第2話ファルムの街

 光輝を召喚した美少女4人組は倒れたドラゴンを、楽しそうに解体している。


「この国の災厄と言われた、悪龍ゾルゲもこうなっっちゃうと、美味しそうなお肉の塊だよねー鱗や爪も高く売れちゃうし、もう一生働かなくても良いかもねー」

「どれくらいするんだろ1億Gくらいにはなるかな?」 

(この世界の価値観では1億Gだと日本円換算で10億円相当となります)


「それにしても、あの使い捨て勇者何処行っちゃったのかな? 別に使い捨てって言っても、生き残ったら殺すとかじゃないのにね? むしろお礼の分前を上げたのにねぇ」

「私達に経験値入らなかったから、きっと使い捨て君に全部入ってるよ。だとしたらメチャクチャ強くなってるかもね?」


「でもさ召喚したてだから、生き残ってもJOBも何も無いでしょ? 苦労するよね」

「ちょっと可愛そうだね、無事に消えてたら、元の世界に戻れてたのにね」


「剣だけは返してほしいよね……」

「ぁぁあああああ聖剣んんんんんんーーーーー」


「どうするのあの剣? 王宮から借りてる剣だよ? 失くしちゃったらきっと1億Gとかじゃ弁償できないよぉ」


 「「「「ヤバイ!」」」」


「使い捨て君探さなきゃ」……

「ゾルゲの解体急ごう」


「イヤイヤイヤ…… 違うでしょ。このままアイテムボックスに放り込んで、後で解体したら良いから、直ぐに探しに行くよ」


「今日食べるお肉の分だけええ」



 ◇◆◇◆ 


エルフっ娘……『ユノー』エルフの王国ユグドラシルの10人兄弟の末っ子王女、兄弟全員母親は違う、ユノーの母親は人間で本人はハーフエルフ


猫っ娘……『サリア』獣人王国の侯爵令嬢、父親は獅子獣人、母親は猫獣人で見た目は母親、能力は父親譲り


ヴァンパイアっ娘……『カプラ』魔国の出身、魔王軍四天王筆頭「ノスフェラトゥ家」の孫娘


剣士っ娘……『あかり』倭国の出身地方領主の3女


 ◇◆◇◆ 


「でもさ、みんな使い捨て君の顔とか覚えてる?」

「「覚えてないなぁ」」


「一瞬で飛んで行っちゃったしね」

「私が顔は覚えてないけど、臭いなら覚えてるよ。ハンマーインパクトの瞬間にお尻から拡がった臭いなら」


「それってさぁそれっぽい人見つけたら、ハンマーでお尻ぶっ飛ばさないと出ない臭いって事?」

「私もカプチューで血の味は覚えてるけど」


「それもそれっぽい人見たら、カプチューしなければ解らないの?」


難易度高いよね……


「きっと美少女のハンマーインパクトやカプチューはご褒美だと思って貰える筈よ」

「普通に変態と思われるか、捕まると思うよ……」


でも、聖剣取り返さなきゃ、私達の功績が借金まみれで消えちゃうよ……


 ◇◆◇◆ 


 成り行き上しょうがなく、御者を買って出た光輝達一行はそれから1時間程の時間を掛けファルムの街に辿り着いた。


 町は高い壁で囲まれており、中世ヨーロッパ風の町並みが広がっているのが見える。

 入り口では街に入ろうとする、商人たちの馬車が並んでいて、兵士によって受付が成されている。


 イザベラはその行列を横目にもう一つの少し小振りだが、豪華な装飾が施された門に向かうように指示を出してきた。


 指示通りの門に向かい、衛兵の検閲を受ける「俺身分証とか何も持ってないんだけど?」

 「問題ありませんそのまま進んで下さい」


 イザベラに言われるまま門に進むと、馬車からイザベラが顔を出し「アリス様のご帰還です」と告げた。

 すると衛兵たちが、一斉に敬礼をして何も調べられることもないまま、街の中へ通された。


 「あのお嬢ちゃん、偉い人の娘だったんだなぁ」と思いながら馬車をすすめる。


 そのまま進んで下さいとイザベラに言われるがままに、さらに進む再び高い壁と門がありそれを3回繰り返した。

 壁を超えるたびに、建物は立派になって行く。


 ようやく目的地に辿り着き「ここに入れて下さい」

 と言われて門の中へ入る。

 門の奥に大きな屋敷が見えるが門から屋敷まででも300m位の距離があるぞ。


 屋敷に辿り着いて、「到着したからもう大丈夫だな? 後はこの屋敷の使用人に動かしてもらえよ」と告げて面倒くさそうだから、さっさと退散しようと思った光輝だが、イザベラに呼び止められる。

「まだ私の身体の鑑賞料を頂いておりませんが? それとも責任を取って私と結婚をされますか? オススメは後者でございます」


 「どっちも却下だし帰る」と言って御者席から降り門に向かって歩き出す。


 「あの……ありがとうおじちゃん」アリス様と呼ばれていた女の子が声をかけてきた。

 「おじちゃんじゃなくて、お兄さんだからね」と念を入れ、街に向かうことにした。


 きっと壁毎に生活レベルが違うんだろうな? 安全面を考えると、外側から2番めくらいの街がいいのかな? と思いながら最初の門に辿り着く。

 先程くぐり抜けたばかりの門だ。

 問題なく通れるだろうと思って進んだが甘かった。


 身分証明書の提示を求められ、持ってないと告げると拘束された。

 何この展開? 門の横の詰め所に連行され、身分の確認ができるまで、ここで滞在して頂くことになります。

 と告げられた。


 他に知り合いも居ないから、一番奥の大きな屋敷のアリスっていう女の子の、侍女のイザベラさんに確認して下さい。

 と伝えると、衛兵の一人が馬に乗って、屋敷に向かっていった。


 30分程してイザベラさんはやって来た。「素直に私の旦那様にならないから、こんなとこで捕まるのよ?」

と先程のメイド服とは違い綺麗なドレスを身に纏って、馬車から現れたイザベラが声をかけてきた。


 衛兵が、敬礼をして「イザベラお嬢様自らこのようなむさ苦しい場所へお出でいただき光栄でございます」

 と畏まった挨拶をする。


「イザベラって侍女じゃないの? さっきまでメイド服着てたじゃん」

「あれは趣味よ、アリスは私の妹で私達はこのファルム辺境伯家の娘よ?」

 

「で?結婚する気になったの?」

「それは却下だし、取り敢えずここから出してくれよ」


「諦めが悪いわね、まぁしょうが無いから出してあげるわ」


 それから衛兵に対して何事かを命じたイザベラが、手に紙切れを持って来た。


「これが取り敢えずの身分証の替わりよ、一番外側の街にギルドがあるから、そこでこの紙を出して冒険者登録をすれば、それが正式な身分証になるから、早めにしておきなさい。本来なら助けてもらったから、褒美を取らせるとこだけど、私の柔肌をじっくりと堪能したから、それは無しね」


「お前が勝手に見せただけだろう!」


 何この寸劇、とか思いながら詰め所から開放されて、今度こそ街へ向かった。


 言われたとおりに一番外側の街へ向かい、ギルドを探す、かなり広い街なので通りがかった人に訪ねた。

「ギルドってどこにあるんですか?」


 親切そうなおばあちゃんに聞いたんだけど「ギルドかい?何のギルドに行きたいのかね?」


商業ギルド

工業ギルド

魔術ギルド

冒険者ギルドの4つがあるよ?


 そんなにあるんだぁと思いながら、「冒険者ギルドでお願いします」と伝えた。


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