第25話 SSSランクの実力

 俺達3人は、ドイルの勧めで昇級試験を受ける事になった。


 試験官はSSSランクの冒険者が務めてくれるという豪華な試験だ。


 俺達3人は地下の訓練施設に案内された。今回は特例の試験という事で、ギャラリーの入場も制限されてAランク以上の冒険者のみが観戦出来ることになったみたいだ。


 まず俺達が地下の闘技場に入ると、今回の試験の審判を務めてくれる、王都ギルド本部のサブマスターでジェイクさんという人が手を差し伸べてきた。


 「ジェイクだ、期待の新人が現われたって言うから、是非にと俺が審判を買って出た、だが、お前『絶牙』じゃねぇか、どうしてお前がここにいるんだ、それに噂に聞いてるぞ、不幸な侵略で両目と腕を失ったって聞いてたが、何故だお前は五体満足じゃないか、それとあんたはアラン少佐か?覚えてるぞ士官学校史上最強の剣士、お前さんも以前の戦争で大怪我をして奴隷落ちさせられたって聞いたが本人なのか?もう一人は?あら、来る場所間違ってねぇか?全く強者のオーラが無い・・・いやこれは違うな、お前さんJOBついてるか?JOBから発せられる独特のオーラを全く感じないぞ」



 「ジェイクさん始めまして、一気にそんな長いセリフよく言えますね!凄いです。俺は仰る通り無職ですよ、でも自分で言うのも何ですけど、結構イケてると思いますから心配ご無用です」


「ジェイクさんサブマスターに成られてるって事は、現役は引退されたんですか?俺は仰る通りに両目と片腕を失いましたが、このコウキ様に夫婦共々救って頂き、一生を捧げる決心をして付き従っています。以前の俺よりも更に腕が上がってると思っていいですよ」


 「ジェイクさん俺も剣士としての全盛期は今この時です、SSS冒険者が相手であっても遅れを取るつもりはありません」



 そこにとてつもない威圧感を放つ4人組が現われた。どうやらこの4人が噂のSSSランクらしいな、取り敢えず鑑定してみるか。


 「これは驚いた、鑑定まで使えるのか、しかし言っておこう無許可で鑑定を行う行為は、宣戦布告と捉えられて攻撃をされても言い逃れの出来ない行為だぞ?知らなかったのなら今の一度は見逃そう、次はその目を潰す」


「あ、そんなルールが在ったんですね、知りませんでした、すいません。私はこのチームのリーダーのコウキって言います。今日は宜しくお願いします」


 へー流石だな鑑定を掛けられたことに気付けるとか、でもなぁLVはSSSと言っても95なのか何か隠し要素でもあるのかな?


 「ほー少しはビビるかと思って、脅してみたが全く効果が無いな、俺はSSSパーティ『ドラゴンファング』リーダーでガースだ。後の3人は、ジョー、メリーナ、ジュリアだ。


俺とジュリアがSSSジョーとメリーナがSSランクだ最初は個人ランクの確認をさせて貰う、誰でも好きな相手を選んで良いぞ」


 「カイルからやるか?元々Sランクだし、スピード感を見るのに丁度いいから」


「こっちはカイル、アラン、俺の順でお願いします」


 カイルは一番強そうな相手が良いと言って、いきなりガースさんを指名した。ガースさんは普通の人だと両手剣と言える大剣を片手で御し、片手にタワーシールドを持つパワーファイターで全身をフルプレートメールと呼ばれる全身鎧で固めた重戦士だ。


 恐らく普通の人では装備の重さで歩くことも出来ないであろう。役割はタンクだな。


 対するカイルは昨日フローラが渡してくれた、オリハルコン合金製の爪を装備し、防具は皮鎧の急所部分をオリハルコン合金の鋼板で補強した物だ。カイルの一番優れたステータスである、敏捷性を引き出せる軽装装備だ。


 「いつでも掛かってきていいぞ」


「では遠慮なく」


 カイルは風属性を身に纏うと、初撃から全速でガースさんに向かって飛び込んでいった。ガースさんは狙いすましてカウンターの一撃を狙っているな。


 攻撃がガースさんに届きそうな瞬間に、いきなりカイルは上方に飛び上がった。カウンター気味に突き出した大剣を、瞬時に引き戻し、上方に飛び上がったカイルに対して剣をまっすぐに突き上げるように構え、身は中腰に溜めた。


 優れた反射神経で上に突き上げた大剣の腹を足で蹴り飛ばし、一度距離を取った。


「ほー『絶牙』の名前は伊達ではないようだな中々良い目をしている」


 「まだまだです『鉄壁』を抜いてみせます」


 ガースさんの二つ名は『鉄壁』なんだな。確かにまともにぶつかっても、ダメージなんか入りそうにないが、カイルはどう攻めるつもりかな?


