第52話 俺の街の名物料理が欲しいよね②

 俺がバロンの街から持ち帰った大量の海産物で、宴会を楽しんでいたらサリアが爆弾発言をしてしまったせいで、俺はちょっとしたピンチに陥った。


「コウキ? 私に手を出してこないのを不思議に思ってたら、コウキは幼女にしか欲情しない変態だったって事で、ファイナルアンサーなのかな? もしかしてアリスにも欲情してたのかな?」

「私幼女じゃないし、普通にイザベラより可愛いだけだと思うよ?」


 と、サリアがまた火に油を注ぐ様な発言をする。


「てか、俺はまだ結婚なんかする気も無いし、幼女趣味でも無い。バロンの話も侯爵と対戦したら勝手に侯爵が言い出しただけだから俺は知らん」

「そう、それなら取り敢えずは納得して上げるけど、父がファルムに戻って来たらちょっと真剣に考えなさいよ?」


「イヤイヤ、誰に言われてもまだ俺はその気は無いからな、やりたい事が沢山あるからそれが片付いてから考える」

「ヤリタイならヤラセテ上げるって言ってるのに、何が不満なのかな?」


「いやその発言が、普通に怖いだけだ」

「イザベラ、ガツガツ行き過ぎると男は逆に引いてしまうもんなんじゃ、少ししおらしくしておればお前は綺麗なんだから、コウキもその気になるかも知れん。焦らぬ方が良いぞ」


 このカオスな状況をアーガイル翁が取り敢えず、収めてくれて食事を楽しむ事に何とか戻れた。


 ハッサンさんが「しかし今日の料理はどれも素晴らしいですな。ファルムの街で今日いただいたような料理を出す店があれば、大繁盛間違いないでしょうな。いかがでございましょうか? このハッサンに今日の料理のレシピをお教えいただければ、高級料理店を出店させて頂きたいと思いますが?」


 俺はカオルに確認を取って答えた。

「今日の料理は専門の料理人を育成して、味だけでなく見た目の洗練などをさせれば、十分に商売になると思います。提供する店も出す料理に合わせた高級な造りで作ればそれこそ、国中から人が訪れる事になると思います。俺としては、アーガイル翁にお願いするフォレストスパリゾートで、最初の店をやりたいと思いますので、共同でやってみませんか? ファルム以外の街では好きに出店されて構いません」


「おお、素晴らしい提案でございますな。それでは早速人員を見繕ってカオル嬢の元に遣わせますぞ」

「カオル、カレーショップがスタートしたばかりで大変だとは思うが、まだまだ俺の土地に来る人達も増えて来るから、新たな店の事も頼みたい。いいか?」


「はい、何処まで出来るか解りませんが、私もコウキ様のお役に立てるように一生懸命取り組もうと思います。コウキ様に聞くことも多いと思いますけどよろしくお願いします」

「わしのフォレストスパリゾートに、この料理が食べれる店が出来るとは、これは楽しみじゃな長生きせねばのぉ」

 と、アーガイル翁も嬉しそうだ。


「そう言えばカイル、フォレストゲートの方だがそっちでも俺に考えが有るんだが聞いてもらえるか?」

「はい、何でしょうかコウキ様」


「折角鶏の飼育を始めただろ、だからそれを名物にしたい。具体的には鶏料理と、卵料理、卵を使ったデザートだな」

「それはまた、何か素晴らしいのが出来そうですね。楽しみにしておきます」


「あー後な、牛って手に入るのか? 乳牛を飼いたいんだけどな」


 と言うと、ハッサンさんが「牛はこの辺りでは魔物に襲われやすいから、飼育しているところは御座いませんでしたが、コウキさんのお陰でファルム近辺は安全が確保されましたので、十分飼育できると思いますよ?」と、教えてくれた。


「それなら、フォレストゲートの街に隣接して大きな牧場を整備して、早速牛を飼おう。ハッサンさん取り敢えず100頭ほど仕入れて貰えるかな? 出来るだけ急ぎで頼む」

「かしこまりました、早速買い付けて輸送する手はずを整えましょう」


「カイル、人手は十分に居るからジョアンナと一緒に、指導を頼みたいが大丈夫か?」

「お任せください。楽しみですね」


「イザベラ、この間言っていた人属以外の移住希望者はどんな具合だ?」

「あーその話ね、ギルドの連絡網を使って募集はかけたわ、かなりの数の希望者が居るみたいよ。移動にお金と時間がかかるから直ぐには集まれないかもしれないけど徐々に、来てくれると思うわよ?」


