第24話 王都ギルドでの出来事

 俺達は、今日のハッサンさんへの本店への到着により、試験を無事に終わることが出来た。


 初日の盗賊団討伐から始まって、イベント目白押しだったよな、と二週間ほどの道程だったが、感慨深げに思い出していた。今は他の2つのパーティと共に、試験の打ち上げをしに王都の酒場を訪れていた。


 参加しているのは、まず俺のPTアランとカイルだ。


 それと『夜明けの明星』のボブ、アンナ、ビリー、スーザン

 『ユーキと愉快な仲間たち』のユーキ、キッド、ダッジ


 総勢10人だ。


 みんなで、エールで乾杯をする。


 「「「おつかれー」」」


 本来試験なので、依頼料も高くなく、その替りに各町での宿泊費と食事に関しては、商隊が面倒を見てくれるという条件での、参加であったのだが、今回は初日の盗賊団の殲滅により、1人100万Gの臨時収入もあり、全員が大満足の護衛任務だった。


 ユーキが「試験の護衛任務がこんなに儲かるんなら、試験に落ちてくれてて月に一回くらい、試験受けたいよな」とか、訳の解らない事を言ってる。


 スーザンが「ユーキさんのパーティだけで、あんな規模の盗賊団を捕まえれるなら、それでいいけど出来るんですか?」と問いかけると、


 「当然無理だな!」と堂々と言い放った。


 「今回はでも、本当に何から何までコウキさんたちのPTにお世話になりっぱなしで、ありがとうございました。最初は俺達も、絶対負けないぞとか、コウキさんや、ユーキたちに足を引っ張られたくないとか、思い上がった考え方でしたけど、本当にすいませんでした」とボブが誤ってきた。


 まぁ俺達が普通じゃないだけでボブ達の考え方の方が全然普通だよな。

 俺は他の2つのPTに聞いてみた「帰りはどうするんだい?」


 ユーキが「帰りも、ボブ達と一緒にハッサンさんの辺境伯領へ向かう商隊の護衛任務を、やらせて貰う事になりましたが、コウキさん達はどうするんですか?」


 「俺達はさ、行きがかり上ゼスタール準男爵領の問題をハッサンさんと一緒に見届けようと思うから、取り敢えずは、もう少し戻れるまでに時間がかかりそうだな」


「そうなんですね、俺達は明日出発の便の護衛に着くので、またファルムの街で会うことがあったら、一緒に飯でも行きましょう」


 「そうだな、俺達もなにかあったら知り合いが少ないから、ユーキやボブ達を頼ってもいいか?」


「コウキさんが俺達を頼らなきゃいけない状況なんて、全然イメージ沸かないですけどね、呼んでもらえればすぐに馳せ参じますよ」


 そんな感じで、試験同期のパーティとの親交を深めて宿に戻った。


 ◇◆◇◆ 


 明日の午前中に、王都ギルドへ顔を出した後で、3パーティ揃った状態で、ハッサンさんの店に顔を出し、試験に通っていた場合は、辺境伯への納品を兼ねた挨拶へ行く事になっている。


 Bランクともなれば、辺境伯からの直接指名依頼等も有る為に、毎回Bランク昇格者は挨拶に伺う様になっているそうだ。


 この国の貴族制度では、伯爵以上の爵位では、領地と王都を1年毎に移動する参勤交代制度のような物がある。同じ様に子爵までの領地持ち貴族は、所属する伯爵領以上の領都に御用邸を構えて、代行権限のある者を駐留させなければならない。


 どうやらこの国は、政治的には江戸時代の日本に酷似した様な制度らしい。


 違う部分は、必ずしも伯爵以上の貴族家が絶対権力者では無く、自分の領地内の貴族家からの一定以上の支持を受けていないと、爵位を次代に引き継げない事ぐらいかな?


