第50話 開通
俺は後10㎞程に迫ったバロンへの通商路工事を一気に片付ける事にした。
トールとサリア、アラン、カイル、サリナ、ユーリを連れて川沿いの道を切り開いていく。
バロンへ近づくに連れて、魔物達の強さは弱くなってきているのでいよいよゴールは近いな。
王都で助け出した孤児や、攫われていた亜人達は全員隷属紋を解き放ち、本人たちの希望も聞いたが、恐らくユーリの精霊の力を借りた言葉の能力のせいであろうが、全員がフォレストゲートとフォレストスパリゾートでの暮らしを望む事になった。
しかし、全員が見た目の水準が一定以上の女性であるから、それはそれで今後が思いやられるぜ。
欠損奴隷の購入に関連して、奴隷商を一人仲間に引き込む事が手っ取り早いと思った俺はハンクへと指示を出して、ワンハイが利用していた表奴隷商を懐柔して、ノア王国全土から欠損者や、重病者の奴隷を集める様に指示を出させた。
しかしこの奴隷商とワンハイは、組んで借金奴隷を性奴隷としていた疑惑がまだ残っているから、完全に信用する事は出来ないんだけどな。
この欠損奴隷達なんだが、アラン達の例を見ても解る様に、この状況に陥りながらも生き残っている奴隷達は、元々の能力が極めて高い者が多い。
救出すれば、俺の街づくりの大きな戦力となって呉れる事は間違いないだろう。
◇◆◇◆
俺達が残り1㎞の位置まで整備を進めたところで、バロンの街の侯爵令嬢である槌帝サリアと雷帝トールに、先乗りで報告に向かわせた。
二人が帰って来るまでは、この辺りの散策をすることにした。
東西に延びる川沿いの道に対して、北方面へと向かって森の中へ入って行き、魔物を討伐しながら調べる。
危険な森だけあって、薬草の群生地などもあり素材調達には今後利用できそうだな。
但し森に居るのは危険な魔物である事は間違いないので、街道を行き来する時に護衛を務める冒険者は仕事に困らないだろうな。
ちょっと敵が強すぎるかもしれないから、魔物除けの防護壁を今後作って行く必要性もあるだろう。
二時間程でサリアとトールが戻って来た。
後ろに侯爵領の近衛兵であろう軍を従えている。
「コウキ、バロンの街として今回の街道の開通を歓迎してくれるって」
「そうか、それなら残り1㎞を一気に繋いでしまうぞ」
俺はユーリと二人で精霊魔法を使い、一気に通商路を繋げた。
繋げた通路の出口には、サリアの父の侯爵や兄弟であろう、猫獣人や獅子獣人の屈強な人々が待ち構えていた。
「この度の偉業を称える。ファルムとバロンの新たな友好の証として娘のサリアをコウキに娶らそう」
「ブホッ、ちょ、ちょっと待ってください。俺はそんなつもりは全くありませんし普通に通商とかでお互い協力出来ればそれでいいです」
「そうはいかんぞコウキ、この道はとてつもない利益を生み出す。両端に税関を設置しなければならないし、その管理だけでも大変だ。更に今回バロンは何も手伝っておらぬ。しかしぶっちゃけてこの道から上がる利益は魅力だ。それを手に入れるためにはこのバロン侯爵家がコウキと縁戚関係である大義名分が必要なのだ。なに正妻を強要したりはせぬから気軽に娶れ」
「おいサリナ、お前からもなんとか言えよ、嫌だとか」
「えっ? 何で? 別に嫌じゃないしコウキ私より強いから別に良いよ」
「お前そんな基準で結婚とか決めるのはダメな展開だぞ? とにかくその件は保留だ。それと侯爵様この通商路は出来るだけ通行料は安く設定して、幅広く利用していただけるようにお願いします」
「それは了解だが、サリアとの婚儀はいつにする?」
「あの、侯爵様話聞いてましたか? 俺はまだ結婚をする気は無いんです。侯爵領とのお付き合いはちゃんとしますし、反対側のフォレストゲートの街でも亜人を中心とした街づくりを行っていますので、バロンとして、凄く付き合いやすい環境だと思いますので、その辺りで手を打ってください」
「そうか、まぁコウキがその気になるまで待とう。それより今コウキはサリアより強いと言う言葉を聞いたが、これでもサリアはバロンでもわしに次ぐ実力じゃったんじゃ。その力どれ程のものか是非一手お手合わせ願おう」
「侯爵様、どんだけ戦闘民族なんですか? 怪我したら大変ですから止めて置きましょう。それより新鮮な海の幸と塩の取引を纏めて頂きたいんですけど」
「大丈夫じゃすぐギルドの訓練場を開けさせる、けがの心配はせんでも良い。それが終れば魚と塩は好きなだけ持って行け、結納替わりじゃ」
「サリア……獣人の人ってみんなこうなのか? 」
「うん、種族によって少しは違うけど基本的にはこんな感じかなぁ? 」
結局強制連行に近い感じでバロンの冒険者ギルドに連れて行かれた。
この街のギルドマスターはサリアの兄の一人だそうだ。
ギルドのランクはノア王国だけでなく、大陸全土に有効だそうで俺のオメガも既に伝わっていた。
ましてや帝二人にSSSのユーリSSのアランとカイルも一緒に来ている。
バロンのギルドはお祭り騒ぎになっていた。
お祭り大好きなバロン侯爵が街の腕自慢の住民たちに「コウキ以外の好きな相手に挑戦して良いぞ」
と、言い出したもんだから流石に帝のトールとサリアに挑む無謀な者はおらず、ユーリとアランとカイルが大人気で各自5人ずつ位挑まれていた。
何とか全員退けていたが、お疲れさんだな。
そしてやる気満々のバロン侯爵が出て来た。
まぁ手を抜くのも失礼だから、ちゃんと本気で相手をするけどね。
身体強化能力に特化した爪使いだ。
流石に現役の帝のサリアより強いと言うだけあって、速い。
俺は、フローラの打った剣でひたすら攻撃を受け止めながら、機会を伺った。
魔法を使えば勝負は速そうだけど、それだと納得しない可能性もあったから、武力だけで戦おうと決めていた。
そして、俺は一番効果的な方法、圧倒的な剣速で一撃で斬り倒す事を決め、突っ込んで来た侯爵に対して思い切りよく剣を振り下ろし両腕を斬り飛ばした。
「見事!」
と、言いながら、外へ転送されていった。
負けたのに満面の笑顔で戻って来た侯爵が、「サリアとの婚儀が済み次第コウキへこのバロン領を譲る。ここに居る全員が証人だ」
と、高らかに宣言した。
「何言ってくれちゃってるのこのおっさん」
思わず突っ込んだ。
「いやぁ婿殿バロンの未来は明るいぞ。ハッハッハ」と、勝手に言って上機嫌で帰って行った。
「なぁサリア、おかしくないか? 」
「何で? 」
「いや……おかしいだろ」
「どこが? 」
駄目だ通じない……
取り敢えず気にしたら負けだと思い、サリアの兄のギルドマスター『バクス』の案内で魚人街へ出向き大量の魚と塩を仕入れ、転移でファルムへと戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます