第51話 俺の街の名物料理が欲しいよね①
俺はバロンの街で大量の海産物と塩を仕入れ、ファルムの街へと戻った。
カオルのカレーショップに顔を出し、
「カオル、手を離せるか?」と呼びだした。
「どうなさいましたかコウキ様? お店はもう他の方達だけでも十分にやっていけますので大丈夫ですよ」
「そうかじゃぁちょっと俺と一緒に、一度屋敷に戻ってくれ」
「かしこまりました。荷物だけ持ってきますね」
「今日でやっとバロンへの道が開通してな、海産物と塩を大量に持ってきたから、カオルに晩御飯作って欲しくてな、やっぱり海産物は和食が合うと思うしな」
「わーそうなんですね私も嬉しいです。じゃぁ今日は腕によりをかけてお料理頑張りますね。因みにどんなお魚持って帰ってきていただけたんですか?」
「家に帰ってから全部一度出してみるけど、色々あったぞ。ハッサンさんとイザベラとアーガイル翁も呼んで今日はごちそうにしようぜ」
「了解です」
屋敷に着いてバロンから持ってきた魚を屋敷の調理場に広げた。
この屋敷の調理場は元々パーティにも対応できるような作りなので、広さも十分にあり下ごしらえをする場所も十分なスペースがある。
元々向こうの世界で釣りが趣味だった俺も、職業柄業務用食品の営業で調理師の人達との付き合いも多く、仲良くなった和食の板前さんと一緒に釣りに行った時に、基本的な魚や貝の下ごしらえも習っているから役に立てるぜ。
対してカオルは、あくまでも主婦だったので下ごしらえなどはそんなにする機会も無かったみたいで、俺の方がちょっと手際が良い感じだ。
「コウキさん凄い魚の扱いに慣れてますね、尊敬します」
「まぁな釣りが趣味だったから結構勉強したぜ」
「見た感じは、向こうの世界で手に入るような魚と同じ感じですね」
「ああ、名前はなんか少し違ってたけど基本的には同じだ。ヒラメにタイ、サバとブリ、伊勢海老とアワビ、マグロとフグを持ってきた」
「えぇ、フグですか? 毒ありますよね、大丈夫なんですか?」
「ああ、一応毒のある場所は解ってるし、市場で並んでる時に鑑定で調べたけど、この毒はもし当たってもスキルで治療可能なのも確認できているから、俺が毒の無い部分だけの状態にするから安全な部分だけを使えばいい」
「解りました。カニはいなかったんですか? 」
「カニなぁ、市場の人にも聞いてみたんだけどカニっぽいのは北の方の街に行かないと手に入らないみたいだったな。そのうち見つけて持って来るさ」
「それも楽しみにしてますね」
「よし、大体の下ごしらえは終わったな、あらは良い出汁が出そうな鯛のあら以外は捨てちゃうぞ、後の調理は任せるから頼んだぞ」
「ハイ、任せてください色々作ってみますね」
他の女性達もカオルの指示を受けながら、手伝い始めて2時間後位には一通りの料理が仕上がった。
俺は、その間にハッサンさんとイザベラとアーガイル翁を迎えに行って、初期メンバーと、トールとサリアも加え、海鮮料理での宴会を始める事になった。
バロン出身のサリアが「コウキぃ、こんなお魚料理、私見た事無いよー凄く美味しそうだね、バロンではゆでるか塩かけて焼く位しか調理法が無かったから、こんなの初めて見るよー」
「そうなのか、向こうで食べずに材料のまま持って帰ってきて良かったな。折角の素材も塩焼きとか茹でるだけだと物足りなかっただろうしな」
ここでは日頃からハッサンさんの商会を通じて、醤油や味噌などの和食の調味料も揃っているので、俺が求めていたような料理が並んでいる。
本当にカオルが居てくれて助かったぜ。
イザベラとハッサンさんが、俺が大量に仕入れて来た塩にも興味を持ち、今後は塩の流通が一気に安定した価格で出来る事を喜んでいた。
そして、アーガイル翁は「コウキよ、これだけの豊富な食の知識を持ち合わせておるのなら、フォレストゲートとフォレストスパリゾートでもそれぞれカレーに匹敵するような、名物料理を用意できぬか?」と言い出した。
「アーガイル翁、それは素晴らしいアイデアですね、新興の街となる二つの街に人を呼び込む起爆剤ともなりそうですから、何か考えて用意しておきます」
この世界の人は、生魚とか食べる習慣は無かっただろうからどうかな? と思いながら用意したお刺身も凄く受けが良かった。
俺はみんなの前で、見よう見まねで覚えていた握りずしも握って提供したら、絶賛だったぜ。
この世界ではマグロの脂身の多い部分は傷みやすいから人気が無かったそうで、「それなら氷属性の魔法で新鮮なうちに凍らせて、置いておけば俺がいくらでも引き受けるぜ」とサリアに伝えると、早速明日バロンに行って魚人属の市場責任者の人と交渉する事になった。
当然莫大な利益の匂いを嗅ぎつけたハッサンさんが「私も同行させて頂きますか? 通商路の確認とバロンとの交易のファルム側の幹事商会としてご挨拶に伺いたいと思います」
「あーまぁいいぞ、商取引自体は俺がやるつもりは無いからな、フォレストゲートとスパリゾートの二つの街の運営だけでも一杯一杯になりそうだしな」
「コウキ、通行料とかは決めたの? バロンとのすり合わせをしたいから、私も明日は一緒に行ってバロン侯爵と話をしたいわ」
「そういう事ならわしも行こう、昔バロン侯爵とは何度か一緒に酒を飲んだ事も有るから懐かしいし、バロン侯爵の性格ならイザベラを馬鹿にするような扱いをせぬとは思うが、一応格の違いで強気に出る可能性も無いとは言えないから、わしがおれば安心だろう」
と、イザベラとアーガイル翁が言うと、サリアが「その心配は大丈夫だと思うよ? パパが今日コウキに私と結婚式挙げたらバロンの領主としてコウキに街を譲るって住民に宣言してたし」
「ちょ、サリア俺はその話を受けたつもりは無いし、こんな所でいきなり言うなよ、絶対面倒な展開になるから」
すると、当然の様にイザベラの背後にどす黒いオーラが浮かび上がったように見えた。
これ絶対面倒臭い系の展開だよな?
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