 一度距離を取ったカイルが、もう一段階スピードを上げた。俺と最初にやりあった時よりも2割増しだな、あれだったら、前と同じ条件なら一発くらい入れられそうだ。


 常人では見極めきれない速度で、フェイントを入れまくり、一つの攻撃を繰り出すのに、5回以上の手が出るような感じだ。しかしどっかりと構えたガースは最小限の動きだけで見極め、全てをタワーシールドが阻止する。このままではカイルのスタミナ切れが先にくるかな?


 さぁそろそろ決着を付けないとヤバイぞと思って、カイルの動きを注視する。カイルが口を開く。


「次で決めます」


 「ほーまだ勝てるつもりなのか?」


 再び少し距離を取ったカイルが陸上競技のクラウチングスタートのような姿勢をとって、遠吠えの様な声を上げた。


 『アォオオオーン』


 すると人間っぽかったカイルの姿は、一気に毛深くなり、その体躯もほぼ野生の狼の様に変化した。


「おぉおカイルこんな特技隠してやがったんだ。すげぇかっけぇえええ」


 俺の優れた動体視力は、更なるカイルの奥の手も見逃さなかったが、ガースは気付いたかな?


 一気に駆け寄るカイルに対して、タワシールドを斜に構え、既に大剣も突き出して来ている。初撃と同じ様にカイルはまっすぐに飛び込む直前で、飛び上がった。ガースの動きはついて行っている、上方に飛び上がるカイルに合わせて、タワーシールドは角度を変え大剣も上方から降りてくるカイルを捉えようと真っ直ぐに突き出されそうになる。


 ガースの視線が正面から上に動きかけた、その刹那カイルの尻尾がキラリと光った、ガースの視線は完全にカイルの両腕と身体を見据えているが、カイルの本命は尻尾に仕込んだ、短剣での攻撃だ。


 鋭く突き出される尻尾に仕込まれた短剣が、首筋の蛇腹部分を正確に狙っていった。


 「殺った」


 カイルが口にした瞬間、大剣の柄がカイルの短剣を弾き、続けて落下してくるカイルの身体をタワーシルドが激しく弾き飛ばした。シールドバッシュだ。カイルは空中で体制を立て直したが、着地と同時に、


 「参りました」


 まぁ初見でアレを防がれちゃカイルじゃまだ無理だったか、しょうが無いな。


「いやぁ強いな『絶牙』Sクラスでは、隔絶した強さだと思うぞ、次はアランか」


 「俺は、そうですね他の人の動きも見たいから、ジョーさんにお願いします」


 ジョーは、タイプとしてはハンクと似たような暗殺者スタイルかな、恐らくパーティの中では斥候職と遊撃が主体だろう、手にしてる得物は双剣だ。


 対するアランは正統派の剣士、バックラーと呼ばれる小型の円盾と片手剣の長剣を装備する、本来は重鎧を身に着けて戦うのだろうが探索者で重鎧を使うのは、ガースのような類まれな体力を持った存在でないと、パーティでの移動などで、迷惑を掛けるだけの存在になるので、軽鎧を着込んでいる。


 しかしどれも、フローラの作ったオリハルコン合金コーティングの施された一品だ。剣はオリハルコン合金を鍛え上げた、フローラの自信作である。俺の持つ剣よりは厚みも幅もあり、叩き切ると言う感じの作りである。


 「遠慮せずにお願いしますね、先程のガースさんに負けないように全て防ぎ切ってみせます」


「言うじゃねぇか、俺の速度はカイルを超える」


 その言葉と共に、一瞬で踏み込んできたジョーは、双剣をアランに一瞬で叩き込む、がアランは片方の剣を盾でいなし、もう片方の剣に対して正確にカウンターを放った。首の皮一枚を切られ血がにじむ。


 「いかがですか?中々の切れ味でしょう?家の鍛冶師の自信作なんですよ」


「ほー、いい目だ。俺の初撃を正確に弾き返したのは、ガース以来だぜ、もう一段回あげても良さそうだな」


 今度は、いきなり飛び上がって、双剣の1つをアランに真っ直ぐ投げつけてきた、着地と同時に鋭い踏み込みで潜り込んでくる。


 アランは回転しながら飛んでくる双剣の一つを躱し、ジョーの突進に備える。


 そして目の前で反転して裏拳のような形で剣を叩き込んで来るジョーに対して、バックラーで受け、何故か自分の剣を手放し、後ろ向きになったジョーの腰に手を回し、見事なワンハンドバックドロップを決めた。


 更にそこに、ジョーの放った双剣の一つがブーメランのように戻って来て、ジョーの足に直撃した。


 致命傷と判断され、ジョーの姿は場外に転送された。


「前に似たような技を使うやつと偶然戦場で出会って、山を張ったら当たったみたいですね」


 「理由はどうあれ、SSクラスを倒すBランクなんて聞いた事がないぞ、文句無しだ」とガースも絶賛だ。


 「じゃぁ次は俺ですね、でもこの後パーティ戦もやる予定でしょ?俺がやっちゃうとパーティ戦に参加できる人数がガースさんの所が二人になるから、俺個人戦って言うか団体戦も含めて俺対全員でお願いします」


 「はぁ?」

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