 俺は宿に戻った後で、アランとカイルに改めてお礼を言った。


 「今回の試験が無事に終わってくれたのは、二人のお陰だありがとうな」


「私達は、コウキ様の使用人として当然の行動をとっただけです。お礼には及びません」


 「まぁそれでもだ、嬉しいと思った事に関しては素直にお礼を言わせてくれよな、でも今回は色々あったが、まだまだ終わりじゃない、ゼスタール領の問題を片付けるまでは、もう少し付き合ってもらうぞ」


「かしこまりました、私も恩師でもあるゼスタール準男爵の力になれる事は嬉しく思います」とアランが言った。


 その後で、一度3人で自分の屋敷へと転移した。


  ◇◆◇◆ 


 屋敷に戻ると、すぐにカオルが出てきて、


「ご主人様お帰りなさいませ、試験は順調ですか?」と聞いてきた。


 「ああ、今日で試験も終わった、明日の結果発表を待つだけだ」


「ご主人様達が落ちる筈もありませんから、そこは心配しません。正式なお戻りは明日になるんですか?」


 「いや、ちょっと道中で知り合った貴族領の問題で、もう少し時間がかかるな」


「そうなんですね、イザベラさんが色々頼みたい事があるみたいで、戻れる日を教えてくれと言ってましたよ?」


 「あいつが、絡むと話が面倒くさくなるからな、まぁちゃんと戻ってから、聞いてやると伝えておいてくれ」


 ◇◆◇◆ 


 フローラがアランとカイル用の新しい装備が出来上がったと言って持ってきたので、その辺りの説明とかは本人たちに任せて、ユーリの元へ1人で転移をした。


 ユーリの居る屋敷は凄く広いのだが、現在は女性ばかり50人近い大所帯だ。屋敷に入ると女性特有の匂いというか、フェロモンの様な物を感じる。なんかクラクラするぜ。


 そんな事を思いながら屋敷に入っていくと、ユーリが見透かした様に


「お帰りなさいませコウキ様、コウキ様が希望されるなら、この屋敷の女性はみんな喜んでご奉仕させていただきますわ、勿論私もですよ?」


 と言ってきた。正直そんなに長くは我慢できないかもしれないよな、とも思うが、


「そうだな、その気になった時は頼むよ」と言っておいた。少し感覚が麻痺してきたかも・・・


 「今日はどうかされましたか?」


「ユーリはさ、家人の教育なんて出来るのかな?貴族家で働ける程度のレベルに家の女性達を育てるとか?」


 「一通りの作法は学んできておりますので、可能だと思います」


「それじゃぁさ、あくまでも本人たちの希望を優先だけど、貴族家でメイドとして働きたい娘を何人か教育しておいてもらえるかな?」


 この屋敷に滞在している女性達は、まだ隷属紋も刻まれたりしてないから、絶対にこれから人手不足になると思うゼスタール領への、職業斡旋を視野に入れて、育ててもらっておこう。


 ユーリに女性達の教育を頼んで、自分の屋敷に戻って、アランとカイルも合流した後で、王都の宿へと帰還した。


 王都の夜の街を楽しみたい所だが、これからはいつでも転移で訪れることも出来るので、お楽しみは又の機会に、取っておこう。


 ◇◆◇◆ 


 そして翌日、朝から同じ宿に宿泊していた、ボブとユーキのパーティのメンバーと一緒に、王都の冒険者ギルドを訪れた。今回試験官を務めてくれた、ドイルさんも来ていて、開口一番、


「今回の試験は全員合格だ、これからBランク冒険者として、この国とファルムの街の為に、力を貸してくれ」


 俺達は、全員で喜びあった。


 そして冒険者証の書き換えのために、ギルドのカウンターへ向かおうとすると、「コウキさん達のパーティはチョット待ってもらえるか?」とドイルに呼び止められた。


 「何かありましたか?」と聞くと、


「いやぁ実際問題として、コウキさん達がBランクだと、勿体無いと言うか俺より明らかに強いから、カッコがつかないし、特例でこの本部ギルドの昇格試験を受けて欲しいんだが、いいかな?」


 「時間かかりますか?この後で辺境伯の所へ顔を出さないといけないので、時間がかかるようなら次の機会にしたいんですが?」


「試験は戦闘だけだ、個人戦闘と、パーティ戦闘の2つで相手は王都所属のSSSランクが判断してくれる。決して勝つ事が目的じゃなくて、どの程度の実力かを見ることが目的だから、気軽に受けてほしいんだけどな?」


 「いいですよ、SSSの人がどれだけ強いのか経験してみるいい機会ですし、受けさせて下さい」


 そう返事をしたことで、更に上のランクでの登録をしてもらえるチャンスが来たので、3人で試験を受ける事になった。

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