使い捨て勇者として召喚された俺が夢想スキルで異世界を満喫する話

TB

第一章 異世界来ちゃったぜ

プロローグ

 俺は夢を見ているのか?


 凄い美少女に囲まれている。


 見事なプラチナブロンドで腰まで伸びる髪をした少し耳の尖ったエルフ?

 青い髪の毛で、猫耳が生え長い尻尾が微妙に揺れている幼女体型の獣人?


 赤い髪の毛でちょっと八重歯が長すぎる気がするけどメチャクチャスタイルの良いヴァンパイア?

 そして大和撫子を絵に書いたような黒髪ポニーテールで羽織袴の女剣士?


 ただ、俺を囲んで対峙している先にいるのは圧倒的な存在感を示す巨大なドラゴンだ。


 俺は、いかにもな剣を携えてる。勇者なのか?


 だが昨日の夜、俺はちょっと早めの職場の忘年会でしこたま飲んで、酔い醒ましに会場のビルの非常階段の踊り場で涼もうと出た瞬間に、空から真っ赤に燃える何かが落ちてきた所で記憶が途切れてる。


 そして今気づけばこの状況だ。


 意味解かんねぇし剣構えてても、俺使ったこともないし、目の前のドラゴンメチャクチャこえぇええんですけど、どうすりゃいいんだ。


 エルフの女の子が魔法を唱える。

 俺をまばゆい光が包み込んで、力が溢れ出てくるような感覚が湧き上がる。

 

 だが俺は、戦ったことなんて無いから、この湧き上がる力をどうすれば良いんだ?


 ヴァンパイアの女の子がいきなり俺の首筋にカプッと噛み付いた。

 それと同時に知識が流れ込んできた。

 なんか解る力の使い方が、


 猫耳娘がでかいハンマーを構えた、嫌な予感がする……

 

 そして、ポニーテールの剣士が巨大なカタパルトのようになった装置に繋がったゴム紐を断切り、恐ろしいほどの急激なGが俺を襲い、更に猫耳娘のハンマーが俺の尻をジャストミートした。


 音速を遥かに凌駕した速度でドラゴンに向かって突っ込んでいく。


 俺に流れ込んできた知識が、無意識に剣をまっすぐに構えさせる。

 そして俺はドラゴンの胸に突っ込み、そのままドラゴンを貫き、更に勢いは止まらない。

 どれだけの距離を飛んだんだろう。

 漸く勢いが弱まり、地面に落下していく。

 

 地面に落ちる瞬間に、身体が自然に受け身をとった。

 さっきのカプチューから流れ込んできた知識の効果か?


 俺が振り返りドラゴンの方を眺めると、巨大なドラゴンがゆっくりと倒れていった。


 直後に俺の頭に急激な文字の羅列が繰り広げられる。


LVが上がりました

LVが上がりました

LVが上がりました

LVが上がりました

LVが上がりました

LVが上がりました

LVが上がりました

・・・・


 とても数え切れないほどの回数が繰り返された。

  

 どうやらこれは、所謂いわゆる異世界転移なのか? だが、何も説明されないままいきなり尻をハンマーで殴られて、ドラゴンに突っ込む展開って何なんだ。


 神様とか出てきてスキルとか色々もらえるんじゃねぇのかよ?



  ◇◆◇◆ 



 後方で美少女4人組はやり遂げた感を出して寛いでいた。


 エルフが「使い捨て勇者召喚術式効果抜群だったね」


 猫娘が「一回の攻撃の為だけの召喚だから、丈夫だよね」


 ヴァンパイアが「でもさなんか、変じゃない?」


 剣士が「経験値が入ってこないです」


「「あそこ見て、消えてないよ?使い捨て勇者!!!」」



 ◇◆◇◆ 

 


 俺は急激なLVアップを終えて、五感が以上に鋭くなっていた。

 視力も聴力もはるか3㎞以上は離れている先程の美少女達の姿、声を正確に捉えていた。


 使い捨て勇者? 何だそんなの聞いたこと無いぞ。

 でも状況的にウフウフキャッキャの展開で無い事だけは解る。


 取り敢えず逃げよう。


 大幅に上昇した身体能力で、美少女達とは反対方向に全速で走った。

 恐らく100m5秒もかかってないだろう。


 30分は走り続けたが、全く息が切れないどれだけの体力なんだろう? と思った瞬間、『ステータスを表示します』と声が聞こえた。 


 西山光輝こうき年齢30歳 男


LV   777

HP  77777

MP  77777

攻撃力 777

防御力 777

敏捷性 777

魔力  777

魔法防御777

運   777


JOB  無職LV777

スキル 夢想 思い描いたことが実現しやすい。全ての魔法、特技、スキルが対象となる

    (JOBに付くこと無くLV777を迎えたものが取得できる。)


使い捨てスキル ラッキーフィーバー使用済み LV777を迎えた者が一度限り死亡や消滅を含む災厄から身を守る。

(次回以降表示されません)


所持金 7777777G


 これって強いんだろうか?きっと弱くはないと思うが、判断基準が無いし解んないな。

 しかもスキルの夢想って実現するんじゃなくて実現しやすいだけなんだ。


 しかし何処なんだろうここ? と思った瞬間に『マップを表示します』と再び声が聞こえる。


 見覚えのない世界地図が表示された。

 何これ謎画面。

 眼前に透明スクリーンのように広がっている。


 タブレット端末のように、スワイプしてみると画面が動く、2本指で広げてみると拡大されて、周辺地図になって行き、近くの街等も表示された。


 字読めねぇよ! と思ったらまた声が聞こえた。

『自動翻訳機能常時ONにしますか?』あーイエスだよ。


 その瞬間に地図に書かれた文字が理解できるようになった。


 て言うか慣れ親しんだ日本語に見える。


 もう一度思い出そう。

 俺酔っ払って階段の踊り場に出て涼もうと思ったんだよな?

 んで、いきなり馬鹿でかい火の玉みたいなのが空から迫ってきて……


 あれは隕石だったのかな? でも俺の記憶の中から考えても、俺の昨日まで居た世界で、俺が生きているとは当然思えない。


 異世界転移ならそれでいいんだけど、もう少し解りやすい説明とか欲しかったよな……


 すると、また声が聞こえた。

『かしこまりました、以降私がご説明させていただきますので、何でもお聞き下さい』


 うお、これはスキルの効果なのか?


 『その通りでございます。光輝様のスキルによって生み出された、ナビゲーションシステムでございます』

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る