「そうか、でも折角だから俺が移住に掛かる費用は補助してやると各ギルドへ通達を出してくれ、旅費の補助を実費で行うから、国中の領地のギルドに集まって貰えば、そこからファルムまでは引率の冒険者を雇って連れてこさせよう。早速通達を頼むぞ」

「解ったわ、結構な額になると思うけどいいの?」


「まぁなんとかするさ、良い稼ぎの依頼とかあるか?」

「それこそ、災厄の討伐クラスの依頼じゃないと足らないわね、今確認されてる災厄は国内だと北の災厄だけど、総帝様が出動されてる筈よ」


「そうか、まぁ割のいい依頼があれば教えてくれ」


 その話を聞いていた、トールとサリアが「災厄の討伐なら俺達も連れて行けよ」と言って来た。


「アビスフォレストにダンジョンでも見つければ安定して稼げそうだな」

「それが見つかれば、発見した場所によっては凄く発展できるわね」と、イザベラも答えた。


 じゃぁ明日はみんなでバロンへ行った後、それぞれ今日話した事を形にするために動こう、という話でお開きになった。


 


 ◇◆◇◆ 




「なぁカオル、この世界でチーズやバターは存在するのか?」

「私は見た事無いですね」


「そうか、それなら結構いい儲け話になりそうだな」

「マヨネーズなんかもどうですか?」


「無いのか?」

「そうですね」


「これはまだまだ稼ぐ手段は一杯ありそうだな。俺は一通り製造方法は商社勤務の時に学ばされたし、基本的な物なら作れるから、カオルは出来た物を基にクオリティを上げる事を考えてくれ」

「解りました。コウキ様と一緒にいると本当に異世界楽しめますね! ずっと何でこんな世界に来ちゃったんだろうと思って生きてきましたけど、今なら異世界最高! 来て良かったって思えますよ」


「そうか、それは何よりだ。でもさ、カオルの他にもきっと転生や転移者って居そうだよな。探し出す事出来ないかな? 」

「そうですね、他にも仲間が居れば計画もはかどりそうですよね」


「カオルはマヨネーズ作った事無いのか? 」

「お酢と油と卵って事は解るんですけど、作った事は無かったですね」


「そうか、混ぜ方のポイントさえ判れば難しく無いから、ちょっと今から作って見せるな」


 


 ◇◆◇◆ 




 大事なのは温度だ。

 材料は全部常温にしておいて、卵は俺は全卵で作るけど、卵黄だけでもいいみたいだぞ。


 卵と塩とお好みで砂糖かはちみつを少量、マスタードも合う。

 まずこれだけで混ぜて、馴染ませる。


 それから油を少しずつ足していきながら乳化させて行く。

 硬さがそれらしくなってきたら、お酢を加えてよく混ぜ合わせる。


 失敗する人は大体お酢を、先に混ぜちゃうんだよな。

 卵と油でしっかりとベースが出来上がった状態から、混ぜ合わせたらほぼ失敗することは無い。


 最後に柑橘系の果汁なんか使って、好みの香りを付ければマヨネーズの完成だ。

 お酢を合わせた時に緩くなってしまった時は、油を足して攪拌すれば硬さも調整は難しく無いからな。


 後は、使った分量を毎回きちんと量る事が大事だ、カレースパイスもそうだけど、料理の基本は分量の正確さだからな。




 ◇◆◇◆ 




「コウキ様本当に凄いですね、感動しました。これがあればさっき言ってたカイルさんの村の名物料理も出来上がったようなもんですね、鶏肉をから揚げにして、タルタルソースと合わせた、チキン南蛮とか絶対に大人気になりますよ」


「じゃぁさ、明日は夕食に鶏料理を色々作ってみてくれよ。楽しみにしてるな」

「解りました。私も今から楽しみです」

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