第44話 裏奴隷商掃討作戦②

 今日は朝からアーガイル翁と一緒に、ゼスト侯爵領に向かった。

 現在のゼスト侯爵領は、王国からの許可も出て5男のゼフィールが侯爵として切り盛りしている。


「父上お久しぶりです、お元気そうで何よりです」


「コウキのお陰で体調はすこぶる良好だ。今日は少し頼みがあってな、現在売りに出ている屋敷を何件か買いに来た。旅館の物件も欲しいので詳しい者に案内させてくれ」


「屋敷に旅館ですか? いったい何を始められるのですか? それに、こちらの領地にお戻りになられるという事でよろしいのでしょうか? 」


「ああ、言葉が足らなかったなスマン、土地はいらぬ建物だけでよい。空いた土地はゼフィールが好きに使え」


「それは一体どういうことなのでしょうか?」


「いやぁ説明が難しいのだがな、要はコウキと少し遊ぼうと思ってな。その為のオモチャじゃよ」


 と言って「ガハハハッ」と、豪快に笑っていた。


「父上のする事ですから、何かお考えがあるのでしょう。解りました物件は早速案内させます」


 俺は、何も言わずその横でやり取りを見ていたが、この説明で解るわけないだろ?


 侯爵領内の物件を何件か見て回り、30部屋程の旅館を一棟と貴族街の屋敷を2軒ほど買い取った。

 俺のアイテムボックスに基礎ごと収納したが、まだ余裕で入りそうだな。


 建物を収納した後の土地は、綺麗に地均しして後が使いやすいようにしておいたぜ。


 そのまま転移で、森の宿場町まで移動して、温泉の周りの土地を少し掘り下げてから、買って来た3軒を丁寧に配置した。


「これで、取り敢えずは住むことも可能になりましたね。俺の家にいる女性達をここに30人程連れて来て、旅館の営業準備などを始めさせましょう。アーガイル翁は護衛の2人と共に、当面は貴族館の方にお入り頂いて、この町に必要な物などをゆっくりと考えて戴けますか?」


「あい解った。必要な物はコウキが揃えてくれるのか? わしは、先程の屋敷の購入で有り金を使い果たしたからのう」


「すぐに、この街は発展しますから、税収だけで悠々自適で過ごせていただけますよ。アーガイル翁が居るというだけで、この街の信用度は最初から凄く高いはずですので、俺達はこの街での商売で儲けますから、税収は自由に使ってください」


「それでは、わしが得をしすぎじゃ」


「俺はそれ以上に稼ぐつもり満々ですから気にしないで下さい」


 そう言って、取り敢えずは貴族館の風呂にも温泉を繋ぎ込み、いつでも入れる様な状態にしておいた。

 配置した3軒の建物の下水を、地下に作った下水管に繋ぎ川まで流せるようにしておいた。


 人口が増えてきたら浄化設備を整えないといけないな。

 なんでも消化してくれるスライムを使って、異世界式浄化槽を作ればいいかな?



 アーガイル翁に街の設計に詳しい人物の紹介を頼んだら、ゼスト侯爵領はアーガイル翁自ら設計したとの事だったので、理想の街づくりを頼んでおいた。


「あくまでも宿場町ですから、王都みたいな町作りの必要は無いですからね!」と一応言っておいたがどんな町が出来るのかな?




 ◇◆◇◆ 




 ユーリの元に行き、宿場町に温泉旅館を準備したことを伝え、旅館の運営に必要な人材の割り振りを頼んでおいた。


 既にユーリはコウキの家人の中でも一目置かれた存在になっており、初期の8人以外は、みんなユーリに対して絶対的な服従をしている様な気がする。


 カレーショップも相変わらず順調みたいで、カオルが笑顔で忙しそうにしてる。

 給料でいっぱい還元してやらないとな。




 ◇◆◇◆ 




 夜になり、アランとカイルを連れて王都へ飛びハンクと合流した。

 ハンクは、一昨日の奴隷を購入した伯爵への非難が起こる様に、街の噂を操作していた。


 やっぱり優秀な諜報要員だな。


 取り敢えず4人で酒場に入り、街の噂に耳を傾ける。



「しかし貴族たちって俺らが収めた税金で、みんなあんな録でもねぇ事してやがるのかな? 幼い少女を性奴隷にしてたんだろ?」


「あー俺が聞いた話だと20人以上の少女を、服を着せずに裸で生活させているらしいぞ」


「とんでもねぇ話だな、人数集めて抗議に行こうぜ、爵位剥奪処分くらいはしてもらわなきゃ、納得いかねぇぜ」


 随分話に尾ひれが付いてるような気もするが、いきなり最初に入った店でこんな会話が聞こえる様なら、町中噂でもちきりだろうな。


「ハンク、いったいどんな方法で広めたんだ? 」

「罪状を書きだした、立て看板を夜中の内に、人が集まりそうな広場に10か所ほど立てましたんで、王都の憲兵隊が犯人捜しで、町中駆け回っていますよ」


「へー立て看板か、王都だと流石に一定数は字が読める人間がいるだろうし、効果ありそうだな。で、どうなんだ実際は伯爵家への事情聴取などは行われているのか?」

「それが、問題の伯爵は憲兵隊を統括する警察組織に、深い繋がりを持つ家系らしくて、今の所伯爵家への司法からのアプローチは無いようですね」


「取り締まれる立場の人間はいないって事か?」

「そうですね、王国の宰相か国王の立場からの命令で無いと、取り締まれないでしょうね。軍を束ねる将軍たちや近衛騎士たちは管轄が違うので、正式な命令が無いと動けませんし」


「まぁそっちはもう2,3日様子を見るか。ちゃんと悪いやつは取り締まる街であってくれればいいがな」




「ワンハイ勢力の店に出入りしている会員の名簿が欲しいな。ハンク何とかなるか? 」

「動いてみましょう、マフィアの中でも勢力争いはあるでしょうし、少し景気よく金をばら撒けば、大抵の情報は手に入ります」


「そうか、じゃぁ今日はペスカトーレファミリーの後ろ盾の伯爵家を潰しに行く前に、ワンハイファミリーのカジノで稼ぐぞ。一昨日行った店が潰れるまで毟り取ってやろう。暴力行為に出てきたら、遠慮はいらないから叩き潰そうぜ」

「解りました。コウキ様と一緒に行動すると退屈しなくていいですね! 」

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