肉だるまで、とてもじゃないが魔導師には見えない。どっちかと言うとパワーファイターのプロレスラーみたいな見た目だ。
見た目に反して素早い動きから、片手を上にかざすとハンマーの上部に電気が集まり一直線に雷が襲ってきた。これは音もすげぇ、左右のハンマーを上にかざすたびに、どんどん雷を打ち込んでくる、でも出る場所さえわかれば、対処は可能だ。俺は次々と避け続けた。だがこの速度で遠距離攻撃だと、ツバサを使うことは難しいな。
しょうがないから、アイテムボックスから剣を取り出す。正眼に構え切っ先を喉に向けると同時に、精霊魔法を使い地面を隆起させてバランスを崩させると同時に、飛び込んで横薙ぎに切り払った。
この攻撃はハンマーの柄を使いブロックされたが、そのまま剣を引かずにパワーで押し込む。
それと同時に、無詠唱で氷属性魔法を放つ。これも俺の世界での常識でイメージする。液体窒素を頭からぶっかけて一気に氷付かせるイメージだ。この世界での氷は精々-5度位のイメージであるが、俺のイメージでは-196度にも及ぶ。目の前にカチカチのトールの氷像が出来上がった。
まだ外へ転送されてないから、瀕死判定ではないのか?しょうが無いから叩き壊そうかと思ってると、やっと体の芯まで凍ったようで外に転移させられていった。
「コウキ、いくら訓練場の中でも今の状態で破壊しちゃったりしたら、復活できないからね危なかったわ」
「え、そうなのか?先に教えてくれよそう言うのは」
イザベラの言葉にかなり焦った。犯罪者を殺すのなら抵抗はなくなったが、練習試合的な立ち会いで殺したんじゃ後味が悪すぎる。
その光景を見ていたタウロ、サリア、アーガイルの3人は目の前で起こった事実に呆然としていた。
外に転送されたトールが復活して、本人もどんな負け方をしたのか理解が追いついてないようだが、タウロと槌帝サリアが一緒に入ってきた。
「オメガ、魔法は苦手だと言っていたそうだが今の魔法は何なのだ?そこまで一瞬で凍りつかせるような魔法を俺は知らぬ」
「使い捨て君じゃなかったコウキ凄いねぇトールが手も足も出ないとか、びっくりだよ。ちなみに魔法を使わない条件でも勝てたの?」
「どうかな?俺は武芸者ではないから、相手の力を見極めたりする事は苦手だが、動きは見えたから全て避けきる自信はある」
「ふーん」と言いながらいきなり持っていた大槌をフルスイングしてきた。
手のひらを突き出し、大槌を受け止める。訓練場の地面は大きく削れ、靴の底からは摩擦熱で煙が上がったが、
足元から煙が上がった俺は、両足を素早く蹴り出し靴を脱ぎ飛ばしたが、ハンマーを全力で振り切ったフィニッシュ体制を崩してなかった、サリアの両耳をかすって飛んでいった。
「フギャー、私の耳が焦げてるぅぅううう」
「自業自得だろいきなり攻撃したらやり返されることくらい考えろよ」
涙目のサリアにしょうが無いから治癒を欠けてやると、焦げた耳はきれいに治っていた。
「コウキの力は本物だな、まだ荒削りだが、戦闘の経験を積めば凄い事になりそうだ」
「タウロさんはやらなくていいんですか?」
「ほう、解るのか?」
「ええ、異質の強さを感じます、総帝はあなたですね?」
「まぁな一応内緒だからそこは頼んどく、今はまだ俺が勝てる、だが潜在能力の桁が違う。強くなりたいなら俺なら引き出してやれるぞ。どうだ一緒に来ないか?」
「そうなんですね、でも俺は別に戦闘狂じゃないですから、そこそこでいいんですよ、もし強くなりたいと思うことがあれば尋ねます。タウロさんは当然念話は使えますよね?」
「ああ使える、コウキも使えるようだな、用がある時は念話で連絡をする。いやぁ来たかいがあったぞ折角だから暫く滞在させてもらうから、話し相手になってくれ」
トールとサリアも取り敢えずは認めてくれたようで、俺達はイザベラも伴ってハッサンさんの商会に戻った。
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